オンライン殺人再びっorg_08_ナイト様注意報

『野良パーティー…楽しかったですね♪(^-^』

翌日いつものように釣りをしながら口を開くフロウちゃん。
あんまり世間の大変さを実感できなかった予感。

コウは無言…。
ユートはフォローいれようもなく、私にウィスを送ってくる。

(どうするよ、これ…。事態悪化してない?)
(うん……)


コウが無言なのもフロウちゃんは全然気にならないらしい。
私に唐突に話をふって来た。

『…ギルバートさんて…昨日のガーディアンさんでしたっけ?』

フロウちゃん…よりによってギルさんの名前出す?
私はリアルでため息をつく。

『そうだけど…それが?』
仕方なく最低限の返事をすると、フロウちゃんの謎発言。

『今…います』
『はい?』
『今ね…隣で釣りしてます』


うあああ……。
よりによってガーディアンのギルさん?


『同じ趣味だったんですねぇ、びっくりしました(^-^』

いや、それ多分違うから。釣り好きなわけじゃないから。
嫌な予感……

そんな時…いきなりまたウィス。ユキ君からだ…。

(まいど!アオイ、変な事きくけどさ…)
(うん?)
(ギルそっちで迷惑かけてたりする?)

なんか…ますます波乱の予感…

(えと…なんだかフロウちゃんの横で釣りしてるみたいだけど…何かあったの?)
おそるおそる聞き返すと、ユキ君は珍しく歯切れの悪い口調で
(あ~…なんていうか…)
と口ごもった。

(昨日の事で…なんかトラブルあったの?)
一応なごやかにパーティー終わった気がするんだけど…実はあのあともめてたとか?

(いや…え~っとそういう事じゃなくて…)
(…?)
(あ~どうしよっかなぁ…ギル、姫に余計な事とか言ってたりしない?)

(そこまではわかんないけど…聞いてみるね)
私はいったんそこでユキ君との会話を打ち切って、今度はフロウちゃんへウィスを入れてみる。

(フロウちゃん、ギル君とどんな話してるの?)
私の質問にフロウちゃんは即答。

(釣りの話です~)
(他は?)

(ん~~~パーティーの話?漠然としすぎててよく……)
(盾いないパーティーはやっぱり…みたいな?)
(あ~そんな感じですね~。
で、私はコウさんがいるから大丈夫~みたいな話してて、でも盾じゃないでしょって)

なんとなく…ユキ君が何心配してたかはわかって来た気が……

(要は…盾なしパーティーなんかいないでも自分と一緒にいてくれればお守りしますよって話ね?)
思い切り要約してみると、フロウちゃんは
(アオイちゃんすご~い(^-^ )
と感心してみせた。


私が結論をユキ君にウィスで伝えると、ユキ君は一瞬無言。

(アオイがさ、言ってた事ホント?)
しばらくのち、ユキ君は聞いて来た。

(言ってた事?)
(うん、優秀な盾ベルの話)

あ~コウの事だね。

(うん!私がパーティー組んできた中では少なくともダントツ1位。
仲間内パーティーに補充で入る野良の面々も太鼓判な出来過ぎ男だよっ、コウは)

(ん~、じゃあギルのぼせ上がる前に突き落としとこうっ)
ユキ君らしい物言い。

(あのさ、アオイんとこのギルドメン+俺+ギルでパーティーよろw)

いきなり?つかユキ君が何考えてるかはわかる気はするけど…

(ね、ギル君かわいそす…)
(あ~いいのっ、あれは元々ヘタレだからっ。
姫様に完璧なナイトがいるの見せてスッパリあきらめさせた方が本人のためだっ)

ユキ君容赦ないなぁ。

(ちなみに…俺全開で行くからっよく言っといてねっ。
ギルには遠慮せずタゲキープしていいからっ)

特攻野郎ユキ君の本領発揮かぁ…。


『ね~、みんなこれからレベル上げだめ?』
ギル君にはユキ君から連絡取るっていうから、私はギルド会話で聞いてみた。

『俺はかまわんが…』
『俺もいいよ~。ちょうど植木の収穫終わったし(^^』

『あのさ、昨日フロウちゃんと一緒したフレのユキ君が同じく昨日一緒だったギル君と一緒にパーティーしたいって言ってて…』
ギルド会話で言いつつ、私はコウにウィスを送った。

(あのね、コウ、できれば…思い切り完璧な盾やってもらえると…ギル君ガーディアンだけど気にしないでいいからってユキ君が…)

私の言葉にコウはなんと
(あ~、そろそろそう来ると思って準備してた)
という返事。

(へ?)
(ようは…姫がギルって奴のタゲとってるんだろ?
さっきからそいつそれっぽい事言ってるし)

あ……
(もしかして…フロウちゃんと近くでやってたり?
フロウちゃんの話とかスルーなのはそのせい?)

