宇髄からの返答は驚くほど早く来た。
聞いて電話を切って実に30分。
「早いなっ」
と笑うと、宇髄は
『ジジイの秘書の中井ちゃんはめちゃ優秀だからな。
つか、やること早くねえと宇髄財閥総帥の秘書は勤まんねえよ」
とこちらも笑う。
そんなやりとりのあと、
「で?どうだった?」
と、そこで錆兎が本題に入ると、宇髄はまず結論から
「あ~、順調な方だと思うぜ?」
と述べる。
『上場してるし、このところずっと黒字決算だし、金融機関の信用も悪くねえ。
つか、万が一な?この規模の企業の資金の焦げ付きがあったら、悪いが冨岡義勇の親父さんの優良だとしても中小企業の資産を処分したくらいじゃ、焼け石に水だろ。
まあ…姉弟の資産足してもおこずかいくらいな感覚じゃね?』
「ふむ…やっぱりそうか……」
『…予測済みみてえだが、ちったぁ役にたったか?』
「ああ、一応公開されている情報を見た限りではそうじゃないかとは思ったんだが、裏が取れてなかったから。
宇髄財閥の会長秘書の情報なら確かだろう。
助かった」
『おう。まあ社長様の依頼ならなんでもなるはやで対応してやるから、頑張れよ』
「ありがとうな。また何かあったら頼む」
これで経済的な事実確認はできた。
あとは事実誤認であろう情報がどこから来たかの客観的な情報があれば完璧だ。
そうして待っていると、やがて真菰がオンラインで蔦子とつないでくれた。
そこで錆兎は飽くまで状況確認のためということで、淡々と質問をしていく。
そしてわかったこと。
両親が亡くなって最初に連絡をくれたのは母方の叔父の真一。
そこで彼から父方の親族は事業経営をしているため常に資金を必要としていること、ゆえに少なくはない両親の遺産を相続する世間をまだ知らない蔦子と義勇は少し距離を置いた方がいいということを忠告されたという。
実際父親の葬儀の精進落としの場で父方の一番上の伯父に、祖父の時の相続について適切ではなかったかもしれないという話をされかけて、真一がそれは今話すことではないとかばってくれたので、全くのでたらめではないと思うとのことだった。
その後、父方の親族からの電話は時間がないからと極力すぐ切るようにしているが、何度も父方の実家に顔を出さないかと伯父からも従兄弟からもひっきりなしに電話が来る。
なので少し怖いし参っている…と蔦子は語る。
蔦子の話はたぶんに感情と言うか、蔦子から見た印象というものが含まれていると錆兎は思った。
宇髄の情報は感情の一切入らない客観的事実だ。
冨岡本家は別に姉弟の資産を必要とする理由はない。
…とすると……ふむ……。
母方の叔父の真一からの話は姉弟を父方から遠ざける意図があってのことだろうからあてにならないとして、蔦子が直接的に父方の親族に言われた言葉の意図はなんだ…?
改めて考えた時に、錆兎はふと一つの考えに行き当たった。
冨岡姉弟の父は父方の親族の末っ子である。
そう考えるとそういう可能性もあるのか…と、考え着いた時点で、錆兎は義勇の父方の兄弟の長男である伯父に話を聞くべく、アポイントを取るために弁護士である槙寿郎に連絡を入れた。
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