胃が痛い。
会社に行きたくない…。
これまでは学校も仕事も…それだけじゃない、自分で行くと決めたものに関して、面倒だなと思うことはあっても行きたくないと悩んだことはない。
だが今思い知る。
これまでそう思わなかったのは、メンタルが強いというより、そう思わないですむように上手に立ち回ってきたからだ。
そしてとうとう嫌なことを上手に回避するということに失敗した今、本気で明日行くべき場所に行きたくないと思う人間の気持ちがよくわかってしまっている。
宇髄天元、人生初と言えるほどのピンチである。
ことのおこりは木曜の夜に来た1本の電話だった。
小学生時代からの幼馴染、不死川実弥からの電話。
まあ着信音で予測はついた。
宇髄が親しく付き合っている3人のうち、いきなり電話をしてくるのは実弥だけだ。
一番の親友である錆兎は大雑把に見えて礼儀を重んじる性格で、よほどの緊急の場合以外は電話をする前には必ずと言っていいほど、今電話をしても大丈夫か?と確認のLINEを送ってくる。
そんな錆兎がいきなり電話をしてくる時は本当に緊急を要する重大な案件なので、彼の電話だけは他と区別して着信音を別にしてあった。
そしてもう一人、実弥と同じく小学校からの幼馴染の義勇はそもそもが電話をかけてこない。
しゃべるのが苦手で、どうしても連絡を取る時はたいてい文字で用件を伝えられるLINEである。
ということで、気軽にプライベートの電話にかけてくるのは実弥だけ。
どうせたいした用事ではないんだろうと思いつつ、宇髄の方も気軽に出た。
そして後悔する。
実弥の用件は彼が出会った時に一目惚れしてずっと片思いをしている義勇との仲を取り持てというもの。
それ自体はもう本当に変わりばえのしないいつもの依頼だ。
宇髄に協力しろという前に、実弥が照れ隠しに暴言暴力を振るうのをやめるのが先だと宇髄はその都度苦言を呈しているが、きちんと聞いて受け入れて実行したというためしがない。
自分の側はあくまで変わらず、好かれるどころか嫌われるような態度をとりまくっていて、相手から好きになってもらえるなんて都合のいい方法はないと、もう何年も言い続けていて、今回も定期的に思い出したようにしてくるその手の依頼かと思うと、さすがに長い付き合いの幼馴染と言えど、少々うんざりはした。
それでももういい加減いつもの事過ぎて慣れてきたのもあって惰性で聞いていたのだが、今回はいつもとは少々違う。
……悪い方に……
知人は多くても…自称友人はそれよりも多くても、実は自身が認めている友人は数少ないどころかたった3人しか居ない宇髄が、それゆえに目をつむって耐え続けてきた何かが壊れてしまうくらいには……そう、絶望的に……、
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