イギリスさんが頭を打った結果
イギリスを寝かせたソファの傍らでおそるおそる様子を見ていると、いきなり会議室のドアが開いた。
そう、当たり前にノックもせずにドアを開けて、入ってきたのは某超大国だ。
「あ~、こんなところにいたのかいっ!」
と、呆然とするスペインには目もくれず一直線にイギリスにかけよると、
「ほら、イギリスっ!ちゃっちゃと起きるんだぞっ!君どうせ暇なんだろっ?!
一人ぼっちの可哀想な君のためにヒーローの俺が夕食付き合ってあげるんだぞっ!」
と、ベチン!!と思い切りたんこぶのできている頭をはたいた。
うあぁああ~~とは思うものの、あまりの勢いに呆然と見守るしかない。
「ひあっ!」
と悲鳴を上げて飛び起きるイギリス。
その腕をグイっと引っ張って
「ほら、さっさとしなよっ!!君は本当にグズだなっ!!」
と、引きずっていこうとするアメリカの手を、驚いたことにイギリスは振り払って、そのままキョロキョロとあたりを見回してスペインを見つけると、あわててその背中へと隠れてきた。
あせったのはイギリスに後ろからグイっとアメリカのほうへ押し出されたスペインだ。
これは…もしかして助けろということなのだろうか…。
目の前で超大国が初めてスペインの姿をみとめて、恐ろしい視線を送ってくる。
明らかに嫉妬に燃えた目。
いやいや、そんな目で見られてもスペインの方こそ迷惑だ。
思わず後ろのイギリスを進呈しようと口を開きかけたが、その時自分の背に触れているイギリスの手がひどく震えていることに気づいてしまった。
「堪忍な。今日は親分、イギリスと仕事のことで話があんねん。」
何故そんなことを言ってしまったのかはわからない。
しいて言うなら…スペインは怯えている相手を見捨てることができない根っからの親分だったという事だろうか…。
仕事…という一言で若干殺気が薄れるが、それでも威圧感を放ちながら超大国は
「仕事?後日じゃだめなのかい?」
と、不機嫌に聞いてくる。
とりあえずは信じてもらえたらしい。
あと一息だ。
「あ~、あのな、親分とこ不景気やさかい、この仕事をフランスにとられたないねん。
二人なんのかんの言うて協商結んだりしてるから、早いとこ話まとめとかんと、英仏でやることになってまうから…」
ヘラっと言うと、アメリカの眉間に皺が寄った。
「フランス…ね。
彼も喧嘩ばかりしてるなら近づかなきゃいいのにねっ。
仕方ないなっ。仕事頑張りなよ。
イギリスがフランスと組んで仕事して喧嘩ばかりしてたら俺が迷惑こうむるの目に見えてるし、そんなの御免なんだぞっ!」
それでもそう言って引き下がるアメリカ。
どうやら今イギリスといるよりは、彼がライバルとして認識しているらしいフランスとイギリスがこの先長い時間をすごすのを阻止することを取ったようだ。
渋々だが諦めて部屋を出て行った。
パタン…とドアが閉まった瞬間、スペインが後ろを振り向くと、大きな目いっぱいに涙を浮かべて震えているイギリス。
そして今更ながら気がつく…。
(なんやこいつ、めっちゃ童顔やん)
もうなんで今まで気づかなかったのかと言いたいところだが、その突っ込みを入れる人間はここにはいない。
一方、何故か涙を浮かべて震えていたイギリスは、ドアが閉まった途端ホッとしたように小さく息をつくと、ふぇっ…と小さな嗚咽をもらしながら、なんとスペインに抱きついてきた。
「え?ちょ、自分どないしたんっ?!!!」
なんなんだ?なにが起こった???
目を白黒させるスペインだが、イギリスは構わずスペインの肩口に顔を押し付けたまま子どものように嗚咽をもらす。
もうなにがなんだかわからない。
しかしこの状態だとロクに話をできそうにない。
「あ~…とりあえず、落ち着き?」
仕方なしに、しゃくりをあげるイギリスの背中を軽くさすってやりながら、スペインはイギリスが落ち着くのを待つことにした。
もう…内職の道具どころの話ではなくなってしまったようだ…。
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