寮生は姫君がお好き1013_甘い妄想

香水が確かに効果があるとわかれば後は簡単だった。
出した問題を解く学生達の間を回れば、皆が素直になっていく。

最初に中断してしまったからと改めて自己紹介をすれば、今度は亜子がはじめに想像していたように盛り上がってくれた。

香水の効力は数日くらいは続くらしいので、毎日学校で顔を合わせていれば余裕だろう。

次に授業を行ったB組では初めから香水をつけていたため、風の通りのある窓際以外の学生は好意的で、窓際の学生も窓を閉めて教室を密閉したら態度が良くなった。

まあ2年生に関してはこんな感じで授業のたびに暗示を強めれば良いとして、1年と3年はどうしようか…。

まあ密室でなくとも近くに寄れば影響はでるわけなので、寮長達の傍に寄ればいいか…。
学園内の全員落とす必要まではさすがにない。
そこまでは面倒だし望みもしない。


…ということで決行は昼休み。
すっかり篭絡出来た2年の寮長二人に他の学年の寮長に挨拶をしたいからと案内してもらおう。

あらかじめ金銀竜の寮長達に、──みんなと仲良くなりたいの。お願いっ──と手を合わせれば、二人とも快く了承してくれる。

午前中は授業中だけではなく休み時間も寮長二人のみならず皆がちやほやしてくれて、なかなか楽しく過ごせた。

先生ではなく亜子って呼んでねっと言えば皆そう呼んでくれて、なんだか気分は教師というよりすっかり学園の姫だ。
むしろ学生の頃のようにひがんで悪口を言ってくる女達がいない今の方が快適である。


(あ~気分いいっ!)
とご機嫌な亜子。
この効き具合なら、会って傍に近寄ることさえできれば他の寮長も楽勝だろう。

(穏やかな教祖様な童磨君とかにかしずかれて凛々しい錆兎君に不器用に…でも優しく愛されるなんて素敵っ)

亜子の甘い妄想はどんどん広がっていく。

学生時代はいつも一度は男子の気持ちを掴むのに成功するのだが、それを妬んだ女達が彼らに色々吹き込むので最終的に孤立してしまっていた。

だが、ここは男子校である。
そういう嫌な女が居ないのだから最高だ。

勉強は正直それほど好きではないのだが、今後のバラ色の生活を思えば少しくらい教師らしくは出来る。

自分に恋する目を向ける学生達を前に愛想を振りまきながら、亜子はウキウキしながら昼休みを待った。


まずは1年の二人。
そのうち一人はパートナーとしては本命ではないのだが、心の本命、錆兎だ。

愛する亜子が童磨や天元との方が幸せになれるならと、自分を想って身を引く錆兎。
あの凛々しくも美しい顔に切なげな表情が浮かぶ様子を想像すると、もう転がりまわりたくなる。

カッコいいよねっ!年下とは思えないくらいカッコいいっ!!

4時限目の授業の終了のチャイム…つまり昼休みの始まりのチャイムがまるで祝福の鐘のように聞こえる。

ああっ!待っててねっ、錆兎君っ!!

亜子は授業終了の挨拶もそこそこに、彼の下へ連れて行ってもらうために、銀竜寮の寮長の村田の下へと走り寄った。










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