こうして八方塞がりに思えた現状を打開するきっかけをくれたのは、姉の大学の友人だった。
姉と同じようにいかにもお姉さんといった感じの優しくきれいなその人は、義勇の高校のクラスメートの胡蝶しのぶの姉だったらしい。
彼女も幼少時に父親が急死して、その後、母親が必死で父親と築いた諸々と子どもたちを守るのに奮闘したのだという。
経験者だけあって、現状をよくわかってくれていて、なんとか一緒に打開策を見つけていこうと申し出てくれる。
ただ、カナエさんの時はなんと産屋敷学園の幼稚舎の園長でもある悲鳴嶼先生が遠縁ということで間に入ってくれて解決したらしく、同じ手を使うのは難しいとのこと。
だが、ヒントはそこにあって、ようは女子どもを軽んじる親族でも権威のある男性が入ったら意外に引いてくれるんじゃないだろうか…という結論に至った。
そうなるとまさに間に入る気満々の母方の叔父に頼るのが一番ということになるのだが、彼を頼らないとなると、母方には親族は他になく、父方は皆敵なのでお手上げである。
そんな時にカナエさんが
──あ、でも幼馴染の男性が今起業して社長さんやってるのよ。彼ならどうかしら…
と言い出した。
しかし幼馴染というだけでいきなりそんな重い話に巻き込まれてもらうのは難しい。
そう思ったのだが、その男性と共に男性の祖父の元で実の兄弟のように育った女性がカナエさんの幼馴染兼親友だというので、そちらに口をきいてくれるという。
そうして父方親族対策課にもう一人、カナエさんの幼馴染であるという花衣真菰さんが加わった。
姉もカナエさんもすごく美人なのだが、真菰さんは可愛らしいタイプ。
もう3人の女子大生みな顔が良い。
顔で集めたのか?と疑われそうなレベルで顔が良い。
まあそういう義勇も姉と似ているとは言わないが顔は良いのだが…。
そもそも義勇達の両親が顔が良い。
よく女児は父に、男児は母に似るというが、冨岡家はまさにそれで、姉は父方の、義勇は母方の血を色濃く継いでいるように思う。
だが、姉は父に似ているが、義勇は母にというより母の母、つまり義勇の母方の祖母にそっくりだ。
まあ容姿の話はこの際どうでもいいと言えばどうでもいいのか…
問題は問題解決能力だ。
真菰さんはその可愛い容姿に似合わず実にはっきりと物を申す人だった。
「あのね、錆兎を呼ぶのは良い。
あたしがと言うより、しのぶちゃんあたりが困っていると泣きつけば来ると思うから、申し訳ないけどカナエちゃん、しのぶちゃんの不安を煽るような方向でっ」
と始めるあたりで、容赦ない性格の人だと思う。
敵に回したら怖いが味方としたらなかなかに頼もしい。
真菰さんの言葉に姉達も異論を唱えることなく、頷きながら真剣に聞いている。
しかし任せておけばすべてが進むのかと思えば、そんな都合の良い話はなかったようだ。
「でもね、錆兎は断る気がする。
これがカナエちゃん達のような状況だったらね、全力でなんとかしてくれると思うけど、蔦子ちゃん家って蔦子ちゃんは成人してるし、義勇君ももうすぐ成人の男の子じゃない。
特に錆兎は男子は強くあるべきって思ってるから、義勇君がなんとかすべきって主張すると思う」
「わ、私がお願いするわっ!その人が間に入ってくれれば解決するなら頑張ってお願いするっ!!」
真菰さんの言葉に即反応したのはやはり姉だった。
確かに姉はそれで解決するなら、義勇のためならどんなひどい扱いをされても甘んじて受けると思う。
実際、義勇の分の資産と義勇の身の安全、身分の保証をしてくれるなら、自分だけなら親族の誰かの嫁になって自分の資産を全て渡すことも厭わないということまで言っていたのだ。
でも義勇は絶対に姉にそんなことはさせたくない。
そのくらいなら自分がどれだけ嫌でも母方の叔父を頼った方がましだ。
そんな思いを込めて
──姉さんじゃなくて…俺が頑張るから……
と、なんとか言葉を絞り出すと、真菰さんは大きく頷いて、
──うん、それが良いよね、今回の場合は。
と言った後、
──とりあえず錆兎と顔合わせの機会を設けるから
と、約束してくれた。
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