とある狙われやすい少年について_28_前提条件の根拠

もともと錆兎は割合と日々忙しく過ごす方ではあるのだが、今日はそれでも一日かなり怒涛だった。

まず先日の姉弟の弟の義勇の方に大学に押しかけられて、なし崩し的に諸々に巻き込まれることに決めて、その後、とりあえず介入するのにある程度の関係は築いておいた方がいいと、雇用契約を結ぶ。

そうして彼を自宅に送って行って今後の方針を考えようと思っていたら、家出中の義勇を見かけた伊黒から電話。

それを迎えに行って、保護者に保護する許可を得て、軽く事情を聞いたあとに槙寿郎さんまで巻き込んだ。

そうして槙寿郎さんが帰ったあとに、今度は義勇から見たこれまでの両親それぞれの親族との関係を聞いてみた。

義勇の記憶にあるのは母方は祖父と叔父。
祖母は義勇が生まれるよりはるか前に亡くなっていて、会ったことはないらしい。

祖父は寡黙な人で、叔父はあたりの柔らかい人物。
だが母とは姉弟仲は良くなかったらしい。
その理由は義勇は知らない。
だが、母方の実家では母は子ども達、特に義勇をそばから離さないようにしていたとのことだ。

父方は父は5人兄弟の末っ子で、兄も姉もいる。
他4人の伯父伯母にも子どもが居たので、父方の実家に行くと大勢の従兄弟に囲まれていたそうだ。
こちらの方は、父が率先して子ども達を子どもの輪に入るようにと送り出して居て、義勇は少し気まずい思いをしたが、彼と違って特に人見知りではない姉は、同じ年頃の従兄弟達と楽しく過ごしていたとのことだった。

義勇達家族が双方の親族と交流を絶ったのは、母方の祖父が亡くなったタイミング。
そう、父方の都合ではない。

義勇も姉の蔦子も気づいていないようだが、以上の情報から分析すると、どう見ても父方よりも母方の親族の方が何かしらの問題を抱えていたように見える。

それなのに何故彼らは両親が亡くなった時に母方は良くて父方は悪いと考えたのか…
これはあるいは作為的にそう持って行った誰かが居るんじゃないだろうか。

まあこの場合、母方の親族、叔父なんだろうが…。


──ああ、宇髄、俺だ。ちょっと早急に情報が欲しいんだが……
槙寿郎が帰っていったあと、錆兎は義勇に風呂を勧めて、自分はそのままテーブルに置いたノートにペンを走らせる。
デジタルを使えなくはないが、錆兎は何か考えをまとめる際にはアナログ派だ。
タイピングするよりも万年筆で実際に文字を書いてみる方が頭に入る。

そうしていくつかの考えを書きなぐりながら、足りない情報を求めて宇髄に電話を掛けた。

『おう、なんだよ?例の坊ちゃんの件でか?』
「ああ。ちょっと仮説をたてるのにいくつか確認をしたい。
義勇の父方の親族の会社の経済状況とかわからないか?
義勇曰く、長男が祖父の会社を継いで、次男、長女婿はその会社に勤めていて、次女は外資系で海外移住、三男は国家公務員ていうことだから、祖父の会社の業績だな。
お前の実家の方でわからないか?」
『あ~、ちっと待て。ジジイの秘書に聞いてみて、また電話するわ』
「すまないな。頼む」

そんな風に宇髄に依頼したあと、錆兎は今度は真菰にメッセージを送る。

『ちょっと確認してくれ。
冨岡姉弟の父方の親族が資産を狙っているという話はどこから来たんだ?
ついでに父方は信用できないのに母方は信用できるという根拠は?』

当たり前に誰が危険で誰が安全かと言う前提を聞かされていたが、実はその根拠までは聞いていない。
そこからきちんと調べて判断していくべきだ。
と、錆兎はそう考えて、宇髄と真菰、双方からの返答を待った。







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