オンラインゲーム殺人事件_Anasa_第一章_5

パーティーは楽しい (4日目~6日目)


アーサーが入ってさらにゲームが楽しくなった。

アーサーはギルベルト以上に色々詳しく調べ上げていて、3人に色々教えてくれて、色々わかってきた。



ただペシペシ敵を叩くだけじゃ駄目で、何に使うかわからずにポイ捨てしてたアイテムとかも雑貨屋に持って行けば金に替えてくれるし、雑貨屋で二束三文のアイテムでも、合成屋に持って行けば合成してくれてすごい装備やアイテムに生まれ変わったりもするなど、本当に色々だ。

レベル上げるだけでも少しずつ強くはなっていくが、そうやって貯めたお金で武器や防具を買えば、全然強さも変わってくる。

何も情報のないところから一人でそこまでシステムを調べ上げたのには、戦術厨のギルベルトもびっくりだ。
リアル随分頭良い奴なんじゃね?と、昼間に携帯でそんな事を言っていた。

4人はあれからいつも一緒で、同じ時間に同じ場所で待ち合わせて行動する仲間になっていて、アイテムなんかはお互い必要な物を融通しあったりとか協力するようになっていた。

戦闘の時の役割なんかも決まっていて、まずフランシスが能力アップの魔法をかけて、アーサーが弱い魔法で敵を一匹安全地帯までひっぱってくる。
それをアントーニョが殴ると敵はアントーニョに向かっていく。
そこでフランシスが殴りに参加。敵のHPがある程度減ったところで、アーサーが魔法で一気に削る。ギルベルトはHPや毒とかを回復するという感じだ。

3人でやるより全然面白くて、レベルが上がるのもとても早い。
アーサーに教えてもらって最初のミッションも終わらせたので、指定した口座には主催から10万円が振り込まれた。

4人だけじゃなくて他の参加者もボチボチ仲間を見つけてパーティーを組んでるようで、例のイヴはバットマンだけじゃなく、もう一人ショウという名前の男のベルセルクも引き連れて、女王様状態のようだ。

今も3人がアントーニョ達の近くでレベル上げしてたのだが、まったり立っているイヴの所までショウが敵を連れてくると、バットマンがいきなり無言でダっとどこかに駆け出して行った。
それをスルーで二人はそのまま敵を叩いている。

「イヴ~!」
やがてバットマンが戻って来た………でかい巨人を連れて…。
「俺の敵の方が大きいんだぞ!やっぱり俺すごいだろっ?」

えっと…自分別の意味ですごいんちゃう?HP真っ赤やん?
てか…倒せるん?それ……

ゲーム慣れしていないアントーニョですら思う。

『脳みそに何かわいてるな……』
ギルベルトもチラリとそちらに目をやってつぶやく。
『まあ…とばっちり来ない程度に距離取っておこうか…』
フランシスも苦笑しながらみんなのHPを回復し終わって自分のMP回復のために座ってるギルベルトと少し離れた岩陰に避難した。

アントーニョは敵の感知範囲外からそちらの様子を伺うアーサーの横に立ってやっぱりそちらに目を向ける。

4人より少し遅れてバットマンの連れて来たモノに気付いたイヴとショウ。
まず叫んだのはイヴだ。

「ちょ、ちょっと信じらんないっ!何連れて来てんのよっ、あんたっ!!」
「一番強そうなの連れて来たんだぞっ。すごいだろっ」
「すごいわよっ!もう信じらんないくらいすごい馬鹿っ!!倒せない敵連れて来てどうすんのよっ!!」
イヴの言葉にバットマンはポカンと立ちすくんだ。
「え~?!ヒーローに倒せない敵がいるなんて、ありえないよっ。」
「ありえないのはあんたよっ!それ連れて向こう行って死んどいてよっバカっ!こっち連れて来ないでっ!!」

『ほんと……ありえねえな……』
そちらのドタバタを遠目で見ながら呆れた息をつくアーサー。
しかしアーサーはそのまま後ろを振り返りフランシスに声をかけた。
『フラン。能力アップ一通りかけといてくれ』
その言葉にギルベルトの隣でやっぱりMPを回復してたフランシスが立ち上がってかけよってくる。
『なに?助けるの?大丈夫?』
そう聞きつつも、そのままアーサーの隣で魔法をかけ始めるフランシス。
『ん~、義を見てせざるは勇なきなりって言うからな。でも倒せるかわからねえからお前らは離れてろ。』
言ってアーサーは背中に背負った大きな杖を手に携えた。

