「珍しっすね~。兄ちゃん」
不機嫌に国に帰ったフランシスを迎えたのはモナとシェリー。二人の妹たちだ。
妹…と言っても腹違いなのでフランシスにはあまり似ていないが、血のつながりがあり唯一“お遊びの相手にならない”ため、心を許す数少ない相手である。
「完全に失敗…ではないけどね。蛮族が策なんて練ってくるとは思わなかったから、少し油断したよ。」
失敗…の言葉に綺麗な顔を少しゆがませながら、それでもフランシスは笑みを浮かべるが、二人からは
「ふむ…結局失敗したのだね」
「負け惜しみっすね♪」
と、容赦ない言葉が降ってくる。
まあ…この二人に優しい慰めなど期待するだけ無駄だ…と、フランシスは割り切って、先の事を考える事にした。
「とりあえず…蛮族でも少しは脳みそあるのはわかったから…礼はさせてもらわないとね」
と、フランシスは玉座に身を沈めた。
「たかが眉毛の子供相手になんでそんなムキになるっすか…」
というシェリーにモナが答える
「国としては体面と言うものがあるのだよ、シェリー。元々うちの国の物を預けておいたら勝手に他国にやられていたという事は大変な問題だ。」
「そういうもんっすかねぇ…兄ちゃん、遊び相手なんていくらでもいるんだから、欲しいって言う奴いるなら一人くらいくれてやればいいのに…。」
二人がそんな会話を交わすのを遠くに聞きながら、フランシスは軽く目を閉じて考え込む。
今回は本当に油断し過ぎてた。
よもやあんな風に策を弄してくる相手だとは思ってもみなかったのだ。
そうでなければ風の国の王があんな蛮族に策略で負けるなんてありえない…そう、決してありえてはいけないのだ。
「本気でお礼はしないとね……」
美しい柳眉を少し寄せると、フランシスは口元だけ笑みの形をつくる。
どの駒を使おうか……脳裏にズラっと使えそうな人材のリストを浮かべた。
「ああ、あれがいいかな…」
フランシスは思いついたように、ニコリと笑みを浮かべた。
蛮族の方はわからないが、おそらくアーサーの方のコンプレックスを刺激してゆさぶりをかけるのには、あの子は打ってつけだと思う。
「とりあえず…離間の計だよね、やっぱり…」
ニヤリと人の悪い笑みを浮かべると、フランシスは呼び鈴を手に取った。
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