やるということと出来るということの間には大きな違いがある…
一所懸命にやったからと言って、必要な結果にたどり着くとは限らないのだ。
彼にとってはやったことがイコール出来たことなのだ。
環境的に追い詰められてもいなさそうで、容姿もたいそうよろしくて、そんな風に能力に満ち満ちている相手を見て、義勇は皮肉ではなく素直にうらやましいと思う。
そして追い詰められるような状況にならないか、彼のようにそれを対処出来る能力を持ち合わせるか、どちらかだったら良かったのに…と、なんだか泣きそうな気持ちで小さくため息をついた。
冨岡義勇は高校生だ。
現在3年生で普通なら世にいう受験生というやつだが、幸いにして親がそこそこ裕福で、子どもの人生にすこしばかりの下駄をはかせてやろうと思ってくれたらしい。
幼稚舎から大学まで一貫校の名門校に放り込んでくれたおかげで受験はない。
それでも元々はあまり要領が良いとは言えない子どもだったので、普段から勉強はかかさず、成績もまあ良かった。
家族は両親と姉。
末っ子だったので皆可愛がってくれた。
両親の親族とは双方距離があって、でも家族4人、確かに幸せだったのだ。
しかし突然両親が歩道に突っ込んできたトラックに轢かれて亡くなって、そんな義勇の平和で幸せな人生は一変した。
父はやはり若くして亡くなった祖父の遺産を元に起業して、そこそこ成功して財を築いていたのだが、父の兄弟たちは父が亡くなったのをいいことに、今更その時の遺産分けが公平ではなかったと言い出した。
そしてその結果築いた義勇家族の資産を自分達に返還しろと言う。
強欲な彼らは大学生と高校生の子どもなら脅せば言うことを聞くと思っているのだ。
一方で母方は祖父母は亡くなっていて叔父が一人いる。
こちらは本人もそこそこ資産家で金銭的に困ってもいないため、義勇達の財産に興味はなさそうだ。
むしろ父方の親族の強欲さを心配して、自分がまだ未成年の義勇の後見人になると言う。
姉の蔦子はこの叔父を頼りたいようだった。
…が、義勇はこの叔父を頼りたくなかった。
姉に彼には頼りたくないのだと言うと、姉はちょっと不思議そうに理由を聞いてきたが、義勇は首を横に振る。
そうして言いたくない…と意志表示をすると、姉は少し困ったような顔をして、それでも自分が姉で未成年である弟の唯一の保護者で拠り所だという自覚に満ち溢れているのだろう。
彼女は
──そうね。じゃあ姉さんがなんとかするわ。義勇は何も心配しないで。
と優しく笑った。
叔父に頼れば楽になる。
逆に成人していると言っても女子大生の姉と成人すらしていない自分の二人だと、父方の親族を追い払うのに一苦労というか…追い払えないかもしれない。
親族の中にはなんなら資産の半分を相続している姉を自身の息子の嫁にとしつこい者も少なくはないし、姉の大学にそういう親の意向と美人で資産家の従姉妹を手にできればという下心もあって従兄弟やはとこなど、親族の若い男達が押しかけてきているらしい。
叔父が関わらないとなると圧倒的に姉に負担が大きくて、なんなら身の危険も感じられるほどだ。
義勇だってわかっている。
自分は弟であっても男なのだから、若い女性である姉は何をおいても守らなければならない。
しかしまだ未成年の高校生の自分が盾になろうにも、盾どころか風よけ程度にもなりはしない。
それどころか姉はいつだって自分の身を呈して義勇を守ってくれようとしてしまうのである。
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