リトルキャッスル殺人事件_オリジナル_5

ユートと分かれてアオイが客室に入ると、もうそこには由衣が先に来ていた。
「あ、どうも…」
なんと言っていいかわからず曖昧な笑みを浮かべてアオイは部屋に入ると、ドアを閉める。

「あ~、アオイちゃんっ。ベッドどっち使う?」
由衣が聞いて来るのに、
「あ、どちらでも…」
と言うと、
「じゃ、私左使うね~♪」
と、由衣はちゃっちゃと荷解きを始めた。

アオイは自分も荷解きをしながら、チラリと隣の由衣を伺う。
肩まで伸びた少しウェーブのかかった髪。
女の子っぽい感じで、まあ可愛い…ほうだと思う。
少しユートの姉の遥に似た感じがするユートの幼なじみ…。

美人の姉に可愛い幼なじみ。
そんな女性に囲まれて育ったユートはなんで自分みたいに冴えない女の子といるんだろう…と思い出すと、ついついため息がこぼれる。
そんなアオイのため息をききつけたのだろう、由衣が手を止めてアオイを振り返った。

「ごめんね~、ユートと同室が良かったよね、アオイちゃん。」
いきなり言われて焦るアオイ。
「あ、いえ、そんな事はっ…」
「気を使わなくていいって。普通そうだよね~、彼氏と旅行でバラバラの部屋ってありえないよねっ。
今回ね、ユートから聞いたかも知れないけど、ここの提供者の姪の真由が旅行の発案者なんだけどね。
その彼氏があの通りの馬鹿でさ~、私らあれと真由をあんまり二人きりにするのが怖くて嫌だったのね。
で、あっちのカップル別室なのにユートだけってわけにいかないじゃない?で、こうなっちゃったの。
だからごめんねっ。でも二人になりたい時は私こっそり利香達の部屋に潜り込むから言ってねっ。」

相手は余裕で…気にしてるのは自分だけらしい。
アオイはそんな自分が嫌になってまた小さく息をつく。
「みなさん…仲いいんですね。」
無理に笑顔を作ってみせるアオイに、由衣はちょっと目を丸くして、次の瞬間屈託のない笑顔をみせた。
「タメ口でいいよっ。あ~でもなんかわかった気がするっ。ユートってこういうタイプが好みだったんだねーw」
由衣の言葉の真意がわからずアオイはちょっと戸惑う。
そんなアオイにさらに笑顔を向けると、由衣はアオイの方のベッドによってきて座り込んだ。

「アオイちゃんてさ~、なんか可愛いっ。ちょっと要領悪そうだけど性格良さそうで…。ユートがめっちゃ可愛いって言ってたのがわかる気するっ。」
ユートは…自分の事そんな風に言ってたのか…。
真っ赤になるアオイに由衣は続けた。
「ユートはさっ、人当たり良くて誰にでも愛想いいくせに特別を作らない男だったんだけどさ、アオイちゃんにはめっちゃ惚れてるって言ってたよ~。ま、私らにとっては淡白すぎて男って感じしないんだけど、良い奴だからさっ。よろしくねっ。今回は同室だしなんでも相談して?」
本当に屈託なく笑顔を向けてくる由衣に、
「こちらこそよろしく」
と、アオイも笑顔をむける。

「と、ユートの事はなんでも聞いてくれれば包み隠さず話すけど…」
そこで由衣は少しトーンを落とした。
「…?」
「碓井君の彼女ってどんな子?可愛い?」
あ~そこに行くのか、と、アオイは苦笑する。
「うん。めちゃくちゃ可愛い。少なくとも…私が生まれてから見た女の子の中で一番可愛いよ」
アオイはお姫様オーラをふわふわ漂わせたコウの彼女、フロウの可愛らしい顔を思い浮かべた。
「そっか~、やっぱり!あれだけイケメンだもんね~。彼女も可愛いに決まってるよね」
由衣はそう言いつつも
「でもま、あれだけ完璧な男ならダメもとでチャレンジしてみる価値はあるなっ!」
と、拳を握りしめる。

すごいなぁ…とアオイは感心した。
自分なら…彼女がいる時点でもうそんな気は起きない…というか、下手すれば自分の彼氏でも女の子がわ~っと押し寄せたら引いてしまいそうだ。
「…ね、アオイちゃん、ユート達の部屋行きたくない?」
そんな事を考えていると、由衣がアオイの顔を覗き込んでくる。
なんか…魂胆が見え見えな気が…と、思わず吹き出すアオイに、
「あ~、考えばれてるか~」
と、隠す気もない由衣があっけらかんと言って笑った。
見かけは女の子っぽいが、意外にさばけた性格らしいのも、なんとなく遥を思わせる。

「うん、まあ…でも私も行きたいっ。行こっか」
アオイは言って由衣に手を差し出した。



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