別荘へGO
案の定…親も姉妹も気にしなかった。
つか興味ね~って感じで、唯一姉が
「あんたバイトしてたんなら、たまにはお姉様に貢ぎなさいよっ」
と言ったがスルー。
それで思い出した…初日のプリン代まだもらってない…が、まあ機嫌がいいのであれは帳消しにしてやろう。
今日のうちに荷物は詰めとくか。
男女3組で泊まりかぁ…。
サビト達はカップルで…映とヨイチはどうなんだろ…。
でも仲は良さそうだよな、二人。
まあアオイは奥手っぽいからいきなりそういうシチュエーションにはならんか~…なんて高まる妄想。
行く前からすでにやばい健全な男子高校生な俺。
支度終えてさあ寝ようとなっても悶々として眠れなかったり…。
そして朝日見ちまった…。
あ~もうしょうがないっ。
これから寝たら寝過ごすの確定なんで起きてシャワー浴びる。
普通に朝飯食って7時。
あと2時間どうやって時間つぶすかねぇ…。
なんとなくアオイに電話かけてみたら、なんとアオイはすでに親に家追い出されて最寄り駅のマックで時間つぶしてるとのこと。
これはもう行くっきゃないでしょ。
結局20分後、アオイと合流。
しばらく念願の二人きり。
その後一応1時間前くらいに電車にのって新宿へ向かった。
もちろん早めについて一番乗り。
しばらく待ってると映とヨイチが来る。
後半はゲーム内でも一緒だったと言う二人、家も結構近所だったらしい。
最後に来たのはサビトとお姫様。
全員揃った所でサビトがチケット配って出発した。
新宿からスーパーあずさで長野の茅野駅まで約2時間半。
座席はボックス席だから、前の席をひっくり返して4人席を作り、俺とサビト、アオイと姫がそれぞれ隣、映とヨイチは俺達と通路はさんで隣に座った。
姫が最初に窓際座ってアオイが当たり前にその隣に座ったからこうなったわけなんだけど…本音言うとアオイの隣に座りたい。
ま、しかたないけど…と思ってると列車に乗り込んだ時点ですでに眠そうだったお姫様が小さくアクビ。
「眠そうだね、ギユウちゃん」
とアオイが笑うと、お姫様は小さな拳で目をこすりながら
「はい…家族以外と旅行って初めてで…。
とっても楽しみすぎて昨日全然眠れなかったんです」
と、少しはにかんだような笑みを浮かべた。
そのまま眠っちゃいそうな感じの姫にアオイは
「3時間弱時間あるから少し寝ちゃえば?私にもたれていいよ」
と申し出るが、姫はフルフル首を横に振る。
そこでサビトが腰を上げた。
「アオイ、チェンジ」
と、そのままアオイに席を替わらせると、
「良いから寝とけ。着いたら起こしてやるから」
と姫に言って自分の上着を姫にかけてやる。
「ありがと~さびと」
と、そのサビトの申し出は素直に受けて、コツンとサビトの肩に頭を預けるお姫様。
一応…全然他を気にしてないようでいても、無条件に我が儘言ったり頼ったりしていいのは彼氏だけって認識は持ってるらしい。
まあ…彼氏の方もそう言うのが嬉しいんだろうな。
そのままコトンと眠りに落ちるお姫様に、本当に普段のキツイ表情からは考えられないほど柔らかな優しいまなざしを向けている。
なんつ~か…めっちゃ羨ましいんですが…。
ま、アオイの隣に座れたからヨシとするか。
でもとうのアオイは隣の俺を意識するでもなく…いきなり今回の自分達の側に起こった事件の説明をした後、
「今だから言うけどさ、ごめんね、私ずっと…昨日会う瞬間までヨイチ犯人だと思ってた。
本気で全く他と接触してる気配なかったし…」
と始めて、俺がっくり。
「メルアド交換もスルーだったしね、得体が知れない人だと思ってた」
アオイが言う。
まあ…俺もヨイチの事は得体が知れないとは思ってたけどさ…。
実物みたら気が弱そうな、人が良さそうな感じの奴で、とても人殺せるようには見えない。
んで、”得体の知れない人だと思ってた”とまで言われても怒る様子もなく、笑い飛ばすでもなく、ただ困った様な笑みを浮かべて俯いてる。
まず…殺人なんて真面目にいっちゃん無理ぽい気が…。
そんなヨイチの代わりに、えらくテンション高い映が答えた。
「あのね、ヨイチってすごぃ人見知りで対人恐怖症入ってたんだよっ。
だから他人と関わらないでいいようにって魔王放置で単に雑魚敵やるにはソロやりやすいアーチャー選んだんだって」
なるほどね…。
