オンラインゲーム殺人事件_Anasa_第二章_4

アゾット(11日目)


その日もゲームがあるのでアントーニョは夕方にはアーサーの家を辞して、8時を待ってインすると、ギルベルトからパーティーに誘われる。
アーサーもタッチの差で先にきてて、しばらく待っているとフランシスもインしてきた。


全員集まった所でアーサーが今日の日中にアントーニョに話した自分の意見を披露すると、案の定ギルベルトは大いに興味を引かれたようだ。
『なんか歪んだ感じだよなっ。とりあえず要チェックだな。ま、とりあえず今日はまず秋本翔太がイコールショウなのかを確かめようぜ。』
と言って、街にとどまって様子を見る事を提案した。

外に出るとモンスターに絡まれたりもするので、大抵のプレイヤーは街中でログアウトする。
その中でも街の中心で、商店街にも外へ出るのも近く復活ポイントもある噴水前でログイン、ログアウトする人間がほとんどだ。
ここで待っていれば大抵の人間がログインしてくるのが確認できるだろう。

そしてその間にもギルベルトは
『まあ、一応言っておくな。とにかくお前らリアル話さない事、呼び出しは絶対に受けない事、一人の時にこのパーティ以外の参加者と話さない事、この3点だけは守っとけよ。それだけ守ってればまず人物特定される事ないから』
と、指示をする。

(あーちゃん、これことごとく破っとるよな、すでにw)
裏でアントーニョがウィスを送ると、
(誰のせいだよっ)
と、アーサーが返す。
(俺かっw)
(そうだよっ)
そんな裏ウィスのやりとりが楽しい。

『あとな、リアル周りにもこのゲームやってるとか漏らすなよ。言った相手が犯人じゃなくても、犯人が知り合いの知り合いの~ってずっと辿って行った先の人間じゃないとは限らねえんだからな。誰かが魔王倒してゲームが終了するまでは、極力自分とこのゲームを結び付ける事を口にすんなよ。特にトーニョ。』

その後もそんなギルベルトの注意を受けながら、結局待つ事30分。
ゲーム離脱宣言したショウとメルアド交換スルーのヨイチ以外は姿を見せた。

その直後くらいに、またメッセージが来た。
今度は…アゾット。

『アゾットって…男キャラだったよね?』
とフランシスが言うということは…今度も全員にメッセきているらしい。
そしてしばらく全員無言でメッセージに目を通す。

『こんばんは。参加者のアゾットです。
なんとなく気にしていらっしゃる方もいるとは思いますが、今日の昼過ぎに秋本翔太君という高校生が殺害されたというニュースが放映されました。
参加者の一人、イヴさんによると、殺された秋本君は元このゲームの参加者のショウさんらしいです。
親しかった相手が二人とも殺害された事でイヴさんも非常にショックを受けていますし、犯人の男の次のターゲットが自分なのではと、とても怯えてもいます。
もちろん、僕を含めて全ての参加者がそのターゲットになりうるわけですから誰しもが他人事ではありません。
そこで下手に相手の事を知らないまま不安を抱えるよりは、一度全員街の広場に集まってどういう参加者がいるか顔合わせをしませんか?
現在僕はイヴさんと共に街の広場の噴水前にいます。
来られる皆さんはぜひ、噴水前までお願いします』

やはり秋本翔太はあのショウだったのか…。
『行くの?』
とフランシスがギルにお伺いをたてると
『そうだな。』
という答えが返ってきたので、4人はメッセージに従う事にした。

4人が行くともう他に4人ほどが噴水の周りに集まってた。

「みんな…みんな殺されちゃった…。」
と泣くモーションをするイヴのキャラにぴったりと寄り添って
「大丈夫…これからは僕が出来る限り側にいて君を守るから。なんでも相談して?」
と言うアゾット。
騙されてんなぁと、アントーニョは思った。
イヴは取り巻き二人がいなくなった途端、あの女王様ぶりをすっかり隠して傷ついた乙女を装ってアゾットを取り込んでいる。
おそらく…プリーストのアゾットは前衛のイヴとしては理想のパートナーなのだろう。
後ろで回復だけさせて自分は1億を狙える。

あとは…その二人の隣にはウィザードのエドガー。
「バットマンの場合…確かに実名言いふらしてたらしいからわかるんだけど…ショウは…どうして殺されたんだろうね?実名知ってたのイヴだけじゃないのかな?」
とてもとても冷静な口調でつぶやく彼に、アゾットは
「色々聞きたいのはわかるんだけど、彼女も本当に今日起こった出来事ですごく傷ついてるんだ。
せめて今日一日はそっとしておいてあげてくれないか?」
とイヴをかばうように二人の間に入った。

