人生何がどう転ぶかわからないものである。
例えば今こうして飲み物を勧めたのは、あまりの会話のなりたたなさに、一息入れるだけのはずだった。
色々話して説得をしなければという考えを捨ててしまえば、なんだか逃げのような気がして自分的にすっきりはしないが、気は楽になった。
考えてみれば、こうして話につきあっている事自体、そんな義理はないと言えばないのである。
大丈夫、無責任でもなければ、途中で投げ出しているわけでもない。
心の中でそんな言い訳をしつつ、錆兎もペットボトルを開けて中の褐色の液体を半分ほど一気に飲み干した。
しのぶの時と同様にパラソルの下ではあるがやはり暑いので、汗をかいていたせいだろう。
冷たい液体がのどを通っていくのが心地いい。
そんなことを考えつつふと隣をうかがうと、冨岡弟はまるで子どもか小動物のように両手でペットボトルを持ってちびちびと飲んでいる。
それを見て錆兎はため息をついて、自身のリュックのサイドポケットに突っ込んでいたペットボトルクーラーを差し出した。
すると少年は大きな目をまんまるくして、ペットボトルクーラーと錆兎の間で何度も視線をさまよわせる。
「常温が好きとかいうんじゃなければ使え。
暑いからな。
ちびちび飲んでたらすぐぬるくなる。
別に高い物でもないし家にも予備があるから、なんなら持って帰っても大丈夫だぞ」
そういうと、固まっている少年の手からペットボトルを取り上げていったん蓋をしめると、ペットボトルクーラーに入れて蓋をまた開けて渡してやる。
その様子をやっぱり固まったまま眺めていたお坊ちゃんは、戻ってきたミルクティをまた両手でもって一口。
その後、目をキラキラさせて、ほわわわぁ~という効果音が聞こえてきそうな嬉しそうな顔で、
──…冷たいっ
と言った。
いやいや、別にペットボトルクーラーは温度を維持するものであって、能動的に冷やしたり温めたりする道具じゃない。
そう言いたかったが、錆兎はその言葉を飲み込んだ。
子どもの無邪気な夢を壊すような…どこか大人げないことな気がしたからである。
しのぶと同い年と言えば錆兎よりは2、3歳ほど年下なだけなのだが、末っ子というものはそういうものなのだろうか…しのぶも錆兎の前ではそういうところがあるのだが、どこか年より幼く感じる。
いや、この少年の方がしのぶよりさらに子どもに思える気がした。
そう思ってしまうとだんだん突き放すことができなくなってくる。
錆兎的には高3の男というのは十分独り立ちできないといけない人間のはずなのだが、そうは思えなくなってきてしまうのである。
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