「なあ…もう一回。」
一度熱を交わした後、アントーニョは半分ダメ元で言ってみるが、
「ダメだ。明日起きれなくなるから」
と、アーサーにきっぱり拒絶される。
「え~、起きれんでもええやん。明日も休みなんやし」
さらにそうすがってみるが、
「い・や・だ!」
と、きっぱりはっきり拒否されて、そこまで言わんでもええやんと口をとがらせてみるものの結局諦めて、アントーニョはアーサーの横に身を横たわらせた。
アントーニョが諦めた事にホッとしたように懐に潜り込むように抱きついて眠るアーサーの肩を抱き、アントーニョも仕方なく目を閉じる。
アントーニョがアーサーに初めて会ったのは、1000年近く前。
自身はまだ国土回復運動、レコンキスタ真っ最中で、アーサーはフランスに支配されていた時代、旧知の仲であるフランスの化身フランシスを訪ねて行った時の事だ。
はっきりいって一目惚れだった。
それから紆余曲折があり、その300年ほど後に心を交わしめでたく恋人同士になったものの、その数十年後には国の事情で離れる事になった。
そして現代。
離れていた年月分積もりに積もったアーサーの誤解とネガティブな発想を蹴散らしまくってようやく再度手に入れた恋人の座。
いったん関係が戻ってしまえば数百年のブランクなどまるで感じさせず…と言いたいところだが…実際おおかたの事に関してはそうなのだが、ただ一点だけ、当時と変わった事がある。
アーサーがさせてくれなくなった。
いや、正確には一晩に一度きりしかさせてくれなくなった。
全くさせてくれないわけではないのだから、良いじゃないかと言う事なかれ。
国は意外に忙しいのだ。
隣国と言っても他国同士の、人間で言うならば遠距離恋愛。
情熱の国を体現するアントーニョとしては、会えた日くらい一日中とは言わないが一晩中くらいは愛し合って過ごしたい。
実際数百年前に付き合っていた頃は、数日滞在する間、翌日仕事がない時は一日ベッドで睦みあって過ごす事もしばしばあったのだ。
別に飽きられたというわけではなさそうだ。
している時は可愛らしく求めてくるし、感じてないわけではない。
体力的にも昔はまだアーサーは小国だったので身体も幼さの残る少年で、すでに大国だったアントーニョがこみあげてくる思いのまま情熱をぶつけると、しばしば熱を出して寝込むありさまだった。
それでもなお時間を惜しむようにお互い肌を重ねたがった。
老大国と揶揄される現在でも実際の身体年齢が老人なわけではない。
23歳と言う、人間としてはまあ体力がある時期の年頃になっていて、昔に比べて出来ないような体力ではないのだ。
なのに何故?
隣に愛しい恋人がしどけない姿で眠っているのに手を出せない、悶々としたものを抱えたまま、アントーニョは眠れぬ夜を過ごす事になる。
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