リトルキャッスル殺人事件クロスオーバー_06

こうして部屋中がシン…と静まり返るなか、
「動機は…京介君の事ですか?」
と、俯き加減で言う錆兎に、
「驚いたな…そこまでどうやって調べたんだ…」
と、拓郎は目を丸くする。

「そう…真由は4月生まれ、京介は3月生まれと約1年違うが、二人とも高校二年生だった。
二人とも両親の夫婦仲が悪くて小さな頃からよくここに預けられててね、真由は調理や掃除などを担当、京介はよく食事時にピアノを弾いてくれて…小さなピアニストとして喝采を受けていたんだよ。

ずっと独身だった私には二人は我が子も同然だったんだ。
二人とも大きくなったらここで働くんだと言ってね、真由は高校を卒業したらそのまま、京介は音大を出て有名なピアニストになったらここでコンサートを開くんだとよく言ってた。

そのためには普通の勉強も必要だからと塾に行って…勉強は得意じゃなかったがあの子はあの子なりに一生懸命勉強して…クラスがあがったと思ったら入れ違いにクラスが下がった田端とその仲間の木村に暴力を振るわれて…指を骨折。
特に左手の中指はもう二度と動かないとわかった翌日、京介は塾の屋上から飛び降りて命をたったよ。

しかしスキャンダルを怖れた塾に受験ノイローゼで片付けられ、京介を殺したも同然の二人はなんのお咎めも無しだった。
そこで私は真由に奴らに近づくように言って、ここに連れて来させたんだ。
あとは鱗滝君の言う通りだよ。

…まったく…驚いたな。
君みたいな子に出会う確率なんてありえない低さだろうに…こんな時にこんなタイミングで出会うとは…。
運がいいのか悪いのかわからないな」

「自首…してもらえませんか?」
錆兎が顔をあげると、拓郎はにっこりと微笑んだ。

「そうだな…復讐はもう終わったし、もう一度ワルツ第7番嬰ハ短調をリクエストさせてくれるなら。
今朝半年以上ぶりに聞いた生演奏は…本当に懐かしくて楽しかったよ」

「わかりました…」
その言葉に錆兎は立ち上がるとピアノの前に座って蓋を開けた。

そして流れる哀愁に満ちた優美な音楽。




「真由…ごめんな。
サビトがさっき2Fに俺呼び出してこの話をするって言った時、俺止めなかった。
サビトは仲間は何をおいても優先してくれる奴だから…俺がどうしても絶対にやめてくれって真剣に頼んだらやめてくれたかもしれないけど…俺止めなかったんだ」

その物悲しい音色が響くなか、ユートは真由に言った。
その言葉に真由はちょっと俯き加減に微笑んで首を振る。

「ううん。ずっとハラハラして気が休まる時がなかったから、全部バレてホッとしたよ。
私ね…去年のね、7月3日に京介死んで、4日にそれが同じ学校の同級生のせいだって知って…ユートの事諦める事にしたんだっ」
言って真由は顔をあげてまっすぐユートをみあげた。

「ホントはね、4日まではね、ユートに剛とつきあうって電話した日、あの日にユートに告白しようって思ってたんだよ?
でね、高2の夏休みは伯父さんに頼んでね、手伝いながらユートとただでここに泊まれたらな~なんて思ってたっ。
だから…つまんなかったな、夏休み。
2学期もクリスマスも冬休みも3学期も…ずっとずっとつまんなくて悲しかった。
だから私、2学期の終わりにユートに彼女できたって聞いてものすご~~~くショックで悔しくて、いつか会う事なんかあったら絶対に意地悪してやるって思ってたよ。
そんな事もあって今回の旅行は別の意味でもすごく楽しみだったんだけど…会ってわかった。
私じゃなかったんだなって。
あの誰にも執着しないでいつも飄々としてるユートが彼女落ち込んだりするとすっごい本気で焦るんだもん。
笑っちゃったよ、ホント…」
笑った真由の瞳からはポロポロ涙がこぼれ落ちる。

