──将軍発見!
3年生陣地に攻めて来るならこの経路だろうと予測していたあたりで待っていると、少し先に待機させていた自寮である銀虎寮の斥候が戻ってきつつそう報告をする。
自分だけで押し切れる自信があるのだろう。
まあ、その油断が命取りなんだがなぁ…と、そう思いつつ、木々に陣幕を張った仮設の陣で折りたたみの椅子に座って彼を待っていた銀虎の寮長…そしてこの同盟の総司令の宇髄は笑みさえ浮かべてその報告を聞いていた。
だが、その後に続く
──金狼の兵隊を率いてこちらに進軍中です!!
の言葉に顔色を変えた。
今年の1年、狼寮は仲が良い。
そして自分達と違ってその片方、金狼は銀狼に譲る気があるとくれば、自分達よりも協力体制を取る可能性が高いと考えるべきだ。
何故その可能性を考えなかった?!
と、次の瞬間、油断していたのは自分の方か…とほぞを噛む。
さらに源を頭に頂いて他3家を束ねる筆頭家系で、軍略には他より数歩も長じていると言われている渡辺家の跡取りの錆兎だ。
こちらを攪乱する気が満々なのだろう。
──さらに将軍の後ろにはドレス姿の一団が付き従っています!姫君と思われる花嫁1人とメイド役らしき者が5名です!
という報告に、宇髄は頭を悩ませる。
これは…攪乱なのだろうか?
確かに中には姫君を自分と離して陣地に残すことに不安を覚えて一緒に連れ歩く寮長もいた。
自分の武力に絶対的な自信を持っている錆兎なら、そういう策をとっても不思議ではないのだが……
交戦状態に入ってしまえば考える余裕などない。
宇髄は必死に考えを巡らせた。
そして斥候に命じる。
──将軍が率いているのが全員確かに金狼の兵なのか、その中に炭治郎が混じっていないかを確認しろっ!
そう、もし本当に自寮の姫君を連れ歩いているなら、陣地はただの建物であって、守る必要はないはずだ。
ということは、姫君の護衛役の炭治郎を始めとする銀狼寮の寮生も必ず付き従っているはずである。
よしんば攪乱のために金銀の兵を入れ替えたとしても、混戦のさなかに姫君に害が及ばないよう、炭治郎だけは絶対に姫君の護衛としてつけるだろう。
命じられてまた前方へ走る伝令。
それからほんの少しの時間が経った後、
──竈門炭治郎は隊の中にはおりませんっ!!
と、返って来て、宇髄は方針を固めた。
──結局、上級生vs下級生って感じになったかぁ
と言いつつ立ち上がると、
──ここは後輩に最上級生の底力を見せつけてやらねえとなっ!!
と、マントを羽織って全軍を招集した。
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