生贄の祈りver.普英_12_9

欲しくて独占したくて…でも愛おしくて傷つけたくない。

このまま自分が流せばアーサーは流されてくれるのかもしれないが…と、ひどく迷ったが、結局ギルベルトは

「アルト、お前、言ってる意味、言われてる意味、ホントにわかってるのか?」
吸い込まれそうに大きい澄んだアーサーの瞳を覗きこんで、そう問うた。

大きなペリドットの瞳は神に向かう神子のように澄みきってその問いに全く揺らぎをみせることはなく、

「つまり…ここがずっと俺だけの住処になって、ここにいればギルがここに戻ってくる…そういう事だろ?」
と、当たり前のことのように言う。

「…お前…さ、本当に閉じ込められて構わねえの?」
「何かダメなのか?
…俺一人のために一生こんな広いスペースを確保できないということか?」
「いや、そういう事じゃねえって。
アルトが閉じ込められてくれるなら、こんな塔どころか城の一つくらい建ててやってもいいくらいなんだがな?
ただ…普通嫌だろ?幽閉みたいなもんだし…」

「…幽閉……なのか…」
「いや、違って。
他にもお前を欲しがっている輩はいるし、俺様はただ独占したい、誰にも渡したくないだけなんだけど。
もちろんルッツに無事王位を譲れたら俺様はずっとアルトと一緒に暮らすし、何かあっても即対応できるから、多少外に遊びに行くくらいはさせてやれるけど、それまでは離れている時間に何か企んで来るやつが出ても嫌だから、生きている事自体を隠したいから、ここに出入りすんのは俺様と…せいぜいエリザくらいになる。
ってことで、実質、年単位で他のやつと会えなくて、ここから出る事もできないってなったら幽閉されてんのと変わらないだろ?」

「…よく……わからない…」
少し伏し目がちに考え込んだ後、アーサーは

「ああ…でも一つだけ条件がつけられるなら…嬉しいけど」
とギルベルトを再度見あげた。

「なんだ?本当にアルトがここにいてくれるんだったら、なんでも叶えてやる」
「もしいつか…ギルが俺を要らなくなったら…外に放り出したり人質に戻すくらいならお前の手で殺してくれ。俺はもうどこの誰でもなくて、他の誰のモノでもなくて、ギルのための生贄だから」
アーサーの言葉に、ギルベルトは色々な意味でいっぱいいっぱいになって、とっさに言葉が出ずにただギュッとアーサーの小さな体を抱きしめた。



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