4人の側でそんなやりとりが繰り広げられてる間にも、イヴ達は修羅場を繰り広げてる。
「きゃあぁっ!ちょっと、どうすんのよ、これっ!」
悲鳴を上げるイヴの前に
「まかせろっ!」
と、立ちはだかるバットマン。
「暗黒に染まりし神の使徒、このバットマンの虚空より現れいでる刃の煌めき!受けるがいいっ!!
ナイトメアスーパーメテオインパクト!!!」
そのまま巨人に特攻………スカっとかわされた。
「ムッ!貴様、やるなっ!!」
巨人の周りをそのままグルグル逃げ回りながら叫ぶバットマン。
呆れるイヴとショウ…。

「イヴ…この隙に離れようぜ」
もっともな提案だ。
うなづいてイヴはショウと共にジリジリと後ろに下がって距離を取り始める。

「ク、クソッ!お前は俺を怒らせたぞっ!黒き業火がごとき俺の怒りを受けてみよっ!今燃え上がる漆黒の必殺技!ファイナルゴッドライトニングスラッシュ!!!」

………スカッ。
…あかんわ、こりゃ。
残りHP…たぶん10以下?そろそろ死ぬんちゃう?
と、呆れるアントーニョの視界の向こうで、またグルグル巨人の周りを回っているバットマンに、巨人が手に持った斧を容赦なく振り下ろしかけた時、黄色い光がくるくると巨人の周りを回って、巨人が動きを止めた。

ついで、続けざまに巨人に襲いかかる炎の渦。
HPが高いのかさすがになかなか倒れないが、アーサーは足止めの魔法が切れる寸前にまた足止め魔法の詠唱を始め、魔法が切れた瞬間、絶妙なタイミングでまた足止め魔法を着弾させる。

「すげえな、あれ。さすがに防御紙薄なウィザードをソロでやってただけあるわ」
ギルベルトが感心したように言う。
何かあればたいした事はできないが助けに入ろうと思って構えていたアントーニョもホっと力を抜いた。

アーサーの参戦に気付いてバットマンはようやく逃げ回るのをやめ、巨人相手にスカスカと素振りを始める。
そしてアーサーはそのまま何度か足止めの魔法を使いながらも巨人を倒した。

ズドン!と音をたてて倒れたあと、ス~っと地面に巨人が消えて行くのを確認すると、そのまま無言でこちらに戻ろうとするアーサーの背中に、バットマンが
「待ってくれ!」
と、声をかける。

「俺は暗黒神の使徒、黒い稲妻、ウォーリアのバットマンだぞ。共に強敵を倒した盟友の君の名前を聞きたい」
アーサーは一瞬無言で立ち止まる。そしてため息。
「…キャラ名…頭の上に出てるだろ。見えねえのか。」
それだけ言ってまた歩き始めるアーサー。

『まあ…そうやな。そもそもバットマンの攻撃一発も当たってへんから”共に”倒してないやん…』
と、珍しく空気を読んでパーティ会話に切り替えてアントーニョがつぶやいた。

「アーサーすごいねっ♪マジかっこ良かった♪」
巨人が倒れて安全なのを確認してイヴが戻ってくる。
「今度リアルで会わない?名前教えてっ?」
ピタっと寄り添いかけるイヴからスっと距離を取るアーサー。

彼女の言葉にバットマンが口をはさむ。
「俺の親友だから、今度3人で会わないかいっ?」
「何よ?アーサーのリアフレなの?バットマン」
「いや、今強敵を一緒に倒して盟友になったところさっ!」
「なってないっ!」
アーサーがあきれたように言う。

そんなバットマンとは対照的に、イヴのもう一人の仲間ショウは
「アーサーがすごいわけじゃないよ、イヴ。向こうにはエンチャがいるから。
能力アップの魔法かけてるから同じくらいのレベルでも強いように見えるだけだって」
と、つめよる。
一方そんな敵対心ビシバシに言うショウの言葉にもアーサーの方は極々冷静に
「ま、そういうことだ。」
と肩をすくめると、それ以上色々言われるのはごめんとばかりにちゃっちゃとアントーニョ達の方にかけ戻って来た。

『悪い。待たせたな』
アントーニョ達に言うアーサーのはるか後方では
「もうっ!アーサー行っちゃったじゃないっ!バットマンもショウもエンジェルウィング一つ取ってこれないくせにっ」
と、イヴが怒っている。
そしてそのままお互いレベル上げに戻った。



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