オンラインゲーム殺人事件第一章3_ルート(前日)

兄が選択したジョブはシーフだった。
俺にと選んだジョブはベルセルク。

正直意外だった。
だってそうだろう?
アタッカー二人で回復がいない。


このゲームでは4人までのパーティが組めるはずだが、その人数で理想的なパーティと言えば、盾役、攻撃手が二人、そして回復じゃないのか?
それなら盾役と回復になって、攻撃手を2名探すのが一番容易な気がする。
各ジョブ2名ずつなのだから、盾役のウォーリアと回復役のプリーストは各2名、計4名しかいないのだ。
パーティに引き入れようとしたらすでに他のパーティに入られている可能性も高いし、人数が少ないジョブを自分達がやった方がいいだろう。

兄の考える事に間違いはないのだろう。
だが疑問と言うのは早いうちに解決しておくに限る。
万が一という事もある。

そう思って俺が尋ねると、返って来た答えは…

「あ~まあ普通に魔王を倒すだけのゲームと考えればそうなんだけどな。
今回の目的は自分達がターゲットとなることだ。
てことは、だ、善意の第三者を危険にさらすわけにはいかねえ」

「というと?」

「まず大前提として1億もらえんのはトドメを刺した1人だ。
ってことは…だ、もし1億を狙う誰かが他をリアルで排除してでもと思って狙うのはトドメをさせる可能性が高いジョブ、つまりアタッカーってことだ。
だからそこは自分達でやる。」

「しかし…それなら兄さんもシーフよりは攻撃力のあるベルセルクかアーチャー、もしくはウィザードあたりを選択した方がいいのではないか?」

そう、シーフは枠としてはアタッカー枠かもしれないが、他のアタッカーと比べると明らかに攻撃力に劣る。
手数が多いのでトドメをさせないかというとどうなのかと思うところではあるのだが、印象的には強そうには見えない。

しかしながらそう思った俺は浅慮だったようだ。

「ああ、これがオフゲーならそうだろうな。
単純に沸いた敵を叩いてせん滅が早ければそれでいい。
だが今回のはオンゲーだ。
敵は必ずしもわいて欲しい場所に必要量沸いてくれるわけじゃねえし、場合によっては取りあいになる。
そうすっとだ、物を言うのは敵を引っ張ってくる釣り役の能力だ。
いかにそのパーティの殲滅力にあったペースで効率よく釣ってくるかで稼げる経験値が変わってくる。
最悪…ヒーラーを他のパーティに取られていても、俺らが効率よくレベル上げをして高いレベルで装備や金もあれば、いくらでも引っ張れる。
ああ、あと勘違いしてるようだけどな、盾はお前だぞ、ルッツ。
ベルセルクは確かに素の防御は低いがその分攻撃力が高いから殲滅早えし、基本的にはウォーリアと同じ重装備をつけられるから、強めの敵をやる時は防御を固める系の防具とアビリティを駆使すれば盾役も十分こなせる。
そのあたりは俺様と二人きりのうちに実地で試行錯誤しておけ。
ついでに言うならな、トドメをさせる可能性の高いアタッカーを外から1人引っ張るってことは、そいつが1億狙って敵にならねえとは限らないからな。
その点回復役は絶対にそういう目的の奴らはやらねえ。
攻撃力、防御力共に全キャラ最低、つまり全キャラで一番トドメ刺しにくいからな。
つ~ことで、回復役だけは外から引っ張っても絶対に犯人にならねえ安全な味方が1人増える事になるってことだ」

本当に…なんなんだ、この人は?
もしかして前世では軍事国家の軍師か何かだったのか?!
諸葛亮孔明か司馬懿仲達だったのか?!
兄の元にディスクがついたのも、マニュアルを見たのも全て俺と同時のはずだ。
なのにこの状況分析の早さと的確さは本当になんなんだ…。

俺は挫折感に打ちひしがれながらも改めて尊敬の念を兄に抱く。
いかん…こんなことではいかん…俺も頭を柔らかく柔軟にせねばっ!!
俺は気持ちも新たに注意点が書いてあるページに貼るように付箋を用意し、マニュアルを開いた。

『ルッツ…だからそのマニュアルオンリーの四角四面さを………あ~、まあもういいか…』
という兄のため息が聞こえた気がするが、おそらく気のせいだろう。

こうして俺と兄はオンラインRPGゲーム『レジェンドオブイルヴィス』に参加する事とあいなったのだ。





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