「ユートの彼女になりたかったな。すっごくすっごくなりたかったっ。
でもユートがつきあいたいと思った相手はアオイちゃんだったってわかったからあきらめるっ。
だからユート絶対に別れないでねっ!
ユートが他の子とかとフラフラして、もしかしたら私だっていけたのにって思ったら、絶望的な気分になるから。
絶対絶対約束してねっ!そしたら私今までの事全部振り切って頑張れるからっ!約束だよっ!」

「うん…約束な」
ユートも少し目をうるませて、それでも小指を立てた右手を差し出す。
真由はその指にやはり右手の小指を絡ませた。

そして
「ゆ~びき~りげんまん、嘘付いたら針千本の~ます、指切った」
と歌って指を離すと、真由はアオイを振り返って、
「というわけでね、アオイちゃん。ユートが浮気でもしたら本当に針千本きっちり一本残らず飲ませてやってね」
と、まだ涙の残る顔で笑った。


錆兎の弾くワルツの最後の一節が終わると、拓郎は拍手をして電話を指差す。
「濃霧というのは嘘だ。まだ電話をしてないから警察を呼んでくれ」
その言葉に錆兎は立ち上がると電話を手に取り、警察に連絡した。
2時間後につけると言う話で、それを周りに報告してまた錆兎はピアノに向かう。

「警察がつくまで…何かリクエストがあれば…」
「ああ、そうだな、ありがとう、じゃあ…」
リクエストに従ってまた静かに流れ始めるワルツ。

やがて時間がたち、警察が踏み込んでくる。
それでも静かに流れ続けるワルツ。
拓郎が建物を出るまでそれは続いた。

「もう…いいよ、サビト」
拓郎が連行されて見えなくなったところで、ユートが錆兎の肩に手を置き、音がやむ。
そして…錆兎はパタンともう弾かれる事はないであろうピアノの蓋を閉じた。

目を潤ませて警察の船に向かう利香、由衣、真希。同じく船に向かう柿本と湯沢。
警察の責任者らしき人間が通報者ということで錆兎に事情をたずね、全て話し終わった所でキッチンの奥のワイン蔵に警察が踏み込んで行った。

「大変ですっ!死んでます!」
の声で責任者と共に慌ててワイン蔵に向かう錆兎。

拓郎が田端をワイン蔵に閉じ込める様子は皆がみていたはずで、その時は確かに生きてたはず…。
そこでハッとした錆兎は内側のドアノブに手をかけようとした警察官の手を慌ててつかんだ。

「?」
「針が…たぶんこれが死因かと…」
と、錆兎はドアノブを指差して言う。

把手にはおそらく瞬間接着剤か何かで接着したのか小さなトゲ。おそらく毒が塗ってある。
閉じ込められた田端が取りあえずドアを開けるのを試みて握るだろうとあらかじめ仕掛けておいたのだろう。
元凶は木村よりむしろ田端なわけで…木村を殺害して田端を生かしておくはずがない事くらい気付くべきだった。

やられた…自分のミスだ…と錆兎は大きく肩を落とした。
こうして…最後の最後まで後味の悪さを残して事件は解決した。


「ユート…今回はごめん。嫌な思いさせたよね」
送ってもらっている警察の船の中で由衣がユートに声をかけた。

「おや…てっきりいびられるかと思ってたけど…」
ユートにとっては率直な感想だったのだが、それは由衣には痛烈な批判に聞こえたらしい。
普段は気の強い由衣が泣いた。

「ごめん。本当にこんな…ユートに仲いい真由の犯罪暴かせるなんて事になるなんて本当に思ってなかったのよ。ごめんなさい」
その由衣を左右から利香と真希がなぐさめる。

確かに後味の悪すぎる旅行だった…。
しかしまあここまでの自体が起こったのは由衣達のせいではない。
彼女達は彼女達で真由に対する友情と善意のみのために来たのだ。
それを責めるのは酷というものだろう。
というか…ユートは由衣に言われるまで責任を感じられる立場だと全く意識していなかった。

