結局、宇髄君に呼び出された鱗滝君が戻ってきたのは、10分ほど経ったあとだった。
彼は戻って来て誰一人として欠けてない班員の皆を見て第一声。
「すまない。俺は帰ってくれて大丈夫だと言い忘れてたか?」
と謝ってきたが、そもそもが今回の諸々は彼だって巻き込まれだ。
謝るのは違う…と、義勇は思ったし、他の皆も思っていたと思う。
「いや、お前が謝るところじゃないだろう。
むしろこんな時間に呼び出す宇髄悪い。
というか、どうせ話の途中で逃げ出した不死川の事なんだろうし、本来なら不死川が土下座するところだ」
と、まさに義勇が言いたかったことを言ってくれて、義勇は思わず隣でぱちぱちと拍手をした。
そして甘露寺さんがそんな伊黒君を『さすが伊黒さん…』と、うっとりした目でみつめている。
いつも冷静な村田君は、
「ちなみに錆兎はちゃんと帰って良いって言ってたよ。
俺らが勝手に待ってただけ」
と実に適切な指摘をしながらも、
「まあ…あれはでも不死川も逃げたくはなるよね」
と、不死川の気持ちを慮ってか苦笑した。
「で?結局なんだったんだ?やはり不死川についてか?」
と聞くのは煉獄君。
それに鱗滝君は少し悩んで
「あ~……なんというか…不死川がちょっと今回の事について相談していた相手がいて、不死川本人は報告できそうな精神状態じゃなさそうだから、どう対応すべきかというのを宇髄に相談されてた。
で、宇髄からこのあとにでも報告をするということになった」
と微妙に言いにくそうに言う。
なるほど。
プライバシーにかかわることだから、どこまで言って良いのか悩むところだったのだろう。
なのでそこまで言うと、
「俺はどういう形で相談していたのかを宇髄から聞いて、相手に対してどう対処すべきかだけを相談されただけだから、あとは宇髄に全てお任せだ」
と、もう自分の手は離れたからその件については皆関わらないようにと言わんばかりに断言して、さっさと帰り支度を始める。
「うちの班の女子はそれぞれ付き合っている相手がいるということは不死川にも伝わったし、これでこの件は解決だなっ。
これ以上ちょっかいをかけてくるなら俺も全力で阻止に協力するから言ってくれ」
と、その意思を引き継ぐように煉獄君が幕引きを宣言した。
いつも有言実行。
彼は本当にこれまでも間に入ってくれていたし、不死川相手でも余裕で物理的に阻止できる力もあるので頼もしい。
さすが鱗滝君の親友。キラキラしててカッコいいなぁ…と義勇はぼんやりとそんなことを思った。
まあどちらにしても不死川も逃走するくらいだからさすがにもう懲りただろう。
これで残りの学生生活は平穏にして楽しいものになるに違いない。
義勇はそう思ったし、隣で甘露寺さんも
「これで全部解決ねっ」
とにこやかに言い放った。
そう、少なくとも女子2人はそう思っていたのだが、男子組はそうは思わなかったらしい。
──当分は色々気を付けてないとね…
と言う村田君の言葉に3人揃って小さく頷いたのだった。
そして実際、これで綺麗に解決とはいかなかったのである。
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