その日もギルベルトは大あくびをしながら、ランプを片手にそ~っとアーサーの部屋のドアを開けた。
風邪で寝込んで以来、ギルベルトがベッドを離れる事を許さないため、アーサーがたまに人目のなくなった時間にこっそり起きているからだ。
だからアーサーが就寝してギルベルトが自室に引き上げた後、自分が就寝するまでの2時間ほどは放置して、自分が寝るぎりぎりに注意しに来るのがギルベルトの日課になっている。
そろりと足音もなく部屋に足を踏み入れると、ギルベルトはアーサーがたまにそこで本を読んだり刺繍をしたりしているリビングのソファに目をやるが、今日はいない。
ついでリビングからバルコニーに続く窓に目をやるが、バルコニーにも人影はない。
今日は珍しく寝てんのか…と、ギルベルトはブランケットをかけなおしてやってから戻ろうと、寝室へと足を運んだ。
暗い室内にベッドの白いシーツがうかびあがる…が、誰かが寝ている様子がない。
「…っ!」
慌てて駆け寄ってシーツの上からポンポン叩いて確認するが、確かにもぬけの空だ。
ギルベルトの全身から一気に血の気が引いた。
「アルト!どこにいるんだ?!」
ランプを小テーブルに置いて部屋中探し回るが、どこにもいない。
そして確かにいない事を確認すると、ドアを一旦閉めて走っていった。
「エリザ!開けろっ!!」
部屋に鍵がかかっていることを確認すると、ギルベルトはドアを蹴破った。
「あんたねぇ…女性の部屋なんだから、せめてノックしなさいよ……」
ドアが蹴破られたものすごい音で書斎から出てきたエリザはかつてドアだった木の残骸に目をやってため息をつく。
まあこのあたりの荒っぽさには慣れっこなので、たいして気にはしていないが…
「そんな場合じゃねえ!!アーサーが部屋にいねえんだ!!」
「ちょ、待ったっ!とりあえず門番に確認するわっ。外出てないなら城の中いるんでしょうし…」
エリザはさすがに顔色を変えて上着をひっつかむと、廊下をかけ出した。
「あんたが行くとおおごとになるから、ここで待ってなさいっ!」
と言い置いて、詰め所に入るエリザ。
しばらくすると、少しホっとした様子ででてきた、
「外には出てないらしいから。城の中を探しましょう」
と、エリザは先に立って歩き出す。
「とりあえずいったんルートとも合流で、時間決めて待ち合わせね」
と、懐からペンとメモを出してすらすら何か書くと、ぴゅぅっと口笛を吹く。
そしてその口笛に誘われるように飛んできた小鳥の足にそのメモを結び付けると、鳥はいずこへと飛んで行った。
「ルートにとりあえずあんたの部屋に来るようにメモ飛ばしたから、いったん集まりましょう」
と、言うエリザにうなづくと、ギルベルトも自室へ急ぐ。
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