まあよくよく考えてみれば、相手殺したいんなら相手と接触持たないとだしな。
それやらない時点で犯人ではなかったんだよな。
「私もさ、結局出遅れちゃったっていうか仲間作れなくて退屈でさ~、ヨイチ見つけて追い回したんよ。
もう最初は無言で逃げる逃げる。
でもそのうち諦めてもらえたみたいで一緒に遊ぶ様になったんだっ♪」
うっあ~~~その光景目に浮かぶようだ、マジ。
対人恐怖症なところにこの勢いで追いかけ回されたら、そりゃもう必死でにげるわなっ。
なんだかもう事情わかってみるとマジ笑えるコンビ。
「んでしっつも~ん♪」
これで自分の側は終わったとばかり、映はシュタっと手を挙げた。
「そっちはさ、リアフレぽ?」
「あ~…」
聞かれて俺は少し考え込んで口を開いた。
「俺は知り合ったのは全員ゲーム始まってから。
アオイは成り済ましメールがきっかけで携番交換してサビトは同じ頃リアルで会って、それ以来リアフレ。姫は完全にこの前が初対面」
続いてアオイも口を開く。
「ユートとはユートが言った通りで…サビトはさっき話した様に犯人に追われて助けてもらったのが初対面で…ギユウちゃんは同じくこの前が初対面」
「んで?そっちは?親公認て何者?」
映はサビトに目を向けた。
考えてみれば…俺もはっきりサビトに聞いたわけじゃないから、ちょっと興味津々。
サビトは注目を浴びて、少し視線を窓の外に反らせるが、
「ギユウちゃんさ、サビト君だけ呼び捨てで口調も少し砕けてるし、この前初対面とかありえないよねっ?元々家族ぐるみのつきあいのリアフレとか?」
と、さらに聞いてくる映の態度に諦めたらしい。
小さく息をついて話し始めた。
「知り合ったのは俺も全員ゲーム始めてからで…リアルで会ったのは姫が最初」
ええ???
うっそだ~。ゲーム始めてからの知り合いかよっ!
むっちゃ手はっえ~。
つか、サビト見る目がマジ変わった、俺。
アオイも隣で驚いてる。
そんな周りの驚きをよそにサビトは続けた。
「最初の殺人あった日、アオイにキレられてユートとアオイ、姫と俺がそれぞれ分かれて行動したんだ。
んで、その時殺人あったの知ってたの俺とアオイだけだったから姫にも教えたんだけど、怯えられてな。
翌日夏期講習で学校行かないとだが怖くて行けないから送り迎えしてくれって、止める間もなくダ~~っと……名前から住所から学校まで……」
うあああああ
「女の子の側にそれやられるとだ…もうしかたないだろ。
そこで下手に断って変な奴に付いてかれても怖いし…」
サビトはそこでいったん言葉を切って大きくため息をついた。
「めちゃくちゃ恥ずかしいぞ…女子校に送り迎えって…。
家行ったら親に挨拶、学校行ったら教師に挨拶。待ってる間は晒しものだ」
親や教師に挨拶は…きついな。
最初のサビトの言葉ではサビトの彼女って実は姫ではないって可能性も考えてみたんだけど、これ聞く限りは姫だよな…。毎日家と学校送り迎えしてるって言ってたし…。
「でもさ、お嬢ぽいじゃん?彼女。よく周りが男が一緒なんて許したねっ」
と感心する映。
そそ、問題はそこよっと思ってるとアオイが言う。
「あ~でも許すのわかるっ!サビト親受けめっちゃ良いから。
うちの親も大絶賛してたよっ」
うっ…そう…なのか…。
まだ親公認どころか告白すらしてないわけだからそこまで心配してもしかたないけど…アオイの親とかにサビトとかと比べられたらめちゃきついな…。
そんな俺の心の葛藤とは裏腹に、サビトは小さく首を横に振った。
「なんていうか…ちと違う。
姫の親ってな…もうこの親だからこういう娘育つんだなって納得するっていうか…。
両親ベタベタに仲良くって、娘の事もベタベタに可愛がってて…。
でもって何勘違いしてんだか、うちのギユウの選んだ男ならマイファミリー…みたいな…。
選んでないってのに、他人の話ぜんっぜん聞いてなくて…な」
サビト…告白とかいうんじゃなくて、どっちかっていうと取り込まれたクチかっ。
意外に変なところで押し弱いもんな、コイツ。
俺が吹き出して
「もしかして…それに引きずられて今に至ってたり?」
と、聞くと、
「義勇に似ても錆兎君に似ても可愛い子供が産まれるわね、きっと…ってとこまで話されているんだが…」
眉間に手を当てて大きく息を吐くサビトを除く全員が爆笑した。
まあでも幸せじゃん?
