ペナルティらぶVer.SBG_26_罰ゲームのあとに

実際に成果を出している人間の言う事だ。
自分に完全に当てはまるという保証はないが、ある程度は効果のあるものなのだろう。

錆兎の家に行ったあの日からずっと、実弥は自分を律しながら暮らしていた。

義勇についてはもちろんのこと、他人の良いところを積極的に指摘して、不満に思うところは怒鳴りたいところをグッと我慢して言葉を選んで改善を依頼する。

それは短気な実弥には簡単なことではない。
しかもそれに対する反応ときたら、これまでの態度とは一変した実弥のそんな様子に始めは懐疑的で、気味悪がられてたと思う。
それが感じられるたびに暴言を吐いて殴りたくなるのをグッと我慢して、とにかく耐えた。
正直自分の方が罰ゲームをやっている気分だった。

が、そんな態度も数か月続けると、そこまで親しくしていたわけでもない人間にとっての実弥の人物評と言うのは所詮薄いものだったらしく、だんだんと今の態度が当たり前の人物として評価されるようになってくる。

そうすると不思議なもので、以前よりも苛立つ態度をとってくる人間が減って、今のような態度を取るのも苦痛ではなくなってきた。

なんなら、──不死川さんて…顔が怖いから勝手に誤解してたけど、実は面倒見のいい親切な人ですよね──なんて言って慕ってくる後輩とかも出てきて、ずいぶんと会社の人間関係が自分が望んでいたような心地の良いものになってきた。

信頼され、頼りにされるのは心地いい。
頼ってきてもらえれば、実弥は筋力もあるしシステムの仕事に関してはわりあいと能力が高い方なので、助けてやれることも多い。
そうして助けてやれば、さらに周りは慕ってきてくれるという良い循環が出来てきた。

そんなこんなで周りの評価的は驚くほどに上昇して、これで順風満帆課と思えばそうもいかないのが現実というものである。


元々は義勇の気をひくために始まった罰ゲームからこうなったわけなので、これで自分に対する義勇の評価があがればめでたしめでたしなのだが、なんと下がるどころか最近は敵対心すら向けられていた。

あの、後ろ向きを絵に描いたような義勇に、である。

おそらく義勇が避ける人間は多くいたとしても、会えば毛を逆立てて威嚇する子猫のような反応を取られるのは世の中に人間は多しといえど、実弥だけなのではないだろうか…。



──いくら不死川が周りを巻き込んだって錆兎は俺のだからっ!

今日も朝に見かけて挨拶をしようと足を向けたら、フ~フ~、と威嚇する義勇に苦笑する錆兎。

──義勇、別に実弥はそういう意味で俺を好いているわけじゃない。そう眉を吊り上げるな。可愛いけど。
と言う錆兎の言葉通り、怒っても義勇は怖くないどころか可愛らしいだけだ。

少し前ならこれにまた傷ついて実弥の側も暴言を吐き散らかしていたところだが、最近は、ああ、可愛いなァと思える。
絶対に自分のものにしたいという欲を捨て、錆兎の言うように推し活の対象として切り替えれば、相手のどんな行動もどんな対応も可愛い。

あれからも錆兎はなんのかんので自分にとって大切な親友なのであろう宇髄の友人ということで、実弥のことを折々気にかけて声をかけたり遊びに誘ったりしてくれている。

そしてそれが義勇にとっては実弥がまた自分に対して何か嫌がらせをしてきているのかもしれないと思えるようだ。

まあ仕方ない。
そう思われても何も言えないくらい長い間、義勇が嫌がることをし続けてきたのだ。
自分がした過ちに対する罰は甘んじて受けるしかない。

心配する錆兎にそう言ったなら、
──最近ずいぶんと人間ができてきたな。それでこそ俺の推し活仲間だっ!
となんだか嬉しそうに言われた。

彼は同担歓迎派らしい。


万が一そのうち自分に義勇の気持ちが向いてしまったら?と聞いてみたのだが、それには本当にきっぱりと
──ないなっ!
と断言された。

だがそれは実弥がダメというわけではなく、自分は実弥よりも前から全力で義勇の気持ちに寄り添っているからで、これからも寄り添い続ける以上、実弥がその差を埋めるのはほぼ無理だろうという事らしい。

──まあ万が一そんなことがあっても、俺は全力で追いつき追い越すつもりではあるけどなっ!
とまるで子どものような邪気のない明るさで言われてしまうと、毒気が抜けてしまうというか、敵対心やら嫉妬心やらも湧いてこない。

というか、最近、義勇と居る時の錆兎や、なんならその周りの村田や煉獄も一緒にわちゃわちゃやってるのも可愛いよなァなどと思い始めて、それを宇髄に言ったなら、宇髄に言われた。

「不死川、良いことを教えてやるよ。それはな、箱推しっつ~んだぜ?」

ということで、義勇にはいい加減警戒心を解いて欲しい。
が、その理由は前とは変わっていて、義勇とどうこうなりたいというより、その楽しそうな中に自分も入りたい、そんな願望が湧いてきたからである。








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