オンラインゲーム殺人事件_Anasa_第四章_2

生徒会室の一幕(25日目)


「アーサー…あれはなんだ?」
名門海陽学園高等部生徒会室。
急な仕事の発生で朝から副会長の早川和樹と生徒会室だったのだが、このところ家に帰らずアントーニョの家にいるので、ついてこられた…何故かギルまでも。
もちろん学校の中までは入れないので、隣にある小さな公園で待っている。

「えっと…朝会った時に紹介しなかったか?黒髪のほうがトーニョで銀髪の方がギル」
書類から視線だけを向けて答えるアーサーに、臨時に呼び出されたためか朝から機嫌の悪い和樹がひくひくと顔をひきつらせた。

「わざとか?そのボケは?!わざとなのか?」
「……?」
「普通に考えれば…どこぞの愚民の名を知りたいとか思わんよな?!何故こんなクソ暑い中わざわざ送ってきただけじゃなく、馬鹿みたいにあんなとこで待ってるんだ?ああ、でも馬鹿なんだよな?高校生がこの大事な時期の貴重な値千金の時間に勉強もせずぼ~~~~~~~~~っと公園で遊びながら待っているってことはっ!」

…よほど勉強中断で呼び出された事に頭に来ているらしい。
普段はシニカルであまり感情的にならない和樹が珍しく目に見えてイライラしている。

「この休みにな…ちょっと色々あって知り合って仲良くなったんだ。で、トーニョの方の家に泊まってて、またそっち帰るからついてきたんだと思う。」

その言葉に和樹がさらにピキっと来たのを感じて、アーサーは少し引いた。

「ほぉぉ~~~。勉強もそっちのけで遊び歩いてるわけかっ。さすが万年トップの生徒会長だけあって余裕だな。」

なかなか怖い…。

「俺…紅茶でも淹れてくるな。」
と、少しでも場を和ませようと立ち上がりかけるが、
「いい!俺が淹れる。貴様は仕事から逃げるなっ!」
と制されたので、大人しく従った。

そういえば、こと成績の事となると和樹は怖い。
自分が毎回2位な事をかなり気にしているようだ。

しかし空気が読めなくて友人の一人も作れない自分とは違って、和樹はそれなりに空気も読めてそつがなく、交友関係もかなりあるほうだと思うし、他が圧倒的に優れているのだから、成績の順位が一番か二番かなど瑣末な問題なんじゃないかと思って実際そう言ってみた事もあるが、こめかみに青筋をたてられた。

それでも…ドン!とやや乱暴にアーサーの目の前に置かれるマグカップ。
こうやって自分が飲む時は当たり前に今腹をたてている相手であるはずのアーサーの分まで普通に淹れてくれる。
まあ…紅茶じゃなくてコーヒーなのは仕方ない。

「サンキュー」
と礼を言って苦い液体に口をつける。
あまりコーヒー自体は好きではないのだが、目を覚ますという意味ではこの苦さは良いのかもしれない。
このところ日々楽しすぎて夜更かしが当たり前になってきたせいか、こんなに苦い物を飲んでもなお眠いのだ。
美味しい紅茶など飲んだら、そのまま眠りこんでしまいそうだ…。


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