これだけ美少女な彼女に見初められて親にも気に入られてて…しかもどう見てもサビトの方もめちゃ惚れてるっぽいし。
まあ…顔はとにかくとしてサビトが頭良かったり強かったりするのは、他の楽しみ全部犠牲にして勉強や武道に時間費やされたせいで、本人がそこまでの事を望んでたかっていうとそういうわけでもなさげで、そんな中で一生懸命他の奴のためにさらに自分の時間費やして奔走するような奴だから…少しくらいはそういう幸運があってもいいよな。
とりあえず…これで今いるメンバーの人間関係ははっきりした、と。
あとは…
「ね、話戻るけど、結局ね、今回の連続殺人の流れって大方つかめたの?
この前言ってた日記とかは?」
アオイが人間関係がつかめたところで、本題に入って行った。
それに対してサビトが少し表情を曇らせる。
「一応…な、日記は入手したぞ。まあ長く借りられないから、コピーして返してきた。
それ読むとだいたいの流れがわかる。
奴な、最後で仲間割れというか、たぶん警戒されたんだろうな、殺されたっぽいけど、
エドガーんとこまでは共犯だったから。
まあ…モノがモノだし、詳しくは別荘に落ち着いてからな」
アオイは全然その辺気にしてないみたいだけど、やっぱり親しかった奴が死んで間もないのに、そいつの日記読むってきついものあるよな、たぶん…。
茅野駅につくとそこからはタクシー。
今回のゲームのミッション達成金を使い切っちゃおうという主旨の元、全員の残ってるお金をあわせて大盤振る舞いだ。
「一台には乗り切れないから男女で3、3かな」
アオイの言葉にサビトからNGコール。
「一応責任持って預かってきてるから姫と離れるのはまずい」
あ~そうですか…。
まずいってより離れたくないってのが本音じゃね?とか無粋な事は言っちゃいけないお約束だよな?
「…じゃあ…俺と映が分かれて乗るね」
これまで終始にこやかに話を聞いてるだけでほぼ口を開く事のなかったヨイチが、そこで申し出た。
「え~?私は良いけど…ヨイチ、平気?」
映が珍しく心配そうな顔でヨイチを振り向く。
「…うん。映のおかげで…だいぶ自信がついてきたから。
良い機会だし、これを機会にもう一歩頑張ってみるよ」
あ~、対人恐怖症って言ってたっけ…。
「じゃ、俺と姫とヨイチ、んであと3人な」
サビトが即宣言する。
映の事苦手なんだな、まだ。
俺らは内心笑いを堪えて、それを了承した。
そして別荘へ向かう車の中で、映が言った。
「ユートってさ…一番空気読みそうだから頼んどくね」
その判断は正しいとは思うんだけど、あまりに唐突。
「はい?なんざんしょ?」
と聞き返す俺。
「ヨイチさ…さっきも言ったけどようやく対人恐怖症克服し始めてるとこだから、傷つけないように気をつけながらもいぢってやってね」
おいおい、どっちなんだよって思いつつも、まあともすれば傍若無人ともとれるくらい我が道を行く映がそこまで気をつかってるのにちょっと感心。
「らじゃっ。ようは…キツい事言わないように、でも会話とかは特別扱いせずに振れよって意味でおっけぃ?」
俺が念のため確認すると映はうなづいた。
そのまま車は一路高原へ。
お姫様の別荘は山の上の方。
なんだか高級そうな別荘の立ち並ぶ一角にあった。
「すっげ~、あたしの自宅よりよっぽど広いよ」
タクシーから降りた映の第一声。
いかにも高原の別荘って感じの綺麗な白い建物で、サビトに当たり前に荷物を預けて鍵を開ける姫。
「ん~でもちょっと問題があって…」
ガチャリとドアを開けて、どうぞ、と中にみんなをうながす。
「問題って?お、中も素敵っ♪」
真っ先に中にかけこんで聞く映。
俺とアオイ、ヨイチ、と順に中に入ると、最後にサビトが中に入ってドアの鍵をかけた。
「姫、荷物どうする?」
「それなの」
サビトの言葉にお姫様が可愛い眉を寄せて考え込んだ。
