1月18日…言葉通り誕生日であるにも関わらず仕事で朝1でイギリス入りをしているプロイセン。
しかしそんな状況にも関わらず、彼は上機嫌だった。
なぜなら…その仕事は書類をイギリスに届けるだけ。
どうしても他には任せられないものだと言って頼んできた弟は、出掛けに届けたらすぐ戻るように、くれぐれも寄り道などしないようにと念押しをしていたので、おそらくサプライズパーティーの準備をしたくてのこれなのだろう。
ミエミエなのだが、そこは知らぬふりをしてやるのが兄というものである。
「仕方ねえなぁ、ひとっ走りいってくらぁ」
と、プロイセンは気づかぬふりでイギリス行きの飛行機に飛び乗った。
が、そこでちょっとしたトラブルが起きる。
上機嫌でイギリスの事務所まで出向いたプロイセンだったが、そこで彼を出迎えたのはイギリスの秘書だった。
「あ~、プロイセンさん、本当に申し訳ありませんっ!
イギリスさん、何か突発事項が起こったみたいで、連絡が取れなくて…。
すぐ自宅に行って確認取りますんでっ!!」
額に思い切り汗を掻きながら、ペコペコと頭を下げる見覚えのある顔。
確かハワードと言ったか…。
自宅に行って確認を取る…は、構わないが、それで確認が取れて?すぐ来るのか?
渡して帰れるまでおおよそどのくらいの時間がかかるのか?
自分の部下ならそう言うところだが、この様子だとこの人のよさそうな…いかにも実直そうではあるが、あまり頭の回転が早そうには見えない男には、そんなこと把握できていないだろう。
普段なら気にしないように言ってゆっくり待っていてやるのだが、今日は困る。
可愛い弟がきっとサプライズパーティーの準備をして待っているのだ。
兄としては早く帰ってやらねばならない。
しかし一応絶対に手渡しの仕事と言われているわけなので預けるわけにもいかず、プロイセンは息を吐き出した。
「あ~、いいよ。俺様の方があいつん家行くわ。そのほうが早いし。」
「ええ??でも……」
「今日は急いでんだ。悪いけどな」
そう、一刻も早く仕事を済ませて自宅へ帰りたい。
プロイセンが笑みを浮かべてそう言うと、ハワードはまた恐縮して、すみません、すみませんと頭を下げた。
それを半ばスルーして、プロイセンはイギリスの事務所を出て自宅へ向かう。
普段なら公共の乗り物と徒歩派だが、今回は急ぐのでタクシーで。
ちょくちょくというわけでもないが何度か訪れたイギリスの家につくと、不用心にもドアがひとりでに開く。
……が、もっと恐ろしいことに、中に入ると怪しい煙。
「なんだっ?!テロか何かあったのかっ?!!」
さすがに同じヨーロッパの国に何かあったら自国にも影響がないとも限らないと、プロイセンが焦って廊下中の窓を開けて煙を外に追い出しながら進んでいくと、確か居間がある方から泣き声がする。
一人はイギリスなのは間違いはない。
…というか…仕事放り出して何子どもみたいに泣いてんだよ、23歳…と思うと同時に、はて?とプロイセンは首をかしげた。
もう一つの泣き声はどう考えても大人じゃない。
子ども…いや、赤ん坊???
慌てて居間のドアを開け、まず窓に駆け寄って廊下よりは若干マシながらもやっぱり立ち込めている煙を追い出す。
そしてプロイセンは立ち尽くした。
なんだ…これ…。
大小の金色のヒヨコアタマがが泣いている。
「…おい…何してんだよ…」
とりあえずちっちゃい方は赤ん坊なので、事情を聞こうなどと思ってはいけない。
プロイセンは何やら怪しい紫っぽぃ何かが入った哺乳瓶を手に号泣しているおっきい方に声をかけた。
「アリスが…ずっとミルク飲まないんだ…死んじまったらどうしよう……」
プロイセンは、ヒックヒックとシャクリをあげながらイギリスが言うその言葉にまずつっこんだ。
「ミルクて……まさかその怪しい液体じゃないだろうな?」
いやいやありえない。
飲まないより飲んだ方が死ぬんじゃないか?それ…
と、プロイセンが青くなると、イギリスはキョトンと
「怪しい液体ってなんだよっ」
と言う。
そんな二人のやり取りに、か細く泣いていた赤ん坊は第三者に気づいたらしい。
「…まんま……ぱぁぱ……まんまぁ……」
と、こちらも必死な形相で短い手足をバタバタさせながら這いずってくる。
「ほいほい、お腹ペコペコだよなぁ。可哀想に」
例えそれがイギリスの家にいたイギリスの家の子どもだったとしても、赤ん坊はすべからくきちんと保護すべきである。
飢えさせたまま放置なんて虐待だ。
…とそんな堅苦しい理屈とは別に、抱き上げた瞬間、その柔らかさと温かさに愛おしさがこみ上げてくる。
「イギリス、ちと、キッチン借りるぜ?」
プロイセンはイギリスの身に着けているエプロンを取ると、それを身につけ、くれぐれもそれ飲ませようとすんなよ、と、念を押して赤ん坊をイギリスに預けた。
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