ペナルティらぶVer.SBG_25_推し活のススメ

こうしてお土産は帰りまでいったん冷蔵庫や冷暗所行きで、3人は呑みに戻る。

──ということで不死川は土産もあるし今日は遅くなっても帰宅ということで、宇髄は?
と、明日も仕事だというのにぐいぐいと酒を飲みながら錆兎が言う。

まあ…全く顔色も変わってなければ呂律が回らなくなるとかいうこともないので強いのだろう。
実弥も弱くはないが明日を考えれば控えめにと飲み物は冷茶に移行して、それでもせっかくなので料理はつまんだ。

聞かれて宇髄は通常よりは少しばかり血色の良くなった顔を錆兎に向けて少し考えこみ、
──あ~、明日に泊まるしな、今日は不死川と一緒に帰っておくわ。
と答える。

錆兎はそれに頷くと、ここでいきなり
──さきほどのことだが……
と、話を戻してきた。

──さきほどの…ことォ?
いぶかしげに言葉を繰り返す実弥に錆兎は
──義勇のことで怒られに来たというやつな
と、頷く。

うわぁ…そこに話が戻んのかよ…と、元々はその覚悟があってきたはずが、ほんの2時間弱くらいですっかり気が緩んでしまっていた実弥は一気にひるんでしまった。

その様子に実弥の心情に気づいたのだろう。
錆兎は苦笑して
──いや、そうじゃなくてな。別に怒っているとかじゃなくて…。
と首を横に振る。

──ただの提案なんだが…
──おう?
──お前にとっても義勇にとっても俺にとっても良い、いわゆるwinwinというやつなんだが…

その笑みに他意はなさそうなので、実弥もほっとして肩の力を抜いた。

──俺もそれを心がけてはいるが、義勇には好意を向けて優しく接してやってくれ。
といきなり始まる話。

「たいていの人間はキツイ言葉を投げかけてくる相手は避けたいと思うものだし、好意的に接してくる相手と一緒に居たいと思うものだ。
だから不死川が義勇に好かれたいと思うなら、キツイ言葉を避けて優しい言葉をかければいい。
まあ…これは義勇相手の時に限ったことではないがな。
特別に何か理由がない場合は、悪意よりも善意を表に出し、キツイ言葉よりも優しい言葉を口に乗せた方が人間関係が円滑に回る。
相手の足りない部分はフォローして、優れた部分はおおいに褒めて見習えば、不死川の評価はだいぶ上がると思うぞ?
元々は能力的にも低くはないと宇髄にも聞いているし、弟妹を支えてまず弟妹の事を考えて行動しているくらいには思いやりがある人間のようだし、言葉選びで避けられるのはもったいない」

うああぁあ~~!!
と、実弥は羞恥に転げまわりそうになる。

別に嫌とかではないのだが、なにぶん普段けなされてばかりで褒められ慣れていないので、ひどく気恥ずかしい。

だが、おそらくもう今日だけで何回も思った通り、金持ち喧嘩せずで基本的には…というか、義勇を始めとする自分が大切に想っている人間に危害が加えられない限りは善意の人間なのであろう錆兎の言葉に嘘はないのだろうし、そこは素直に受け取って、

「それが出来たらこうなってねえんだよ。
やる気がないわけじゃあねえんだが、なんつ~か…気恥ずかしいっつ~か…」
と、答えて頭をかく。

それに対する錆兎の答えはなかなかぶっ飛んでいた。

──少なくとも義勇に関しては関係が改善するまでは推し活だと思えばいいんじゃないか?
──はあぁ?推し活ゥ??

ぽか~んとする実弥に錆兎は頷く。

──不死川は好きなアイドルとか芸能人はいるか?

いきなり聞かれて実弥の脳裏には学園もののドラマで教師をやっている美人女優の顔が浮かぶ。

──学校のススメの…胡蝶カナエ…とか?
──なるほど!で?どういうところが良いと思う?
──なんつ~か…美人なのにツンケンしてなくて優しそうなとこがいい。
──あ~、そうだな。わかる気がする。単に優しいんじゃなくて包容力というか…お姉さんキャラ?
──そうそう!そうなんだよっ!こう…良い姉ちゃんで良い母親になりそうな感じが良いんだよなァ。

思わず身を乗り出す実弥に錆兎はニコニコと
──な?できるだろ?
と言った。

──え??

再度ぽか~んとする実弥の空のグラスに冷茶を注ぎながら錆兎は続ける。

「好きな芸能人相手なら別に普通に良いところをあげられるだろう?
ようは…心の距離感の問題だと思う。
自分の生活に入ってくることのない相手なら、ひとたび好意を感じたらまず相手の良いところが目に入ってくるし、それを口に出すのもためらいがない。
好ましくないところもあるかもしれないが、それには目をつむれるし敢えて声高に叫ばないだろう?」

「う……そ、それはそうだけどよォ……」

言われてみれば!と思うわけなのだが、あまり好意を口にすればチャラついたやつに見えないだろうか…と、言い訳のようにそんな考えが頭をよぎった。
が、錆兎はなんとそれを見越しているようににこっと

「万人に言わなければ軽々しい人間には思われない。
日常生活で賞罰をはっきりさせる方が信頼が得られるのと一緒で、本当に感じた好意は表に出す方が親しみを持たれるぞ」
と言う。

確かに目の前の人物を見ているとそんな感じもする。
でも出来るだろうか…いまさら?自分が?
と、それでも迷う実弥に錆兎はきっぱり

──こういうのはな、照れたら負けだ。男なら良いと思うことは腹をくくってやってみろ。
と、圧のある笑顔をむけて言った。








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