ハッピーバースディ☆ハッピーライフ_3

「まあ…可愛いお嬢ちゃん。髪の色と顔立ちはママで、瞳の色はパパ似なのね」
「若いママねぇ。」

まずイギリスの服と靴を買ったあと、ベビー用品店で店員ににこやかに話しかけられる。

ああ、家族に見えるんやなぁ~…と、スペインは幸せを噛み締める。
こんな生活も悪くない。

「そやねぇ。若いしまだまだ兄弟作ったれるな。」
と、抱き寄せて囁けば、真っ赤になるのが可愛い。

買い物が終わっても楽しすぎて、アリスのためと理由をつけて外を散歩した。
イギリスの靴はわざとヒールの高い物を買わせたため、履きなれないヒールにふらつくイギリスはどうしてもスペインの腕につかまることになるし、そんな小細工をしなくても可愛い娘は耳元でぱぁぱ、ぱぁぱ、言いながらきゃらきゃら可愛い笑い声をたてている。

久々に感じる無条件に愛され頼られる心地よさ。
神様の贈り物のような夢のような時間。

ああ…今日誕生日やし、ホンマ贈り物なんちゃう?などとふと思った。

家に帰るとスペインが食事を作る間にイギリスが買ってきたものを片付ける。

3人で食事を取り――アリスは自分だけ違う食事なのが不満なようで、小さな手でパンパンとテーブルを叩いてイギリスに怒られ、泣きべそをかいたのを可哀想に思ったスペインが自分の皿の中で食べられそうな物を口に放り込んでやると、ごきげんな笑い声をたてる…そんな一幕もあり――風呂は親子3人で一緒にというスペインの主張はイギリスに却下され、イギリスが入れた赤ん坊をスペインが受け取って服を着せた。

なんのかんので笑い声が絶えないままアリスを挟んで川の字に並んでベッドで休む。

あ~…ロマに連絡入れるん忘れとったなぁ…あとで怒られるな~などとそこでそんな事を思いつつ携帯を覗くと鬼のような数のメール。
ほとんどがイタリア兄弟と悪友二人からだ。

しかし…今日は家族で過ごして謝るのと説明は明日にしよう…と、スペインが携帯をテーブルに放り出して寝返りを打った瞬間…スペインとイギリスの間…ちょうど赤ん坊が眠っている場所がキラキラと光る。

「へ?な、なんなん?!なあ、イギリス、起きたってっ!!!」
慌てて眠っているイギリスを揺すると、イギリスは眠そうな目をこすりながら

「ああ…時間…なのか……」
と、つぶやく。

「時間て?なあ、なんかアリス透けとるでっ?!」
消えそうになる赤ん坊に手を伸ばすと、スルっと手が空気をつかんだ。

「なあっ!!アリスが消えてまうっ!!!」

必死なスペインとは対照的にイギリスは少し寂しそうだが冷静だ。

「うん…こっちにいるのは…今日いっぱいだったから…」
「…今日いっぱい…て……聞いてへんで?そんなん聞いてへんっ!!
なあっ!!もう逢えへんようになるんっ?!あの子消えてまうんっ?!!」

ポロポロ泣きながら肩を掴まれ、イギリスは少し戸惑ったように

「…会えるけど?」
と、スペインを見上げた。
「へ?」
「あれは…未来から来た俺の子だから……」
「ええ~っ?!!!」

いや…確かに似てた…似てたが……

「誰との子なんっ?!」
「…わかんね。昨日の0時に急に未来の俺から丸一日預かってくれって言われて……」

イギリスと…誰かの子ども……
今日並んで歩いた自分の代わりに…未来で誰かが自分の愛妻と愛娘に囲まれている…。
そんなん…そんなん、あかんっ!!
あの子は自分の子で…イギリスは俺の奥さんやったやんっ!!!
「…自分……」
掴んだイギリスの肩をベッドに押し付けて、スペインはイギリスを見下ろした。

「ちょ、スペイン?どうしたんだよっ?!」
急に不穏な空気を纏うスペインにイギリスは驚いて暴れるが、それでなくても女性化しているせいでビクともしない。

「なあ、どうしたんだ?なんだよっ?」

怖い怖い怖い怖いっ!!!
今日一日温かく自分を照らしていた太陽が、急に苛烈な熱を放つのに、イギリスはすくみあがった。

「……自分……誰と子ども作る気なん?」
「…へ?」
「…言ったり?親分そいつ叩き殺したるわ。」
「…ええっ??」
「…浮気は……許さへんで?」
「なんでそうなるっ?!!!」

凍りつきそうな声でそう言ったあと、スペインは、あっと、良いことを思いついたとばかりに笑みを浮かべた。

「そうや…子ども…作れへんようにしたらええんやね?
すでにお腹にいる間は作れへんよな?」

「ちょっと待てェェ~!!!!」





「…あの時…本気で怖かったんだからなっ!」
思い出して涙目になるイギリスに、
「ははっ、堪忍な~。親分の可愛い焼きもちやんっ」
と、スペインはちゅっと口付ける。

するとせっかくの誕生日ということで二人で思い切り主に大人の時間を堪能するため過去にちょびっと旅行してきてもらった愛娘が、
「ぱぁぱ、ちゅ~~!!」
と、バタバタと暴れる。

「はいはい。アリスもちゅ~なっ」
と、スペインは愛娘のふっくらしたほっぺにもチュッと口付けた。

こうして…2つの時代でそれぞれの2月12日が過ぎていく。

「まあ、あれやな。でも今回のはあれや、過去の俺への誕生日プレゼントってことやな。
まあ…あれからずっとプレゼント状態が続いとるけど……」

そう…あれから可愛い奥さんを可愛がって可愛がって可愛がって…そうして授かった一人娘が生まれた頃に丁度魔法は切れてしまったけれど、男に戻ってもイギリスが可愛い事にはかわりはないし、二人の愛の結晶がこうして手の内にいる。

誕生日は幸せだ。





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