ペナルティらぶVer.SBG_14_不死川実弥の苛立ち

月曜の就業後…本当なら義勇と二人で歩いていたかもしれない自宅への道のりを、実弥は一人でイラつきながら歩いていた。

(だからあいつはバカなんだァ!!)

本当にすぐ目の前に告白できる相手が居るのに、なぜわざわざ電車を使ってまで会社に戻るのかがわからない。
そんな手間をかけないで目の前に居る自分に告白をすれば、秒で解決だったのに…

そしてそれを本気にする鱗滝もおかしい!と思う。
罰ゲームだっていうことがわかっているなら、とりあえず協力だけしてやるということで顔を出すだけは出して、終わりにすればいいじゃないかっ。

何が指輪だァっ!
10万くらいの指輪で冨岡と付き合えるなら、俺だって買ってやるのにっ!!

嬉しそうに指輪をした手をかざす義勇を見て、自分が指輪を買ってやっていれば自分とお揃いの指輪をはめてこんな風に笑っていたのか…と、その考えに及ばなかった過去の自分にかなりイラついた。

とりあえず『嘘から出たまこと作戦』は失敗に終わった以上、早急に次に進むためにはいったん全てをリセットしなければならない。

それにはこのゲームは終わりだし、錆兎がこの罰ゲームに付き合う必要はなくなったのだと宣言しなくてはと思って、実際にそう言ったのだが、別に罰ゲームは切っ掛けに過ぎなくて交際はこのまま続けるつもりだとか言う。

正直、錆兎ははたから見ても人気者だからモテるだろうし、そんな男がわざわざ義勇を恋人にというのがわからない。

だが、よくよく考えてみれば、人が良いのは確かなので、何故?と言われれば、困り果てて頼ってきた義勇の助けを断る理由が思いつかなかったのかもしれない、と、実弥は思った。

なので錆兎が義勇を拒否する理由を作ってやろうと、
「鱗滝、モテるんだしよォ、こんな陰気臭え野郎と付き合うことねえだろォ?
こいつ、暗いだけじゃなくてな?
姉ちゃんに可愛い可愛いされて育った気持ち悪いシスコン野郎だぜぇ?
普通に付き合いてえなんてやついねえから」
と口にする。

すると目の前で義勇が目にジワリと涙を浮かべたが、あとで『それでも俺は気にしねえから』と言ってやろうと思っていた。

が、視線を義勇に向けていた不死川の耳に、ドン!!とやや大きな音が聞こえる。
その音に注意を向けてみると、錆兎がジョッキをテーブルに置いた音だった。

そして彼は笑顔で──それはそれはっ──と、実弥に圧のある笑顔を向けてきた。


「そういうことなら、余計に俺たちは似合いだなっ!」
「はァ?」

「俺はすごくお節介な人間でなっ、色々やってやるのが好きなんだ。
だが、たいていの人間はあまりに世話を焼かれるとうっとおしいと思うだろう?
その点、誰かに大切にされて世話をされ慣れて育った人間なら、俺のお節介もうっとおしがらずに受け入れてくれるからなっ。
そうか、義勇が当たり前に迷惑がらずに受け入れてくれるのは、そういう育ち方をしていたからなんだなっ。
無理をさせているわけではなくて安心したっ。
教えてくれてありがとうな、不死川っ」

そう言って当たり前に義勇の涙があふれかかった目尻に自分のハンカチをあてる錆兎。
義勇の方はそれに──さびとぉ…──と、どこか甘えたような声で言って、キラキラした目で錆兎を見上げた。

そして隣で宇髄は大きな大きなため息をつく。

なんだか何もかもが上手くいかなくて、ここでさらに何か口にしても事態が悪化するだけな気がする。
そうしてそれ以上何も言えなくなった実弥は、金曜の夜の義勇のように、勘定だけテーブルに置くと、何も言わず黙って席を立って帰ってきてしまった。








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