「…俺はいいけど…お詫びならあっちに言いなさい。
サビトは今回板挟みと責任とその他諸々で随分苦しんだんだからさ」

まあ…開き直られても腹がたつのだが、あらためて神妙に謝られてもなんとなく困る訳で…ユートはジ~っと波間に視線を漂わせて考え込んでいる錆兎の方へと振ってみた。

「今回はさ…マジいっちゃんなんも関係がない巻き込まれのくせして、嫌な部分全部かぶってくれるつもりだったんだぞ。
スペックの高さもすごいけど、それよりなにより性格の良さがな、本気でありえない。
あいつは俺が持ってるもののなかで数少ない自慢出来るものの一つ、最高の親友よ?
あいつと世界でいっちゃん可愛い彼女のアオイちゃんがいれば俺生きて行けるし♪」
ユートの言葉に女3人少し吹き出して、それから錆兎に視線をむけた。

凛とした表情で遠くを見つめるその様子は、美しく絵にはなるのだが、なんとなく一般人には近づきがたい印象も与える。

「なんか…さ、こうして真面目な顔してる時の鱗滝君て違う世界に生きてる人って感じするよね、秀麗すぎて」
真希がボソボソっとささやくと、利香と由衣がうんうんうなづく。
「すごく重要な事とか考えてるっぽいし…邪魔しにくいっていうか…」
物怖じしない由衣もそう言ってお伺いをたてるようにユートをみあげた。

「あ~、中身はただの空気読めないお兄ちゃんだよ。
今も絶対彼女に会いたいな~とか考えてるしっ。
サビトは自分が空気読まない分ひとにも求めないから気にしないでいいって」

由衣達のその言葉にそれまでユートの隣でピタリとくっついていたアオイが立ち上がってそう言うと、錆兎に向かって叫んだ。

「サビト~、ちょっと~!」
そう声をかけて、振り向いた錆兎に手を振る。
「ああ、なんだ?」
少し腰をうかせてアオイの方へとずれる錆兎。

アオイは自分もちょっとそちらにずれると、
「もしかしてまたギユウちゃんに会いたいとか考えてたでしょ?」
といたずらっぽく笑った。
「お見通しか」
と苦笑する錆兎。

「そりゃあね、サビトがぼ~っとしてる時って9割型はギユウちゃんの事考えてるもん」
「ん~、まあ昨日丸一日会ってないしなぁ…」
「でもたぶん迎えに来てくれてるでしょ」
「それは…いくらぎゆうでも無理だろ。
今回日程予定外だったし、この時間に帰るの教えてないしな」
その言葉にアオイがにやりと笑って自分の携帯をふりかざした。

「ふふっ、実は島出る前にちゃんと電話かけといたもんね~♪
絶対車でお迎えつきな予感♪」
「アオイ、偉いぞ!」

軽く盛り上がりを見せる二人を少し遠目にながめているユート&利香、由衣、真希の4人。
「アオイちゃんてさ…すごいよね。
あの入り込めない雰囲気だった鱗滝君と普通にしゃべってる」
真希が口を開くと、利香が
「うん…。
アオイちゃんといる時の鱗滝君て、本当に普通の良いお兄ちゃんに見えるもんね」
とうなづいた。それにユートは少し笑みを浮かべる。

「あそこは兄妹だからな。アオイも実は相談事とかはサビトにしてるみたいだし」
「妬けたりしないの?ユート」
と言うのは由衣。

「いや、あそこはマジ似たもの兄妹だから。男女って言うのとは全然違う。
アオイがサビトに気軽に相談するのは、確かに異性ではあるけど、”男"として接する事がないっていう気楽さからだし。サビトは女っていう意味では彼女以外に興味ないしな」

俺と真由みたいなもん…一瞬脳裏をよぎったその言葉をユートは飲み込んだ。
それはようやく和らいで来た空気を確実にまた沈み込ませる。

その言葉の代わりにユートは
「アオイといる時はただの気の良い兄ちゃんだから、行ってくれば?」
と、女3人をアオイと歓談中の錆兎の方へとうながした。

「鱗滝君…」
オズオズと声をかける女3人。
旅行中ずっとすごい勢いでまとわりついて来ていた3人の少し引いた態度に、錆兎はやっぱりな、と苦笑した。

「今回は…ごめんな。
でも真実を追究するって決めたのは俺でユートは本当に関わってないから。
あいつのことは責めないでやってくれ」
錆兎の言葉に3人は顔を見合わせる。

