それからも実弥は彼にしてはずいぶんと我慢をした。
まず即確認したいところを飲食物の準備ができるまで我慢した。
普段なら強いんだから乾杯の1杯くらい良いだろう。真面目ぶってんじゃねえと絡むところだが、それも我慢。
それから乾杯が終わって、実弥がそうしてやりたいのに錆兎が甲斐甲斐しく義勇の世話をするのも、義勇がそれを大人しく…というか、嬉しそうに受け入れているのも苛々したが、我慢した。
ここで癇癪をおこしたら全ての我慢が無駄になる。
そうして我慢に我慢を重ねて、しかし錆兎の側からなかなか出ないその話にとうとう実弥の方から
──鱗滝ィ、本題なんだがァ……
と切り出せば、別に焦らしているわけでも無視したいわけでもなかったのだろう。
錆兎はようやく
──ああ、大丈夫。ちゃんと本題は覚えているぞ。
と、こちらに視線を向けて話す準備に入ったようだ。
いよいよだ。
──結論から言う。告白はした。付き合うことに対してのOKももらった。
本来後ろめたいことのはずなのに錆兎はずいぶん堂々とそう宣言をする。
そうしろと言ったのは実弥本人なのに、実弥自身がそんなに堂々と言っていいのかと心配になるほどだ。
まあ…最後の一言は要らないんだが…と一瞬思ったが、考えてみれば、好きだと言えば当然そのあとに続く言葉はつきあってくれだろう。
それに単に好きだと言われただけであ、そうなのか…では、錆兎がそういうことをいうやつというだけで、義勇が傷つくようなところまでいかないかもしれない。
その気になってつきあうつもりで実は…ではないと、実弥が慰めるなんてシチュエーションまでは行かない可能性が多々あるのだ。
そういうところまで見越してのこの行動と発言なのだとすると、錆兎はなかなか頭の良いやつなのだろう。
──わかったっ!じゃ、あとの事は俺の方でするからなァ…
と、上機嫌で立ち上がって錆兎と反対側の義勇の隣に移動する実弥だが、義勇は相変わらず無表情でそっと反対側の錆兎の隣に移動する。
──冨岡、てめえ、なんで逃げんだァ!!
と思わず声を荒げると、それにも義勇は無表情に
──楽しい飲み会なのに怒鳴られるのはとにかくとして殴られるのは嫌だ。
と、さも当たり前のことのように答えた。
──殴らねえよっ!面倒見てやるっつってんだろうがァ!!
──要らない。別に面倒を見てもらう必要などないし、万が一必要なら錆兎が見てくれる。
──はあぁぁ??
そこでいつもの習慣で『てめえは馬鹿かァ?!』と怒鳴りつけそうになって、そこで実弥はふと気づく。
そうか…告白自体が罰ゲームだと知らなくて、普通に付き合っていると思えば義勇の反応は当たり前だ。
まずそこをはっきりさせないと話は始まらなかった。
それに気づいた実弥は義勇に視線を向けて言い放つ。
──あのなァ、鱗滝の告白っつ~のは呑みの席でのお遊びの勝負の罰ゲームだったんだよ。
…と。
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