ペナルティらぶVer.SBG_24_胃袋からつかまれる

なんと…錆兎の目的は撃退したやつらの身元をさぐることだったということか…。
てっきり糾弾されると思って戦々恐々としてここまで来た実弥は一気に力が抜けてしまった。

それを見て察して
──だから言っただろうがっ。
と笑う宇随に、錆兎は不思議そうに視線を向けた。

そこで宇髄は実弥がてっきり義勇のことで追加で激怒されるのだと思っていたのだと余計なことを暴露する。

藪蛇になったらどうするんだっ!!と怒鳴りつけたいところだが、ここで錆兎が万が一怒りだしたとしたら間に入ってもらえるのは宇髄だけなので、言葉を飲み込む実弥に、錆兎は、

──あ~、義勇のことかっ!
と言いつつ、自分の空のグラスに注ぐついでに同じく空いている実弥のグラスにも冷酒を注いでくれた。

言葉も態度も怒っているようには見えない。
だがこいつは頭ごなしに不機嫌さをまき散らさない時の方が怖い…と実弥が警戒しつつ酒のことについては礼を言うと、錆兎は──どういたしまして──と応えたあとに、またくいっと酒をあけると、実弥につまみも勧めてきた。

宇髄は隣で勧められるまでもなく料理をガンガン口に運んで舌鼓を打っている。
それに倣って実弥もおそるおそる綺麗に飾り切った野菜の炊き合わせを口に放り込んだ。

──うっま……

たかが煮物と言うなかれ。
出汁がしっかりきいていて、味がわからなくなるほどではなく程よく冷えている。
口にするともう高級旅館の何かかと思うような香り高い味わいが微塵のひっかかりもなく喉を通り過ぎていく。

まるで冷酒のために用意されたような──実際にそうなのだろうが──その炊き合わせに思わず感嘆の声が出た。

──なあ、これはなんだァ?
と、炊き合わせの中にある緑と黄色のグラデーションも美しい紅葉のような形の何かを箸でつまむと、

「ああ、青紅葉の生麩だな。
食材としては餅粉を使った生麩という物で、煮物や吸い物によく使う。
見た目に関しては新緑を思わせる春から夏にかけて人気のものだ」
と、説明がされたので、口に入れてみるともちもちとした触感で美味い。

──これ…妹達が喜びそうだなァ。俺だけで食うのはもったいねぇ
と、もう脊髄反射で美味いものは弟妹にと言う思考がついつい口に出ると、なんと

「じゃあ持って帰るか?
何種類も未開封で冷凍保存してあるし、料理だけじゃなくて菓子としても食える。
食い方はあとでメッセででも送るから」
などと返ってきた。

──え?え?そ、それはさすがに…
──面倒じゃなければだが…
──面倒とかじゃあねえけどよォ…

さすがにそこまでは悪いと思うが、宇髄は機嫌よく
──もらってけ、もらってけっ!みんな色々持って帰ってるからっ
と笑って言う。

良いんだろうか…と思いつつも、喜ぶであろう妹たちの笑顔がちらちらと脳裏をよぎると、強固に断るという選択肢が取れない。

そうして戸惑っているうち、
「妹、何人かいるなら、菓子ももっていかないか?
爺さんは当分不在なんだが、付け届けやら中元やらでめちゃくちゃ送られて来てな。
俺だけじゃ当然食いきれないから、甘いものが好きな奴や実家暮らしで食う家族がいるやつには持って帰ってもらってるんだが…。
ちょっと待っててくれっ!」
と止める間もなく立ち上がりかける錆兎。

しかし部屋を出ようとして一瞬立ち止まって振り返ったので、何事かと思ったら
──あ、家族に食物アレルギーはあるか?
で、そこかよォとなんだか脱力してしまった。

その後…みたこともないような高級菓子の数々を積まれて、不覚にも弟妹達の笑顔がグルグルして拒絶できなかった。

「これ、ダロワイヨのマカロン。
女子に人気らしいし、この手のマカロンにしては日持ちもする。
1週間くらいは持つからどうだ?
あとは…洋菓子だとチョコレートもたくさんあるぞ。
食えるなら箱のもたくさんあるし、気軽にパクパク食うならリンドールとか丸くて可愛らしくていいぞ」

そう言われてボン!と出されたパッケージにはまあるい色とりどりの包みのチョコレートが詰まっている。
確かにこういう大箱とかなら気軽でいいなと思った実弥だが、宇髄がそこでにやにやと

──確かにこいつん家にあるのにしては安いが、この50個入りな、9980円。1個約200円するわけなんだが。
と、耳打ちしてきた。

──に、200円……

これ一つで実弥たち兄弟がいつも食っている某店のピーナツチョコが1袋買えるのか…1個200円をパクパク…?と思うと恐ろしいが、

──もらい物で食いきれないから兄弟多いなら食えるだろうし、良ければ持って行ってくれ。
との錆兎の言葉に恐縮しながらもありがたくいただいていくことにする。

その後チョコだけでもGODIVAやピエールマルコリーニなどという高級らしいチョコのデカい箱が積まれ、その他にもクッキーや冷凍のチーズケーキなど、一生分くらいの高級菓子を手土産に用意された。

──なんか…雀のお宿にでも来たみてえだよなァ…
と、帰りにそれに入れて帰るようにといったん置かれた保冷Boxの大きさに思わず漏れる言葉に、宇髄が爆笑。

──来た時期が良かったよな。ちょうど中元の時期だしなっ。
と笑いながら言われて、なるほど、と思った。







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