そか…今二人でフロウちゃん家なんだ、そういえば…。


案の定コウからは
(そそ。言いたい事あればお互いリアルで言ってるしな。今二人で並んで俺の部屋のベッドの上)

ベッド……
思わず妄想に入る私に、コウがおそらくリアルでため息をついてるんだろうな、即付け足す。

(おかしな妄想しないように。
単に並んで座ってパソコンに向かってるだけだからな。
姫が押し掛けてきて勉強机でやろうにも椅子一つしかなくてテーブル出すのめんどかったからな。
ベッドはベッドラックあるからそこにパソコンおけるし)

(……それだけ?)
(…お前とユートは…お前が想像してるような事しながら普通にネットゲームできるのか?)

はい、確かにできませんが…。冗談の通じない男だ。
とりあえず不機嫌だった訳じゃなくて、単に必要なかったから黙ってたわけね、コウも。
少しホッとした。


(アイジュさんの時はムッとしてたみたいだったから、今回もそれかと思ってたんだけどホッとしたよ)

思わず言う私にコウは即答
(タゲ取ってるくらいで腹立ててたら姫とはつきあえんぞ。
リアルでも普通にある事だしな。
あの盾もどきの時は姫にタゲよこすようなヘタレのくせにそれ正当化するような事言ってたから)


あ~確かにフロウちゃんもリアルで絡まれたりとか多いって言ってたっけ。
可愛いもんなぁ…歳下の大樹ですら熱狂的なファンになるくらいに。


(逆の場合ってどうしてるの?)
単純な好奇心でちょっと聞いてみたっ。

(逆?)
(うん。コウがタゲ取っちゃった場合)
(そんな趣味はないっ!)

コウ即答。
なんか勘違いっつ~か、腐女子な映ちゃんとのやりとりがあまりに衝撃だったんだね。

(違くって…コウが女の子のタゲを取っちゃった場合だよ、男じゃなくて)
(あ~そっちか)

そうだよ、普通そっちだよ…って突っ込みをいれたくてうずうず。

(そういう事もないからっ)
(はあ?)
(自慢じゃないが、俺モテたことないぞ。モテるようなタイプでもないしな)

………どの口でそれ言うかね?

(コウさ…馬鹿?)
いつも言われてるから仕返しっ!

(頭良くてスポーツできて強くてイケメンで…どこがモテるタイプじゃないって?)
(勉強と鍛錬しかやってこなかった、頭でっかちでスポーツ馬鹿で目つき怖くて空気読めん男を、姫以外の誰が好きになるって?)

………
………
………

(実際…一度もないぞ?告られたりしたこと)

みんな…レベル高すぎて告る勇気でないんだね…。
おまけに…追いかけられたら逃げそうだしな、コウの場合。


まあ私達がそんな会話を交わしてる間に、全員準備が整ったらしい。
噴水の所に集合でもうパーティー作り始めてる。

コウの誘いを受けてパーティーに入ると、もういつものメンバーは揃ってて、
『というわけでフレ誘え』
と、コウからリーダーを渡された。

そこで私はユキ君とギル君を誘う。

『んじゃ、そう言う事でっ。こちらは私のギルドの友人のコウとユートっ。
で、こっちはフレのユキ君とそのフレのギル君っ』

二人がパーティーに入った所で私がそう紹介すると、ユキ君はピョンっ!とコウの方に一歩飛び跳ねてシュタっと手をあげた。

『ばんわっ!ヒーラーの敵対心ビシバシアップさせる天才っ、特攻ウィザードのユキでっす!
空気読めんけどイルヴィス1の鉄壁さを誇る盾ベルのコウ君、お噂はかねがね伺ってるよっ。
よろしくねぇ~(^o^)/~』
いきなり飛ばすユキ君。

『おいアオイ…お前どういう噂してんだっ』
呆れたため息をつくコウ。

それに私が答える間もなく、
『そういう噂っ!(^o^)』
と、断言するユキ君。

『すごいテンションだねぇ(^^;』
ユートが苦笑する。

『本気でしょっぱなから全開野郎なんだけど、紙薄だからねっ。
守ってあげたくなるでしょっ?(^-^』
『なるかっ!』
『ひっど~い、コウ君冷たいわっ(;_;)』

なんだかその後もそんなどつき漫才みたいなノリでコウも馴染んでる。さすがユキ君だ。



そんなこんなで毎度おなじみ山の中腹。
毎度おなじみの巨人一名様ご案内~。

『ひゃっほぅ~♪』
雄叫びを上げていきなりファイアを唱え始めるユキ君。

コウがそれを察知して一歩前に出て巨人を攻撃した。
まず一撃。タゲがコウに。
直後にユキ君の炎系魔法ファイアが着弾、後ろに行きかける巨人。
だが振り向き様コウがもう一撃。
おお~タゲが戻った。

