ファン皆_ 第四回_ピクニックに決定

──〇×公園駅まで切符を買って~
と、例によって最寄り駅と同じくらいの規模の駅で車から降ろされてそこから電車と徒歩。

第一回の時には義勇を待たせて切符を買っている間にナンパされていたので、今回は義勇も連れて切符を買う。

天気も晴天。
絶好のピクニック日和である。



『水柱のファンの皆様の仰せのままに』も早4回。
今回はスタッフが決める前にお題のリクエストのハガキを見せてもらえた。

単に結果を伝えられるよりも、実際のハガキを見るのはなかなか楽しい。
というか、なんでもネットですませてしまう今の時代に、わざわざハガキなんてアナログで応募して送ってくる人間が居るんだろうか?と思ったが、案外居る。
というか、かなり居る。
錆兎はそのことにまず驚いた。

ただリクエストを書くだけではなく、そこに自分達の似顔絵が描いてあったり、色々感想を書いてくれていたりと、見ていて読んでいてなかなか楽しい。
もちろん全部に目を通すのは難しいのだが、もったいないので出来る限り目を通す。

最初は二人で笑顔で会話をしながらそれぞれで目を通していたのだが、ふと気づくと義勇が無言になっていた。

「…義勇?」
と気になって視線を向けてみると、義勇の手には一枚のハガキ。

綺麗な風景画と共に、──ピクニックにいい季節ですよね。お二人でピクニック…なんてどうでしょうか?──という言葉。

それに義勇の目が釘付けになっている。


「綺麗なハガキだな。
義勇、ピクニックに行きたいのか?」
と声をかけてみると、義勇はそこで初めて傍に錆兎が居たことに気づいたようにハッとして、少し俯き加減に
──行ったことないから…。行きたいのかわからない
などと言う。

もうそこで錆兎の脳内では行くこと決定だ。

「…次…オフはいつだっけ……」
と手帳を覗き始めたが、このところ色々の撮影で予定が詰まっていて、ゆっくりできるのがだいぶ先になってしまう。

確かにいつに行かなければというのはないのだが、義勇が行きたいと思っている時が行き時だ。
そうなると選択肢は一つしかない。

「マネージャー、次回のお題は『二人でピクニック』に決定な。
これはもう変更不可。絶対の決定事項だ」
と、宣言した。


錆兎は芸歴が長く、人気芸能人歴も長いわけなのだが、普段はスタッフには親切で礼儀正しく、腰も低い。
無理難題もほぼ言わないのだが、その分、決定事項と言ったらもう梃子でも動かぬところがある。

なのでこれはもう何を言っても無駄なのだろう、と、長く錆兎を担当しているマネージャーは理解している。

「了解。まあ…錆兎の決定したお題が無茶な物じゃなくて良かったよ」
と、安堵のため息をつきながら、了承した。









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