自由の身になったところでアントーニョがそう誘うと、アーサーは首を横に振った。
「任務終わった後は必ず訓練室で軽く汗流す事にしてるから…」
と、まだ硬い表情のまま言うアーサーに、
「ほな、俺もつきあうわ~」
と、アントーニョは言って、アーサーの肩に腕をまわして訓練室の方へとうながした。
「…暑苦しい」
と、文句を言いつつ振りほどかないアーサーに少し浮かれて
「ええやん。これから任務もずぅっと一緒やし仲良うしたってや。」
と笑みを浮かべるアントーニョに、アーサーは
「任務“は”だろ」
と突っ込みを入れる。
そんな感じでじゃれあうように訓練室に向かう二人を、きらり~ん☆と遠くから見つめる一団。
「ちゃくちゃくと進展はしてそうねっ!」
「うち、ちゃんとプッシュしておきましてん」
「でかしたわ、ベルちゃん!」
「でも…アントーニョさんて色々女性との噂が絶えない方みたいなんですけど…大丈夫なんですか?私の可愛いアーサーさんを泣かせるような事があったら……」
桜の大人しげな可愛らしい容姿の後ろにメラリと炎が見える。
「大丈夫よ桜ちゃんっ!ブレインと医療班の女性陣にも手をまわしておいたし、それでもあいつが他にちょっかい出したら、殴り倒してやるから」
だから協力してね、と、ニコリとほほ笑むエリザに桜はまだ少し不安げにそれでもコクリとうなづいた。
“ブルーアース乙女ジャーナル編集室室長”
ベテランジャスティス、サファイアのエリザのもう一つの顔である。
ブルーアース乙女ジャーナル自体は、今ではブレインや医療班などの隠れ特派員を含めると十数人に及ぶ女性陣が月に1度発行していて、読者ともなれば他支部からの購読者を含めると月に100部以上を売り上げる雑誌だが、もともとはエリザが一人で始めた小冊子だ。
連日戦闘が続く中ストレスを抱えながら働くブルーアースの女性陣に萌えと娯楽をと、始めた当初はアイドル雑誌のように比較的イケメン揃いのジャスティスの写真や趣味や好きな物、日常の様子を書きつづっていたのだが、そのうち盾のルートにお守りされるフェリシアーノという図が一部の女子の間で盛り上がり始め、今ではすっかりBL雑誌と化している。
「こうして乙女ジャーナルの制作に参加させて頂ける日が来るなんて…」
と、着物の裾で目元をぬぐう桜も、実は購読者の一人だった。
「うちも親分がそっちに転んでくれるとは思ってもみませんでしたけど…」
というベルは初期からの編集者。
「トーニョもアーサーも華があるからねぇ。
ルーフェリだけだと寂しいし、とりあえずこのカップリングは乙女ジャーナル編集室の総力をあげて成立させるわよっ」
エリザの激に、二人は手を取り合って力強くうなづいた。
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