──結局、上級生vs下級生って感じになったかぁ
当日…銀虎寮の寮長宇髄がやれやれと言った風に肩をすくめつつ、銀虎寮の寮長に代々伝わるマントをパサリと羽織る。
敵の標的にはなりやすいが、味方の道しるべにもなると言う、良い面も悪い面も併せ持つそれ。
そんなものを身につけるということは、代々銀虎の寮長は派手好きな人間が多かったのだろう。
宇髄自身も、策略を練るのも嫌いではないが自分が前に立って目立ちたいタイプだ。
去年は自らの身を標的に他寮の精鋭たちを引き寄せて一気に畳んで、その間に同盟を組んだ金虎が他寮の陣地に残る姫君達を叩くと言う作戦に出て……途中までは好調だったが銀狼寮のあたりで金虎の寮長が今の銀狼の寮長である錆兎に返り討ちにされて終わっている。
いや、正確には銀虎は終わってはいない。
かかってきた寮長達は全て返り討ちにしたので、金虎以外の寮長のブレスレットは手に入れた。
金虎との契約では互いに互いの寮には手を出さず、助けられるものなら助けるというもので、各自自分が手に入れたブレスレットは自寮の戦果というものだったので、宇髄は自寮と金虎寮以外の4寮分のブレスレットを入手。
自寮の姫君のブレスレットは奪取されたが、自分の分も含めて5つのブレスレットを手にして優勝したのである。
2位は金虎寮の童磨を返り討ちにして、彼が持っていた2寮分の姫君のブレスレットと自寮の姫君のブレスレット、そして金虎寮の寮長のブレスレットと計4つのブレスレットを入手した銀狼寮。
3位は自らは宇髄に敗れてブレスレットを取られたものの、その前に金銀虎寮の姫君から奪ったブレスレットを自寮の陣地の姫君の元にまで届けさせて自寮の姫君の分と合わせて3つのブレスを確保した当時3年だった金狼寮。
そんな昨年自分達が出陣中に姫君のブレスレットを取られたことに対する反省から、今年はもう1寮引き込む予定を立てていた。
その1寮をどうするか…
もし本気で姫君のいる陣地を守るなら圧倒的に銀狼なのだが、去年、いち寮生でいても他寮の寮長を返り討ちにしてブレスを奪った現寮長が大人しく3年生組の優勝に貢献するために動いてくれるはずがない。
引き込むならこちらが優勝を諦めることになるだろうし、それでは意味がないので却下だ。
そうなると攻め込んでくる銀狼を1寮のみで正攻法で止める手立てはない。
というか、2寮で止めるにしても下手な相方では止められるどころか邪魔になる気がするので、2寮で止めに入るにしても、相方は互いによく知っている童磨が良いと思う。
となると…あと1寮は機動性重視で、銀狼寮長が味方3寮のどれかに攻めてきたら、他2寮に知らせて虎×2寮で合流して戦っている間、今度は寮長不在の寮に異変があればまた随時知らせて助勢を依頼という役割を担わせると言う形になるだろうか…。
もちろん助勢を依頼するのに走るのにも妨害は考えられる。
となると、そのあたり目立たずさらに逃げ足が速い学生が揃っている銀竜あたりが良いかもしれない…。
そう考えて銀竜に声をかけたのだが、役割をきちんとこなせる自信がないと断られた。
巻き込まれたくないということだろう。
銀竜は平和主義者の集まりだ。
勝たなくても皆怪我をせずにやりすごしたい。
このイベントに対してはそんな姿勢でいるのだと思う。
なのでおそらく皆で陣地にいて、他寮が攻めてきたら抵抗はせずブレスレットを差し出して終了というところだろうか。
無理に引っ張り込むのも不可能ではないが、伝達の途中で敵に見つかった場合にあっさり情報を駄々漏らしにされて後ろから撃たれるようなことになるのは頂けない。
金狼は銀狼に傾倒していて、金銀関係なしにという条件のこのイベントで銀狼と敵対して自分達につくということはありえない。
そうなると残りは金竜一択だ。
ということで、対銀狼という共通の目的で金銀の虎と金竜で同盟を組むことにした。
とりあえずは金銀虎は共に攻めてくる銀狼寮長と戦い、その間、両虎と金竜の陣地は金竜が見守り、攻め入ってこられるようなら防衛しつつ、金銀虎の寮長部隊に連絡。
割けるようなら寮長部隊の人員を防衛に回すために戻す。
防衛が足りずに陣地の姫君達のブレスレットが奪われた寮に関しては、他寮から奪ったブレスレットで補完。
銀狼を倒したあとはそのまま自寮の陣地に引きこもるも、他寮に攻めて行くも自由。
銀狼を倒して姫君分のブレスレットを保管した時点で同盟は解消なので、その他寮には互いの寮も含まれる。
そう、同盟は飽くまで銀狼を倒すためだけの同盟だ。
いくら中等部生の頃から学園最強と言われていた銀狼寮の寮長でも3対1なら倒せるだろう。
……と思っていたのだが、甘かったようだ。
敵もさるもの。
いざ蓋を開けてみれば、敵も3寮同盟を組んでいた。
なので冒頭のセリフになったわけだ。
すでに戦は始まっている。
宇髄としては完ぺきにたてたはずの作戦の出鼻をくじかれたわけだが、このあと、さらに面倒なことになっているのを伝えられることを、彼はまだ知らなかった。
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