さっさと話を聞いてお引取り願おうと思って諸々をスルーして先を促すと、イギリスの大きな目にみるみる間に涙がたまっていく。
最終的にヒックヒックとしゃくりを上げ始めるイギリス。
「問題だろぉ!!」
「いや、どのあたりが?」
「……上手く出来なくて嫌われたらどうすんだよっ?!身体の相性って大事だって言うし……」
うあぁあ~~とフランスはテーブルにつっぷした。
そして
「寝んなよっ!ばかぁ!!」
と、イギリスに頭をゴツンとげんこつで叩かれ、顔を上げる。
「あのね…坊ちゃん、悪い事言わないから即お家帰んなさいっ。
大丈夫っ!スペイン的には上手いほうが問題だからっ。
てか、坊ちゃんが上手かったりしたら、お兄さん真っ先に疑われて抹殺されちゃうわ。」
「何わけわかんないこと言ってんだよっ!
協力しろよっ!お前が昔ちゃんと教えとかないから今こんなピンチなんじゃねえかっ!!」
「いやいやいや、教えたりしたらお兄さんマジ命の危機ですっ!ピンチですっ!!」
「ふざけんなっ!俺がスペインにふられたら呪うぞっ!!」
「ふられませんっ!!」
「うっせえっ!素直に練習させろっ!!!」
いきなり襟首をつかんでベッドに押し倒された。
「ちょっとっ!!マジやばいっ!!お兄さん殺されるってっ!!!」
これだけは本気でやばいっ。
なにせ…イギリスに一方的に殴られている場面ですらスペイン的には“フランスの方が”可愛い可愛いイギリスに邪な理由でちょっかいかけている事になるのだ。
本気でイギリスのそういう類の練習に付き合ったりした日には、ただ殺されるだけじゃすまない。
身の毛もよだつ拷問の末のなぶり殺し決定だ。
「うるせえっ!さすがに1000歳以上にもなって経験ねえなんて言えなくて、もう経験済みだって言っちまったんだよっ!!こんな嘘バレてふられたらもう生きていけねえっ!てめえ殺して俺も死ぬっ!!!」
「や~め~てぇぇ~~~!!!!」
何故か手に持ったままのイギリスのワイングラスからこぼれた赤ワインが真っ白なシーツを染める。
ああ…お気に入りのシルクのシーツだったのに…などと現実逃避をしながら、なんとか体勢を変えてマウントポジションを取って体重をかけてイギリスの両手をベッドに押し付けた。
「放せよぉっ!!」
フランスの身体の下でポロポロ泣きながら自由になる足だけをバタバタさせるイギリス。
「放しませんっ!いい加減諦めろっ!!」
ゼーゼーと荒い息を整えながら怒鳴った瞬間……ゾゾッッ!!!と背筋に悪寒を感じると同時に何かが飛んで来るのを感じて、反射的に上体を後ろに倒して避けた。
グガシャァッ!!壁にぶつかって粉々に砕け散るテーブル…。
小テーブル…とは言ってもクルミ材のガッシリとしたモノで…しかも折れるとか壊れるを通り越して文字通り木っ端微塵になるって……
たら~っと冷たい汗をかきながら、おそるおそるドアの方を振り向くと…そこには世界を滅ぼせそうな真っ黒な怒気をまき散らした魔王様…もとい帝国様が降臨していらっしゃる。
そしてフランスは改めて今の体勢を顧みた。
ベッドの上…揉みあったため乱れた服装のイギリスを押し倒している…。
イギリスはベッドにまき散らしたワインの入ったグラスを手にしたままシャクリをあげていて…その手を自分がベッドに押し付けていて……さらに……たぶん聞かれた言葉は……
…放せよぉっ!……と泣きながら言うイギリスの言葉と…
…放しませんっ!いい加減諦めろっ!!!……という自分の言葉で……
うあああぁああああ~~~!!!!
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