「実は…5つしかベッドルームがなくて…普段は家族とゲストいてもせいぜい二人だから。
すっかり忘れてましたっ」
ようは…4人がそれぞれ個室使って2人が相部屋になるってことか。
まあ個人の別荘で個室が5部屋もある事自体がすごいけどな。
俺てっきり男女に分かれて雑魚寝かと思ってた。
むしろその事に感心してる俺の横ではアオイがやっぱり同じ事を考えてたのか苦笑してる。
「映ちゃんとアオイちゃんはそれぞれ個室使って頂くのは基本として……
ま、いっか。サビトは同室でもいい?」
ふられてサビトはうなづいた。
「ああ、俺は個室じゃなくても別にいいぞ」
ま、そうなるだろうな。
女の子がまず優先で…ヨイチは対人恐怖症だから相部屋なんて無理だろうし、そうすると俺とサビトしかいないし。
…って思った俺が甘かったよ…。
「んじゃ、そういうことでっ♪
映ちゃんとアオイちゃん、ユートさんとヨイチさん、それぞれ個室使って下さいなっ♪」
きっぱり宣言するお姫様。
へ???
一瞬ぽか~ん。次にまあなんというか…妄想。
そっか…彼氏彼女だもんな…お泊まりってことはまあそういう事も…って思ってたら
「ま~て~~!!!」
とサビトから異議申し立て。
「姫……アオイと映とユートとヨイチに個室使わせたら誰と誰が同室になると思ってるんだ……」
「私と…サビト」
ナチュラルに答えるお姫様にサビトががっくりとその場にしゃがみこんだ。
「だって…ゲストに相部屋って申し訳ない気しますし…。
私は相部屋として、サビトなら相部屋でも許してくれるかな~って」
「いや……問題はそこじゃなくて…な。相部屋はいいんだけどな…」
サビトの慌てぶりから察するに、どう考えてもその気があって言ってるわけじゃないよな?お姫様。
「男女で同室ってのがまずいんだと思うよ」
一応苦笑しつつも良い人担当の俺としては助け舟を出しておく。
案の定…お姫様は
「そういう事?」
と、しゃがみ込んでるサビトをキョトンとした目で見下ろした。
そこでサビトはホッとしたように
「そういう事だ」
と答える。
これで解決…と普通ならなるんだけど、お姫様はにっこりと
「そう言う意味なら大丈夫♪
この前サビトは誰彼構わず襲う趣味ないって言ってたし、私もないのでっ♪」
あ…サビトが死んだ……。
「わ、私っ!!フロウちゃんと同室になりたいなっ!
一晩女の子同士でおしゃべりしようっ!」
さすがに気の毒になったのか、さらにアオイが助け舟を出すとお姫様は嬉しそうにその場でぴょんぴょん跳ねた。
「あ~、それも素敵ですねっ♪じゃ、アオイちゃんと一緒~♪」
脱力するサビトに、苦笑いを浮かべる残り一同。
そんな感じでドタバタとしてたけど、とりあえずそれぞれ一旦個室に落ち着いた。
まあ落ち着くと言っても俺たいして荷物もないんだよな。
つか、一人でいても退屈だし、荷物を鞄ごとクローゼットに放り込むと下のリビングに降りて行く。
ありえん…別荘のくせに広い……
たぶん…普通の部屋の二部屋分くらいは余裕である。
何畳とかはわかんないけど…。
下はフローリングで真ん中の応接セットのあたりにはカーペット。
天井にはおっきなファンまでクルクル回ってるよ…。
大きなガラス戸を開けると庭に出られる様になっていて、外とは反対側にはカウンター。
その奥がシステムキッチンになっている。
ソファもあるけどなんだか高級そうなその感触が落ち着かんので俺は絨毯が敷いてある床に直接腰を降ろして皆を待った。
しばらくしてなんか小さな手提げの紙袋を手にサビトが降りてくる。
「すごいね、ここ」
俺が声をかけると、サビトは
「ああ、でも姫ん家もっとすごいぞ」
と、俺の横のソファに腰を降ろして言った。
俺ら2人しかいないわけだし…一応確認。
「ね、以前言ってたサビトの彼女ってさ…もしかしてつか絶対に姫だよな?