そしてうなづくと、3人揃って
「ごめんなさいっ!」
と頭を下げた。

「ユートも、もちろん鱗滝君もぜんっぜん悪くないからっ。
巻き込んでホントにごめんなさいっ!」
由衣は言って顔をあげる。

「たぶん…真由はすごく生真面目な子だったから、このままじゃつらかったと思うっ。
全部バレてホッとしたって言ってたし…あのままだったら私達秘密抱えてつらい真由の気持ちなんて絶対に気付いてあげられなかったから…」
「もっと早く…気付いてあげられたら良かったんだけどね…」
と、由衣に続いて利香がポツリと言って、
「早く気付いてあげたかったね、こんな事になる前に…さ」
という真希の言葉で3人がお互い抱き合って泣き声をあげた。
それに困った様に顔を見合わせた錆兎とアオイは、黙って視線をユートに向ける。

あ~やっぱりこっちにくるかぁ…とユートは視線に気付いて苦笑い。
「はい、そこで泣かないの。サビトも困ってるっしょ」
と、自分もそちらの方に少し歩を進めた。
「まあ…落ち着いたら全員で面会いってあげよう?」
3人の肩を叩いてユートが言うと、3人は手に顔を埋めたままウンウンとうなづく。

その様子を見てアオイは、3人に対するユートの態度は自分に対する錆兎みたいだな、と、ふと思う。

それをこっそり錆兎に言うと、錆兎もこっそり
「ああ、お前達風呂入ってる間にそんな話してたぞ。
困ってたら助けてやりたいし、良い奴見つけて幸せになれよとは思うけど、その良い奴に自分がなろうとは思わん。そんな感じの…妹みたいな相手」
と、返して来た。

「そう…なのかぁ…」
その言葉に少しホッとするアオイ。

「まあ…な、男が思うより女はモテるもんだが、女が思うほど男はモテない。
そんなもんだ」
「それ…サビトが言うとぜんっぜん信憑性ないよっ」
吹き出すアオイに錆兎は真顔で
「信憑性ならありまくりだ。少なくとも俺はぎゆう以外に好きだって言われた事ないぞ」
と断言した。

みんな…その整いすぎた容姿と高すぎるスペックのせいで近寄りがたいだけなんだけどな…と、アオイはさきほどの由衣達の話を聞いてふと思うが黙っておくことにする。
どうせ錆兎はギユウ以外には興味がないから、言うだけ意味がない。

そんな錆兎の最愛の彼女様は、やっぱり迎えに来てくれていた。
「ぎゆうっ!ぎゆう~~っっ!!」
錆兎は船をおりてその姿を認めると、すごい勢いで駆け出していく。

そしてそのお姫様オーラを漂わせてたたずむ美少女の前にくると荷物を放り出して、
「すごく、すっご~く会いたかったっ!」
と、その華奢な体を強くだきしめた。

そしてそのお姫様が
「私も♪おかえりなさいっ、お疲れさまっ♪」
と、この世のものとも思えないほど可愛らしいハイトーンの声でそう言うと、錆兎は手はその背に回したまま、体だけ少し離して、あらためてその可愛らしい顔に浮かぶ天使の笑みにみとれる。

「本当に…今回は色々堪える事多かったから…」
「うん、そんな感じの声だった」
全てをわかって許容してくれるその笑みに錆兎はホッと息をつく。

「…本当に…死ぬほど会いたかった…」
そしてそのままその華奢な体をまた抱き寄せると唇を重ねた。


「え~っと…性格変わる?鱗滝君」
そんな様子を遠目に驚きの目で眺めつつ立ち尽くす女3人組。
唖然とする由衣の言葉にユートは小さく吹き出した。

「ちなみに…毎日彼女の家で彼女と過ごしててあれよ?
1日会えないと寂しくなって2日会えないと禁断症状で3日会えないと死ぬとみたね。
言ったっしょ?サビトの方がベタ惚れの”命より大事な彼女様”なんだよ。他が入り込む隙なんて微塵もないって」