『やるねぇ~♪んじゃもう一発いっとくか~♪』
そしてまた詠唱を始めるユキ君。

『ざ~け~ん~なぁ~~!!死にたいのかっ!お前はっ!!』
叫ぶコウ。

『一発でも多くの魔法撃って一撃死っ!これがウィザードの心意気っしょ!』
ハイテンションでファイアをさらにぶちかますユキ君。

一瞬動きかけるタゲ、でも一瞬でまたコウがタゲを取り戻す。
いつもよりは若干被ダメが大きいコウのHPをまったり回復するフロウちゃん。
でももちろんタゲは動かない。

『これで撃てるの最後かねっ♪』
ユキ君のファイア3発目。タゲは全く動かない。
そして4発目の詠唱前に沈む敵。


『すごい…戦闘だねぇ』
ユートがまず感心したように言う。

『しょっぱなから本当に全開するってありえないぞ…』
とため息のコウ。

『いやいや、コウの方が充分あり得んから大丈夫っ!(^o^)b』
悪びれないユキ君に
『何がだ…』
とまたコウのため息。

『これだけ思い切り全開しててタゲこないってマジありえんって♪
アオイに聞いた時は半信半疑で最悪姫様に蘇生してもらおうとか思ってたんだけど、安心して全開できるなっ♪』

『するなっ!つか死ぬ前提で全開するなあ~!!』
なんだか良いコンビだ。


『守って…あげたくなった?(^-^』

ユキ君はあのフロウちゃんの台詞がお気に入りらしい。
胸の前に手を合わせて首を傾げるポーズまで真似る。

チビキャラなので可愛いと言えば可愛いんだけど
『ならんっ!見殺すぞっ!』
とにべもないコウ。

それに対してユキ君はシクシク泣くポーズ。

『ひどいわ~コウ君たらっ。姫様の事はお守りするくせにっ!不公平だわっ!(;_;)』
『当たり前だっ!』
『なるほどっ。愛の差なんですねっ!
可愛い姫様とリアルでラブラブだからゲーム内でもお守りしちゃってるんですねっ、わかりますっ』

ピッキ~ンと凍る空気……

『わ…私何も言ってないよっ!ホントだよっ!!
いくら私だって二人がリア彼氏彼女なんて話しないって!!』

コウの怒声が聞こえてくる気がして、思わず言う私の耳には
『え…?うそ…冗談…のつもりだったんだけど……ホントだったん?』
というユキ君の言葉に続いて
『この馬鹿……』
というコウのため息が振ってくる。

うあああ~~~冗談だったのかっ。軽いパニックに陥る私。


(ユートっ!どうしようっ!!)
即ユートに助けを求めるウィス発動。

(ど…どうしようね…(^^;)

ユートも呆れてる…かな。

それでも
『ま、いんじゃない?別にリアル人物特定するわけじゃないし。
姫にナンパ目的でくる奴とかいなくなりそうだしさっ。
一応お詫びに暴露すると、俺とアオイもそうっす。
うちのギルドはリアフレのリアカップル二組でできてんの。
だからね、ギルド名も日本語で棕櫚。花言葉が不変の友情ってことでつけたんよ』
と、フォローを入れてくれた。

『あ~なるほどねっ。リアフレ皆で始めたんだ~、楽しそうでいいねぇ~。
ギルド名も考えてるね(^o^)』

とりあえずユキ君もそのフォローに乗ってくれて、なんとか凍り付いた時間が動き出す。

『んじゃ、そういうことでっ。敵釣って来まっす(>_<)>』
私は慌てて次の敵を釣りに走り出した。

あ~怖かったぁ…。



この日はそのまま和やかに終わった。

ユキ君は昨日フロウちゃんとフレカ交換してたから、@二人、コウとユートともフレカを交換してたみたいだ。

『気を使ってないようでいて、実はすごく空気を気にして行動してる良い奴だな』
と、コウが珍しく褒めていて、ユートもうんうんとうなづく。

確かに私のフレの中でもオススメなんだよ、彼は。

唯一気になるとしたら終始無言だったギル君。
ユキ君は気にしないでいいって言ってたけど大丈夫かなぁ…。








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