もうさ、ゴールイン間近って感じ?」
ま、それ以外はないんだが、念のため…と思って聞いてみると、サビトの口からは意外な事実が。
「あ~、あの時は色々たて込んでて説明すると長くなりそうだったからスルーしてたけど、別に彼女ってわけじゃない。親公認の…ただの友人」
…信じられないわけですが…つか…2人の様子見てたらどう考えてもただの友人ってなくね?
「そうなん?
なんかもう明日結婚しましたって言われても不思議ないくらい馴染んでる気がするんだけど」
と、サビトを見上げて聞くと、
「いや…馴染んでるとしたら毎日朝から晩まで一緒で…自宅には寝に帰るだけくらいな勢いで…姫父いないと留守番頼まれて泊まったりするからか…」
おい…泊まりもあったのか…。
どこぞの一般家庭ならともかくとして、そんなお嬢様の家でただの友人相手にそれはなかろう…。
「あのさ~~サビトの友人と彼女の境目って何よ?
もうただの友人でそれって普通あり得ないからっ。
つか姫だって俺はまだしもアオイとさえある程度の距離感もって接してるけど、サビトだともう距離まったくなしって感じじゃん」
俺の言葉にサビトはただポカ~ンとしている。
こいつ…もしかして結納でも交わすまでは友人とか思ってんじゃないだろうな?
つか…どう考えても姫は俺らに対するのとサビトに対するのと態度違うし、逆にサビトもそうじゃん。
「サビトってさ…なんつ~か…天然?
頭むちゃキレるし基本スペックも高いんだけど…変なところでむちゃくちゃ鈍感…つか、世間知らずだよな」
もう…笑うしかない。
「普通だとここまで完璧に出来過ぎだといけすかないんだけどさ、それがあるからサビトって見ててすげえ面白い」
頭いいくせに変なとこで鈍くさいよ、サビト、まじで。
そんなやりとりを交わしてるうちに映とヨイチ、ついでアオイと姫が降りてくる。
お姫様は持参したフリフリの…テレビドラマとかでどこぞの新妻がつけてそうな真っ白なエプロンをつけて
「飲み物を入れてきますから寛いでいて下さいね」
と、キッチンに消えて行った。
俺は一応
「あ、俺手伝うっ」
と立ち上がりかけたが、即サビトから
「やめとけ」
と、止められる。
「男が台所入るのすごく嫌がる家だから」
と、当たり前にいうあたりが…もう休みの間中、どっぷり姫ん家に浸かってたんだなって感じで笑える。
「お茶…何がいいです?」
キッチンからカウンター越しに姿を覗かせたお姫様に戸惑う一同。
サビトだけが当たり前に
「何がある?」
と質問を返した。
てっきり日本茶、紅茶、コーヒーみたいな感じの答えが返ってくるものかと思ったら、お姫様の口から出てきたのは…
「ん~アールグレイにラプサンスーチョン。ミルクティにするならアッサムもあります。
後はアイスならニルギリが」
『…ごめん……わかんない。日本語?』
俺の隣に座って思わずコソコソつぶやくアオイに俺も同意。
「ん~他が希望ないなら俺はアールグレイがいい。
ストレートで飲みたいけど、スモーキーすぎてラプサン好きじゃない」
それに普通に答えるサビト……庶民には宇宙人の会話だ。
つかさ、もう2人だけの世界?
「うんっアールグレイね♪ハロッズとF&Mとフォションどれがいい?」
もう…ね、誰もついていけない世界に入ってきましたですよ?
何を聞かれてるのかさえ庶民にはわかりませんよ?
「ハロッズがいい」
って反応するのサビトだけだし。
やがてワゴンにポットと思い切り高級そうなティーセット、それに持参したらしき高級そうな焼き菓子を乗せたお姫様がキッチンから戻ってくる。
優雅な仕草でティーポットから紅茶を注いでいく姫。
「おお~~ヨイチ、見てみなよっ!ティーバッグじゃないんだよっ!
ティーポットから茶でてるよっ!本物だよっ!ドラマの世界だよっ!」
それに大興奮の映。隣のヨイチの肩をバンバン叩いてる。
0 件のコメント :
コメントを投稿