「でもさ、彼はメルアドすら教えてないんだよね?」
と、それでもさらに食い下がるエドガーに、イヴがアゾットの後ろから顔を出す。

「えと…ね、それに関してなんだけど…気になる事が…」

無理しないでいいよ、というアゾットに、
「大丈夫、今はみんなそのために集まってるんだし…」
と答えて話しだすイヴ。

「彼ね…メグちゃんにメルアド送ったって言ってたの。辞めるって話もしてないって。
なのに私の所にきたメッセージでは彼は辞める事になってたから、びっくりしてたわ。
他の誰かと間違えたか何か勘違いしたのかもしれないしメグちゃんに一度確認のメッセージ送ったから返事待ちって言ってた…」

え……

それを聞いてアゾットもエドガーも一瞬固まる。

「確かに…エドガー君が二人と仲良くて色々聞いてた私を疑うのももっともだと思う。
…でもね…私もホントに今怖くて怖くて震えが止まらないの…信じてもらえないかもだけど…」

そこでイヴの言葉は途切れた。

そんなイヴをかばうように、アゾットがまたイヴを後ろに隠す様にエドガーの前に立ちはだかった。

「仮に…僕が犯人だとしたら、真っ先に自分が疑われる様な殺し方はしないと思うな。
君もそう思わないか?」

まあ…それは確かに……
バットマンはともかくとして、ショウは実名とか言いふらしたりしてないのだから、普通は仲良くしててリアルを知ってる可能性が高いイヴが疑われるだろう。
犯人とてそんな事わかるはずだし自分が疑われるような事をするだろうか…

その言葉にエドガーもさすがにちょっと黙り込んで、それから_あたりを見回した。

「キーパーソンはメグって事かな。彼女に事情を聞けば少しは状況が見えるかも。
だけど…来てないな」

エドガーの言葉にアゾットはちょっと困った様にため息をついた。

「僕がインした時には確かにいたんだけどね…。何故だかログアウトしちゃったみたいだ。
送ったメッセージが届かない。明日事情を聞くしかないね」

そしてそんな話をしていると、
「やあ、そのキャラ可愛いね」
と、アーチャーのオスカーが何故かアーサーの横にぴったりと寄り添う様に立った。
スっと即一歩引いて距離を取るアーサー。
するとまたオスカーが一歩近づき、またアーサーが距離を取る。
しばらく二人はそんなやりとりを繰り返してる。

「自分、何しとるん?!あーちゃん嫌がっとるやろがっ!!やめんかいっ!!」
イラッときたアントーニョが思わず割って入って怒鳴る。
言われてオスカーは一瞬沈黙。
あ…ちょっとショック受けてるかと思えば、またいきなり
「あーちゃんて呼び方可愛いなっ。トーニョってまさかアーサーのリア友?!!アーサーってリアルでもやっぱり可愛かったりする?!」
と、なんだか嬉しそうにまたピタっとアーサーとの距離をつめた。

なんだか絶対に変だ!!
「リアルもさ、そんな感じ?可愛い系?服とかどんなの好き?
体格は?やっぱり華奢なのかな?
制服は学ラン?ブレザー?アーサーのイメージだとブレザーって感じだね。
寝る時ってさ、パジャマ?Tシャツ?それとも着ないで寝ちゃったりとか?
あ~、そだ、トランクス派?ブリーフ派?…………」

すごい勢いでば~っと通常会話がスクロールしていく。
アーサーはおもいっきりひいてる。というか、リアルで怯えている気がした。

「自分、いい加減にせな怒るでっ!!これ以上しつこうしたら主催者に通報やっ!」
そこまで言ってようやくオスカーはアントーニョが本気で怒っているとわかったらしく、肩をすくめて離れて行った。



結局確信を握るキーパーソンのメグが来ていないので事情はまだ霧の中だが、とりあえずそれぞれの人物像はわかってきた。

生き残ってるのは12人中10人。

アントーニョ達4人を除くと、殺された二人と仲の良かった渦中の人イヴ。
メルアド交換を申し出たまま姿を消したメグ。
本当かはわからないが一応怯えてるようなイヴを慰めてる癒し系の男プリーストのアゾット。
周りから情報を聞きまくって犯人を特定しようとしているらしい男ウィザードのエドガー。
アーサーを追いかけまわしていたアーチャーのオスカー。
そして……このゲームを始めて以来、他人と一切連絡を取ろうとせずメルアド交換すらスルーしてる謎のアーチャー、ヨイチ……

その日はとりあえずアゾットが音頭をとって、それぞれ自己紹介をして解散したが、みんなが微妙に全員を警戒している嫌な雰囲気だった。

ショウを殺した犯人がバットマンを殺した犯人と同一人物だとすると、犯人は恐らくこの中にいるのだ…。





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