捕獲完了
世界のお色気担当がまだ誰も知らない体どころか、口づけすらしたことがないなどと誰が思うだろうか…。
未経験だと嫌われると信じていて、結局途中からはそれが理由で誰ともできなかったという。
その知識の発信元が、フランスの
「未経験なんて面倒だし、普通嫌がられるよ?仕方ないからお兄さんが練習つきあってあげるよ?」
という口車だと聞いた時には殺してやろうかと思ったが、結果的にプライドが邪魔をしたイギリスがそれを拒否して、それで図らずとも今まで純潔を守る事になったのだから、まあ見逃してやろう。
羞恥で泣いているイギリスを説き伏せるまでは大変だったが、その後は初々しさも可愛くて、何度も何度も楽園が見えた。
しばしばえげつない国の政策からは信じられないくらい少女趣味なイギリスは、スペインが言い含めるまでもなく、一度体を繋いだら頑ななまでに貞節を守るだろうし、唯一の相手という認識を強くするのはうけあいだ。
1000年越しの捕獲完了。
これでこちらも安心して愛情を傾けられるというものだ。
「イギリス…堪忍な。身体大丈夫か?」
全てが終わったあと、意識を飛ばしてしまったイギリスを綺麗にしてやって綺麗な方の布団で休ませてやっていたのだが、目を覚ましたらしい。
ぼ~っとしているイギリスの髪を手で軽く梳いてやると、とたんに花が色づくようにパっと赤くなるのが可愛らしい。
「1000年もずっと想い続けてた自分の全部が俺のモンになるなんて、思ってもみぃひんかったわ。
親分めっちゃ嬉しいわぁ…。夢みたいや。」
ちゅっとリップ音をたてて、赤くなった目元にくちづけを落とすと、行為の最中ずっと涙を流し続けていたその目尻にまた涙がたまってきた。
「…イギリス、もしかして嫌やった?親分強引すぎたか?」
少し眉を寄せてスペインが聞くと、イギリスはふるふると頭を横にふった。
ああ、それじゃあ…とスペインは少し安心をして、
「大丈夫やで。親分絶対に自分以外に心動かしたりせえへんからな?
1000年も待って神さんにもお祈りしてようやっと手に入ったんや。
目移りなんかしたらバチ当たるわ。」
そう言って笑うとまた髪を撫でる。
そう…自分は目移りしない自信はあるのだが、問題は……
「それよかどこぞのヒゲや若造がイギリスに変なちょっかい出して来いひんかが親分心配やわ~。」
自分と同じく1000年ほど画策し続けたフランスや、イギリスに愛されるのは当たり前だと信じ込んでいるアメリカがそう簡単に諦めるとは思えないので、油断はできない。
「嫌がらせのためならなんでもしそうやし…親分がおったら追っ払ったるけど、イギリス一人の時に絡まれたら親分に言いや?
変に騙されたり思いつめたりせんといてな?」
そう…捕獲完了でも油断はできない。
イギリスの洗脳は続けなければ……
「忘れんといてな?
自分は多分めっちゃちっちゃい頃にフランスに引き取られとったからな、無意識にフランスの言う事信じやすいんや。
経験ないと嫌がられるとか騙されとるのがええ例や。
せやから親分の事とか不安に思うような事言われたら、絶対に親分に言いや?
騙されたらあかんで?」
不安につけこまれやすいイギリスのことだ、それが心配だ。
捕獲完了は戦闘開始の合図でもある。
恋は戦争などと昔の人間はうまく言ったものだ。
長い時を生きる国だけに、未来永劫続く戦い。
甘露を手にした瞬間から鳴り響く戦いの始まりの合図。
さあ戦闘…開始だっ!
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