ペナルティらぶVer.SBG_:19_追いかける男

──あの日、冨岡を追わなかった時点で全部終わってんだよ、諦めろ。

頭に血が上っていて何も考えずに走っていたはずなのに、足は自然と駅に向くのが自分でも不思議である。
とにもかくにも電車に乗ろうと改札をくぐりかけたその瞬間、実弥の腕を掴んだのは宇髄だった。

見捨てる、面倒を見切れないなどさんざん言ったにもかかわらず、それでもこうして追ってくるのが、チャラそうに見えて実は情に厚い宇髄の宇髄たる所以だ。

繁華街と違って住宅地に続く駅の駅前だけあって、一晩中やっている飲み屋もほとんどなく、かろうじて空いているのはそろそろ店じまいをするお洒落なフレンチだったりイタリアンだったりするので、宇髄はそれはどうやら24時間営業をしているらしいマックに実弥を促す。

そうして黙って実弥に聞きもせずにコーヒーを二つ買って窓際のカウンター席へ。

とりあえず二人で座ったところで、宇髄が口にしたのは、長年の想いに終了を促す言葉だった。


ずいぶんと昔のように思えるが、まだ1週間どころか3日間しか経っていないあの日。
そういえば宇髄は追わないと決めた実弥に、まるでそれで良くない結果が予測できているかのように、その選択肢を取るのは自己責任だと言っていた。

──宇髄…お前、こうなるのわかってたのかよォ…

別に今更それを責めても仕方のないことなのだが、恨み言や愚痴の一つも言いたくてそう確認すると、宇髄は苦笑。

──わかってたらさすがに言ってるぜ。ただなぁ…
──ただ?
──なぁんか嫌な予感がしたんだよなぁ…
──鱗滝にとられるって?

そこは可能性があるなら教えておいてほしかった…と、そう思って言うと、宇髄はそれにも首を横に振る。

──いや、錆兎は一度冨岡を諦めてたから。
──鱗滝がっ?いつっ?!
──いつだったかな。錆兎が冨岡ともうちっと仲良くなりてえって言ったことがあって…俺が止めた。
──止めた?
──そそ。それが特別って意味じゃねえにしても、やつが出てくると勝つのかなり難しいからな。
──あ~、それは…。反則だよなっ!神は二物を与えずって大嘘かよってレベルで。

そう言って口をとがらせる実弥に宇随は小さく笑って言う。

「いいやつだぜ?
あいつは俺と自分だと自分の感情より俺の都合を優先してくれる。
その結果が冨岡と一定の距離を置くって対応だった。
だが、今回は冨岡の方から錆兎の方へ行っちまったからなぁ…。
自分と友人なら友人が上だが、友人と想い人だと想い人が上ってことだ」

「いいやつっつ~なら、そこは恋人よりダチだろうがっ」

「いや、ダチは理性と感情っぽいぞ、あいつは。
恋人に対する想いは愛情を感じた時点で無償の愛だが、ダチは自分が尊敬できる何かがないと重さが変化するってはっきり言われたしな。
ま、その代わり、可能な限り悪い部分より良い部分を見つけようとしてくれるから」

「ふ~ん…」

「あれに友辞めされるのはキツイと思う。
ま、よほどのことしないとねえけどな」

「…俺とダチ続けるとか?」

「いや、それはねえわ。
あいつは罪を憎んで人を憎まず主義だからな。
別にお前のことも特に嫌ってはねえと思うぜ?
ただ…お前関係に限らず、俺が冨岡にとって害を及ぼす行為をすればアウトだな。
お前がそういう行動を取っても、俺がそれに協力しなきゃギリセーフだと思うし、お前が何か害がある行動取ったとしてもその対象が冨岡じゃなく自分自身なら気にしねえ人間だ、やつは。
俺もだけど…昔からなんでもできる人間っつ~のは、ひがまれるし妬まれるし?
本分と違うところで追い落としかけてくる奴なんて多すぎて、いちいち気にしてられねえからな。
自分に対する悪意には鈍感になる」

なるほど。
自分のようにできなくて見下されるのはムカつくが、できるやつはできるやつで大変なんだな…と、それを聞いた実弥は素直に思った。

長い付き合いだったこともあって、そのあたりについては実弥が納得したことがわかったのだろう。
宇髄はさらに話を進めてきた。







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