聖夜の贈り物2章_2

子供扱いは悔しいが心地よく、でも心地よいと思っている自分が少し悔しい。
さらにいうなら…そんな自分の子供じみたところを男に大人な目でみられているのが気恥ずかしい。
自分では見えないが、だんだん熱がたまってきた頬は真っ赤に違いない。
恥ずかしさが限界に達する前にこの空気をなんとかして、現状を打開しなければっ…。


「料理っ!」
何度か何か言おうとパクパクと口を開けたあと、ようやく声にできたのはそれだけだった。
当然それだけで意図が伝わるはずもなく、男は頭をなでていた手をピタリと止めて、
「食えそうになってきた?それとも何か嫌いな物でもあったん?」
と、まあそれまでに比べればまともな反応を返してくる。
しかし今回はアーサーの意図の方が一般的なものと違ってた。
当然自覚のあるアーサーは、予め聞こうと思っていた事を口にする。
「…じゃなくてっ。一人なのになんでこんなすごい料理用意してたんだ?」

そう、さきほどからの疑問が解けてないのだ。
「あ~、それか。答えてへんかったな。」
一応理由はあるらしい。
男はちょっと気まずそうに頭をかいた。
さきほどから飽くまで穏やかで大人な様子だった男のちょっと違った反応に、アーサーはもしかして恋人に振られて…といった類の、触れてはいけない話題に触れたのかと焦ったが、続く男の言葉は、やっぱり意図の読めない意外なものだった。
「俺なぁ、子供の頃から去年まで上司の孫の護衛やっとったんよ」

男から的確にしてわかりやすい言葉が返ってこない事には不本意ながらも慣れてきた気がする。
わからなければ具体的に聞くしかない。
「それと一人で大量の料理用意してたのと何の関係があるんだよ?」
「わからん?」
と当たり前に不思議がられると、自分の方がおかしい気がしてくる。
慣れたと思ってたのは気のせいだったようだ。
どう考えても男のペースに乗せられている気がする。
それでもアーサーは
「全然わかんねえよ。てかそれでわかる奴いたら連れてこいっ」
と仕方なしに突っ込んだ。出ないと話がいつまでたっても進まない。

「つまりな、去年まで二人でクリスマス祝っとったんよ。で、なんとなくな、今年は一人きりってわかってたはずやってんけど…気がついたら二人分用意しとったと、こういうわけなんや」
ようやく全ての糸がつながって見えた。
その安堵からついつい
「で?そのお孫様は今年はどうしたんだよ?」
と口にしてしまった直後、アーサーは焦った。
これ…死んだとか護衛役をクビになって他の護衛がついたとか、そういう話か?
どちらにしても良い話じゃないのでは?と、アーサーは慌てて口をつぐむが、当の男はあっけらかんとした口調で
「おおきゅうなったんで、城に帰ったで?今じゃ立派な跡取り様、未来の王様や」
と爆弾発言をかましてくれた。







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