──そろそろ着く。目の前のコインパーキング止めるから料理運ぶの手伝ってくれ。
上機嫌で飲み食いを始めている実弥をもう他人事のように眺めながらあらかじめ出しておいた割れても構わない食器をテーブルに出していると、スマホが振動して錆兎から連絡が入った。
ただ、ずっとこの不安な状況が続くよりはマシなんじゃないかと、そこは思って、宇髄は実弥を放置で足早にマンションのエントランスに降りて行った。
マンション正面のオートロックのガラスの扉の向こうにはすでに大荷物を抱えた錆兎とおそらく軽いのであろう紙袋を持った義勇。
宇髄の部屋のインターホンを鳴らそうと手を伸ばしかける義勇を制した錆兎は、ドアの内側の宇髄に手を振った。
「ずいぶんと大荷物だな」
と、扉を開けて義勇の方の紙袋を持つと、やはり軽い。
まあ紙袋な時点で重ければ破けるし、お察しと言ったところだろう。
錆兎が持っているのは大きなクーラーボックスだったのだが、ガタイが良いせいか元々体育会系な雰囲気なせいか、重いはずのそれが軽く見える。
紙袋を宇髄に取られて義勇は手持無沙汰になったのか、無謀にも錆兎のそれに手を伸ばそうとするので、錆兎は
「あ~、これは良いから、義勇は先に行ってエレベータのボタンを頼む」
と、”負担にならないお手伝い”に誘導してやるところが上手いなと宇髄は思った。
これが実弥あたりなら
──馬鹿かァ?!てめえに持てるわけねえだろうがァ!
などと言って泣かせているところだ。
そうして義勇が重大な使命を請け負ったと思っている子どものような目で
──わかったっ!!
と頷いてやや小走りにエレベータに向かう後ろ姿に目をやりながら、錆兎は
──汁がこぼれる系は話が終わった後。まず投げ散らかされてもいいように揚げ物中心な?
と宇髄が持つ紙袋の中のタッパーにちらりと視線を向けて笑った。
付き合いが長いせいか、最初は荒れるだろうから割れない食器を用意した宇髄と同じことを思ったらしい。
ああ、こういう察しの良いところが楽だし好きだなぁと宇髄も笑う。
「とりあえず…今回の諸々でお前も不死川との付き合い方を変えようと思っているという認識で進めて大丈夫か?」
と、もう全てを見抜いているムーブも相手が完全に味方ならば頼もしい事この上ない。
──ちょっとなぁ…さすがに疲れたんだわ。
と宇髄にしては珍しく弱音を吐けば、
──しばらく村田を貸してやろうか。俺的に世界で一番気を使わせないでくれると認識してる男だ。
などと返ってきて、なんだか何がおかしいのか自分でもわからないが小さく吹き出してしまった。
そんなやりとりを交わしていると、義勇が前でどや顔で立つエレベータへ。
3人で乗り込んでチン!と言う音と共にドアが閉まると、錆兎が一応確認な…と、口を開いた。
「まず俺が報告するから。
で、それに対する不死川の反応に応対するのも俺。
宇髄も義勇も言いたいことは言っていいが、別に介入したい言いたいことがなければ黙って飯を食っててくれていいからな」
と、その錆兎の言葉に義勇だけではなく宇髄もほっとして頷く。
正直19年ほどの間ずっと対応できるのが自分だけしかいない中で、義勇が再起不能にならないようにと暴走気質の実弥を抑え続けるのは大変だったし、正直、何故自分が?と思い始めてしまえば一気に疲れがあふれてきてしまったのだ。
余裕があって背負ってくれる相手がいるなら任せてしまいたい。
そうして心の奥底からホッとしつつ、宇髄はエレベータを降りると今出てきたばかりの自宅マンションのドアをあけたのだった。
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