義勇は施設育ちだったので、よく家族で行なうイベントというものにかなりの憧れを持っている。
だから第4回のお題がピクニックになった時点で、かなり張り切っていた。
美味しい美味しくないで言えば、義勇が作った物ならなんでも美味しく頂ける自信があるし、義勇自身があまりうまくできなかったと思うものが出来たとしても、伊達に長く料理番組はしていない。
上手に出来た部分を見つけて褒めてやるくらいのことはお手のものだ。
だが電車で行くピクニックのランチボックスだ。
多少揺れることがあるかもしれないので、型崩れしにくく、しかも作ってから食べるまでに時間を置くことになるので、悪くなりにくいように調理しなければならない。
室温を保ったり保冷剤満載のクーラーボックスに入れて運べる車移動とは違うのだ。
そうなると、それでも完璧に美しく美味しいランチを作るのは、難しいとまでは行かなくてもある程度経験がモノを言う。
だからランチは自分が作るから、当日の服を選んでくれと、義勇には別の役割をお願いした。
──…当日の…服?
ランチボックスを作りたいと言う気分であったであろう義勇は残念そうに、少し肩を落として言うので、錆兎は真剣な表情を作って
「ああ。長時間でかけるし、暑いから寒いからと言って店で過ごすことも出来ない。
当日の気温を調べて、気温にあった…しかし動きやすい適切な服装をしていないと、楽しいピクニックにはならないだろう?
とても重要な役割だ」
と言ってやる。
するとその”楽しいピクニックにするための重要な役割”という言葉が響いたらしい。
義勇はうんうんと大きく頷いて、
「どうせなら新しい服を買おう!
一緒にピクニックに来た家族だとわかるようにお揃いがいいなっ」
と嬉しそうに色々調べるためにネットに張り付いた。
そうして見つけてきたのはペアのトレーナー。
胸元に可愛いキツネ…そして大きい方は左端に小さい方は右端に『コン』の文字。
並ぶとキツネをはさんで『コンコン』鳴き声が表示されるというものだ。
どこでこんなの見つけて来たんだ?と、呆れを通して感心するが、まあ義勇が嬉しそうなので良しとする。
当日、番組内で宇髄あたりが突っ込みを入れてきそうだが…。
まあ宇髄に着ろと言っているわけではないので文句は言わせない。
例えどんなセンスだろうと、義勇がそれを着て楽しいならそれが一番TPOに合った服なのだ。
こうして当日の服が決まったということで、錆兎は長年料理番組に出続けている芸能人のプライドにかけて、義勇の初ピクニックに相応しいランチボックスの中身の検討に入ったのだった。
0 件のコメント :
コメントを投稿