オンラインゲーム殺人事件第六章_2_犯人は誰だ(12日目)

――悪い男に…狙われないといいね、色々な意味で…
オスカーの言葉…あれはなんだったのだろうか…。

実はギルベルト的には今回の黒幕はアゾットだと思っていた。
証拠はない。
だがかなりの確率で当たりだと思っている。



最初はエドガーと同様にイヴが犯人かと思っていた。

なにしろ殺されたゴッドセイバーとショウ、二人とパーティを組んでいて1人無事なわけだし、二人のリアル情報も引き出せるだろうし、イヴに惹かれているようだった二人ならリアルでの呼び出しにも応じそうだ。

アゾットの言うように確かに普通なら自分が疑われるような殺し方はしないだろうが、高校生くらいだと馬鹿な奴は意外に馬鹿だ。
考えなしにライバルになりそうなあたりを無計画に殺していった可能性もある。

が、アゾット主体での顔見せの時にイヴの単独犯説に違和感を感じた。

これまでイヴは非常に単純に魔王を倒せるライバルになりそうなアタッカーを引き込んで殺していたはずだが、ここにきて全ジョブ一ライバルにならないアゾットと一緒にいる。
しかも以前の女王様然とした態度と一転、妙にか弱いキャラクタとして……。

まるで…人格でも変わったかのように……


それと同時にこれまでは非常に単純なように思えた状況がここにきて、ショウの言動に関してメグとイヴの食い違いがあったり、わざわざ全員のメルアド交換を申し出るくらいには周りとの接触を重視してきたメグがアゾット主体での顔合わせの席には何故か来ずにログアウトしたりと、事態が複雑化してきた。

これはまさか次の犠牲者はメグか?と思っていると、ゲームをしながらつけていたラジオで赤坂めぐみなる女子高生が殺害されたニュースが流れていて確信した。

顔見せのあたりで犯人が変わっている。

おそらく…最初の2件はイヴの単独犯。

非常に単純に可愛い女キャラで自分のライバルとなりそうなジョブの男に近づいて誘いだして殺していた。
しかしその後、その事に気付いたアゾットがイヴに接触。
協力を申し出てメグを殺させたというところだろうか。

いや、むしろ今までのイヴと同一人物ではなくなっているのかもしれない。

イヴ自身がすでに情報を引き出された上で殺されて、別の人間が成り代わっていると言う可能性も否定はできない気がする。

そして…成り代わっている人間はアゾットの関係者…。

一億を取れる可能性を考えれば、身代わりをやる人間がいても不思議ではない。

操ってる本人は、最終的に参加者の身元が割れている以上、イヴキャラで魔王を倒しても自分に一億が入る事はないわけだし、アゾットに協力して一億の中から分け前をもらうしかない。

そう考えれば…最終的にアゾットが一億を取って、イヴキャラを捨てる事になるため、イヴキャラがいくら疑われるような状況になろうと痛くもかゆくもないし、今の状況も全てつじつまがあうのではないだろうか。

そう思ってしまえば、アゾットというネーミングも非常に怪しい気がしてくる。

以前、同級生で生徒会役員の早川和樹のデスクの上にあった一冊の伝説の武器についての本。
やたらとギルベルトの事を厨2病だとからかう男が珍しい事もあるものだとパラパラめくっていた時にアゾットという短剣についての記述があった。

確か…16世紀頃に活躍したドイツの偉大な錬金術士バラケルススが持っていた短剣。
柄頭に水晶が埋め込まれており、そこには悪魔が封じ込まれていたというような事が書いてあった気がする。

そんな短剣だ。癒し手のプリーストにつけるような名前ではない。
付けるとしたら、よほどのへそ曲がりか…もしくは…陰惨な自己顕示欲の持ち主くらいだろう。

へそ曲がりと言えば今回の事とはまったく関係はないが、和樹が戻って来た時に本を振りかざして自分だって厨2病じゃないかとからかってみたら『俺はお前をからかうためにお前のぶっとんだ脳内を理解できそうなモノを全力で勉強している』と、実に嫌な方向での努力家である事を披露されたのは笑えない思い出だ。

まあそれはさておき、アゾットと言うのはそんな名前なのだ。
しかもそれをわかっていてわざとつけている斜に構えているような感じの奴ならそれも納得だが、いかにも癒し系という感じに見せている時点でアゾットは怪しい…

と言う事でギルベルトの脳内では主犯がアゾット、実行犯もしくは協力者がイヴという事で決定していたわけなのだが、オスカーの今度の言動で少しそれが揺らぐ。

やたらとアーサーに執着して追い回していた気がするオスカー…
奴もなにか絡んでいるのか、もしくは別クチなのか……

とにかく何があってもお姫さんは守らなくては……
ギルベルトは嫌な不安を抱えながら夜の街を夕方まで過ごしていたアーサーのマンションへと急いだ。




0 件のコメント :

コメントを投稿