生贄の祈りver.普英_10_2

こうしてギルベルトと男装の綺麗な女性に連れられて謁見の間に入ったフェリシアーノは、そこに信じられない人物の姿を認めた。


「兄ちゃんっ!なにしてんのさっ?!!」
思わず叫ぶと、フェリシアーノによく似た…しかし少しきつい顔立ちの少年、ロヴィーノは駆け寄ってきて、フェリシアーノにヘッドロックをかます。

「この馬鹿弟がっ!!何こんなとこまで連れてこられてんだよっ!!
別の国に行けって言われた時点で逃げ帰ってこいっ!カッツォ!!」
抱えられたままの頭を拳骨でグリグリされて、フェリシアーノは
「痛いっ、痛いよ、兄ちゃん!」
と悲鳴を上げた。

「あたりめえだっ!痛くしてんだ、こんちきしょうめっ!!」
と、さらに言うロヴィーノ。

終わりそうにない一方的な兄弟げんかをしばらくぽか~んと眺めていたギルベルトは、
「おい、とりあえずなんの用なんだ?」
と、玉座に腰かけ、声をかけた。

その声にビクゥ!と二人してすくみあがる双子。
それでもフェリシアーノを後ろに隠すようにして、ロヴィーノはギルベルトを振り返った。

「お、弟は返してもらうぞ。
俺の知らない所で家臣たちが勝手にこっちに送りつけやがったんだ」

大国の王の威圧感の前に精一杯の強がり。
自分と同様兄も臆病なのは知っている。
ギュッと後ろで自分の手を握っている兄の手が震えている事にフェリシアーノは気付いた。

「そんなそっちの内部事情なんてこちらには関係ねえな。
自分のとこの家臣もちゃんと躾けられない自分が悪いんだろ。
なんでうちが合わせなきゃいけねえんだよ」

ギルベルトは足を組み、玉座の肘置きに頬杖をつきながらそう返す。
大国…という立場を別にしても、もっともな意見だ。

「そうだ、だからっ!」
ロヴィーノはそこまで言って少し言葉を詰まらせて、それから一気に言った。

「俺が代わりになる!俺が残るから弟は国に返せ!」
「兄ちゃん、何言ってんのさっ!兄ちゃん王様なんだからダメに決まってるじゃないっ!」
「うるせえ!双子なんだからお前が戻って王になりゃいいだろっ!」
「無茶言わないでよっ!」
「無茶じゃねえよっ!」

「いや、無茶だろ?」
口をはさんだギルベルト。
さすがに呆れた顔をしている。

「国王ってそんな簡単なモンじゃねえよ。
なるまでは誰でもいいけどな、いったんなったらコロコロ変わっていいもんじゃねえ。
対外的に信用なくしかねないぞ?」

「簡単じゃねえよっ!」
ロヴィーノはクルっとギルベルトを振り返った。

そこでギルベルトと目が合うと、ビクっと身をすくめるが、そこでまた勇気を奮い起すように、口を開いた。


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