さて、何から手を付けるべきだろうか……
冨岡弟、もとい義勇を車で自宅に送ったあと、錆兎はオフィスに戻って少しだけ仕事を片付けて、いつもよりもだいぶ早めに自宅マンションに戻った。
振動したスマホに視線を向けると、珍しい人物から電話が来ていた。
伊黒小芭内。
何か複雑な事情で一時錆兎の幼馴染の煉獄杏寿郎の家に住んでいた。
なので、錆兎とも面識も交流もある。
が、元々それほど積極的に他者と交流を持つタイプではないので、会えば話はするが用がないのにマメに連絡を取ってくることはない。
なんだろう?と不思議に思いつつ、
──あ~、俺だ。小芭内が電話なんて珍しいな
と、電話に出てみると、電話の向こうは少しざわついていて、電車到着のアナウンスが聞こえるので、どこかの電車の駅らしい。
──今、大学の最寄り駅なんだが…
と、案の定そう答えが返ってきたが、その後に続く言葉がなかなか想定外だった。
「甘露寺と食事をして送って行こうと思っているんだが、待合室でうちの学校の制服を着た子どもが泣いていてな。
早く帰りたいんだが、甘露寺は優しいからな。
子どもが泣いているのが心配で帰れないというし、かといって本格的に関わってしまうと下手をすれば家まで送るだの警察に保護させるだのでとんでもない時間がかかる。
で、甘露寺が昼にお前と一緒にいたのを見たというから…
顔見知りでもなんでも知っている子どもならさっさと迎えに来てくれ」
制服を着た子ども…の時点で錆兎は上着に財布とスマホを突っ込んで外に飛び出している。
そのうえで、
──すまんが関わらなくていいから俺が行くまではそのまま見張っててくれないか?
と問うと、
──俺にその気がなくても甘露寺は優しすぎるから…
と返ってきてホッとした。
そうして通りに出てタクシーを拾って向かいつつ、錆兎は
「手間をかけてすまない。
今タクシーで向かってるから。
そういえば、ちょうど株主優待でTホテルのランチビュッフェの招待券が送られてきてたんだ。
俺は行く暇もないし美味しくいただいてくれるあたりに渡そうと思ってたから、会ったら渡すな?」
と、よく食べる甘露寺が喜びそうなアイテムを用意して甘露寺命の小芭内の機嫌を取っておく。
一方でタクシーの運転手にはおそらく普通に行けば20分、3000円くらいの距離のところをあらかじめ3万渡しておいて、
「申し訳ないが緊急事態なんで、極力急いでもらえないか?
釣りも受け取っている時間が惜しいからそのまま取っておいてもらって構わない」
と言うと、相手の側も急げば急ぐだけ自分の手元に残る金も多くなると言う事もあってか、裏道その他を駆使してかなり急いでくれた。
そうして自宅からおよそ10分強で駅に着く。
──ありがとう!世話になった。
と、錆兎は宣言通り値段も聞かず、そのまま飛び降りると、急いで改札を潜り抜けてホームへ。
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