そんなユートの言葉に
「なんか…すごいね。あそこでいきなり抱き合って熱いキスって、日本人じゃないよねっ。まあ…鱗滝君はもちろん彼女さんも一般人とはかけ離れたレベルの美形だから絵になるけど…。映画のワンシーンみたいだよね」
と、利香がやはり驚いてそちらを凝視しつつ言う。

「まあ…あれだけの男の彼女は、やっぱり一般人じゃないのは納得したっ。
なんか…なんだろ~、単に可愛いだけじゃなくて一般人離れしたオーラあるよねっ。
もう完敗っていうか、あれだけの美少女なら清々しいくらい思いっきり諦めつくっ!」

最後に真希の言葉を聞いた時、アオイはふと真由の言葉を思い出した。
ユートの彼女になりたかったと言っていた真由の言葉…。

「相手が…私みたいなのじゃなくてギユウちゃんみたいに可愛かったら、真由さんもきっともっときっぱり諦めがついたんだろうね…」

真由が諦めた理由はユートの態度で…自分じゃない。
まあしかたないんだけど…と、苦笑するアオイに由衣が目を丸くして、次の瞬間ケラケラ笑った。

「アオイちゃんてさ…もしかしてすっごい自己評価低い人?」
由衣の言葉にユートはやっぱり笑いながら肯定してうなづく。

「心配しなくても…アオイちゃんも今時レアだから。
これがさ、私らみたいな彼女だったら、真由も”ユートだまされてんなよっ”って諦めがつかなかったと思うよ?
もうさ、なんていうか…自分が守ってあげないとこの子やばいかもって感じのアオイちゃんを、あの事なかれで面倒ごとはゴメンって言うユートが主義まげて一生懸命守ってるからさ、微笑ましい気分になんのよ」

そんな事…考えても見なかったアオイはポカ~ンだが、その由衣の言葉をユートは”その通り!”と肯定する。

「もうさ、”可愛いお馬鹿さん”だからねえ、アオイは。
今時の油断ならない女ん中ではマジレアよ?」
それに利香と真希も同意した。

「いつか…また今度は本気で何にもない状態で遊びに行こうね。
鱗滝君の彼女さんも誘ってさ」
「うん♪ぜひ」
そんな由衣とアオイのやりとりを聞いて、ユートはふと思い出した。

今回も…結局”できなかった”
もう本気でありえない確率で起こる殺人事件に毎回邪魔をされている気がする。
もしかして…これ結婚までなんのかんの言って”できない”とか言うオチ?
下手すると新婚旅行とかで”さあやるぞ”とか思ってもまた殺人事件だったらどうしよう…。

今年は賽銭500円も奮発したのにおみくじは”凶”で、半年もたたないうちに2度目の殺人事件…。
もう来年にかけてみようか…。来年は…倍にして1000円くらい奮発してみようか…。

夕日の埠頭。
もう二人の世界で幸せそうな親友カップルと新たに出来た女の友情に盛り上がっている女性陣を遠目に見ながら、近藤悠人17歳は青少年らしい悩みを抱えつつも、次こそは!と再起を誓いつつトラブル続きの旅行を終えた。


追記…

4月…めでたく高校3年に進学したユートには…人生初の”舎弟”ができたらしい…。
廊下で空手部の人間とすれ違うたび
「押忍!」
とササっと道をあけられ90度お辞儀をされ…周りに奇異の目で見られる日々だ。

「お前らっ!近藤さんには挨拶忘れんなよっ!
あの人はな、殺人犯素手で倒せるような勇者でも倒せない様な超絶スゲー悪の親玉を、必殺技ナイトメアスーパーメテオインパクトで軽くのすマジパネ~方なんだからなっ!!」
と、何故か空手部の部長に就任したらしい湯沢が新入部員を含む全部員に訓示を垂れているのが原因らしい…。


(錆兎…お前いったい何言ったんだよ……)

あの日、証拠集めで二人になった時、錆兎と湯沢との間にどんな会話があったのだろうか…。
何を言ったらここまでありえない事態に?
もうユートには想像もつかない。
それでも確実に学校一の有名人への階段を駆け上がりつつあることに青くなりつつ怯える一般人なユートであった。





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