とある週末、真菰さんの従兄弟に会うことになった。
その前日も父方の伯父から姉に従兄と結婚すればいい、そうすれば未成年の義勇ごと保護してやれるという電話が来ていた。
姉は美人だし従兄も結婚するのはやぶさかでないと思っているのは確かだろうが、伯父一家はやはりその資産があってこそのこの申し出なのだ。
そしておそらくだが、姉は結婚してしまえば資産を取り上げられて逃げ道もふさがれる。
そのうえでいい様に扱われるのは目に見えているし、義勇に至ってはなんのかんので保護者として資産管理をするという名目で資産だけ取り上げられて追い出されるだろう。
昨晩は伯父一人だったが、主である父を失って母もいなくなった義勇の家の電話は同じような申し出を繰り返す親族一同からの連絡で鳴りやむ暇がないほどだった。
義勇も姉もいい加減疲れてしまっていたが、まだ諸々の手続きも終わらず、下手に自宅を開けてしまえば乗っ取られるかもと思えば逃げることもできない。
姉のキレイな目の下にはくっきりと隈。
義勇だって両親が亡くなって一か月ほどで3キロも痩せてしまった。
今回、もし真菰さんの従兄弟が助けてくれたらこの地獄のような生活も終わるのだろうか…。
両親を突然亡くしても悲しむ余裕すらないこの生活が終わってくれたら……
姉と一緒に祈るような気持ちでカナエさんの家のリビングで待っていると、なんだか圧倒的な圧のある男性が入ってきた。
神話の神様みたいだ…と、義勇は疲れ切った頭で思う。
最初の印象は強そうでキラキラしくてカッコいい。
確かにこんな人が間に入ってくれたらたいていの問題は即解決してしまいそうだ…
そんな強い光のような輝きと勢いがあった。
助けてほしいとかそういう以前に、ああ、自分がこんな男性なら、親族を追い返して姉を守ってあげられたに違いない…と、自分との違いに少し悲しくなる。
そうして来て早々に相手は席につくまでもなく、自分は困っている幼馴染の胡蝶しのぶが気の毒で足を運んだのだが、義勇が男である以上、自分で解決すべきところだから全て断る!と宣言されてしまった。
まあ…それも最初に真菰さんに言われていたことなので、予測はしていたが、それに義勇や姉が何か言う間もなく、帰ってしまったので、本当に顔を合わせただけで終わって呆然とする。
──彼…義勇と同じ系列の大学よね?明日、ちゃんとお願いしに行くわっ!
と、この前の話は脳内でなかったことになっているのか姉が即両手のこぶしを胸の前で握りしめて言うので、
──姉さん、俺が行かないと動いてくれないと思うから俺が行くよ。
と、義勇は言った。
それに真菰さんも頷いていて、姉は不満げな様子だったが、カナエさんにも説得されていったんは了承した。
…ということで、お願いする役を買って出たわけなのだが、当然ながら義勇に勝算なんてありはしない。
相手は義勇がもうすぐ成人の男ということで、義勇自身が解決すべきだと思っているのだ。
出来るものならそうしたいが、その能力が義勇には絶望的にないのだ、と、どうすればわかってもらえるのだろうか…。
再度訪ねて行っただけで、先日の話を聞いていなかったのか?と怒られる可能性だってある。
もう正直、大学卒業までに必要な学費と生活費を除いて、あとはなんとか就職して暮らすからと義勇の分の遺産を渡してしまいたいくらいなのだが、相手はどこまでも強欲だ。
義勇の分だけじゃ絶対に納得しないし、なんなら資産だけじゃなくて姉の人生だって食いつぶす気満々なのである。
それだけは絶対に避けねばならない。
姉さんは何があっても俺が守らなきゃ!
…そうは思うものの、現実は逆で姉に守られるしかないなさけない弟なのだ。
最悪、自分のことは見捨ててくれて構わないから、女性である姉だけでも助けてくれということで交渉できないだろうか…と、最終的にそのあたりに考えが落ち着いて、義勇は真菰さんから聞いたスケジュール通り、従兄弟、錆兎さんが大学から帰るであろう時間に待ち伏せることにした。
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