オンライン殺人再びっorg_06_ネットゲームな日々

私達はあのままフロウちゃん家のノートパソコンをお借りしたままでプレイしてる。

まあ前回と違って急いですすめる必要もないので、レベル上げ以外にもそれぞれ釣りなり金策なりにいそしみつつ、まったりと遊んでいた。

コウは相変わらずソロでミッションを試しつつ情報を集めているし、フロウちゃんは釣り。
ユートはマイルームで育てられる鉢植えにはまってて、私はテロテロと経験値の足しにならないような敵を倒して金策にはげむ毎日。

もちろんその間もギルド会話はしてるし、レベル上げたいとなったらやっぱりいつものメンバーだ。



今日はみんなでレベル上げの日。

パーティーを組む場合、人数多い方がパーティーボーナスといって経験値が多く入るので、いつもの4人の他にもう2人誰かを誘うことにした。

無難な所でアタッカー一人に盾一人。
パーティー参加希望のマークを出してたガーディアン男とウォリアーの女の子を誘ったわけなんだけど…


「よろしくねっ♪」
と投げキスの動作をしてパーティーに入ってきたウォリアーの女の子…どこかで見た様なキャラクター…

名前…イヴちゃん。
ぐ…偶然だよねっ。あのイヴちゃんは今頃刑務所のはずっ。
微妙に沈黙な私達…。

もう一人はまあ普通に美青年系のキャラのガーディアン、アイジュさん。
「よろしく(^^」
と無難にお辞儀をして入って来た。


とりあえずこうして6人パーティになった私達は街からちょっと歩いた山の中腹で巨人を狩る事にする。

私的には始めて組む新ジョブのガーディアンに興味津々。
確か…防御が高いお守りしますジョブなんだよね。

いつものようにブーメランで敵を釣ってパーティーメンバーの所に戻ると、今日はコウの代わりにアイジュさんが敵を引き受けてくれる。

アイジュさんがヘイト稼ぐまでイヴちゃんとコウは攻撃を控えてたんだけど…なんでアイジュさん、こんなにHP減ってるの??
3発ほど殴る間待って他が殴り始めた頃にはHP黄色くなってる…。

いつもは4人でやってたんだけどコウが受けてた時ってこんなにHP減ってたっけ??
ガーディアンて…防御高いはずだよね??

フロウちゃんが回復すると、減りが大きい分回復量も大きくて、回復量が多いということは稼ぐヘイトも大きくて…フロウちゃんに突進する巨人。
そこでアイジュさん、颯爽とフロウちゃんの前に立ってシャキ~ンとテク発動っ!

おお~~守るだ~~。
初めて見たっ。かっこいい!


「守るですね~♪私初めて見ましたっ、素敵なテクですね~(^-^」
フロウちゃんがいつものニコニコマークで言うと
「ヒーラーさんを守るのが俺の仕事ですから(^^」
と、ちょっと得意げなアイジュさん。

二人がそんなやりとりをかわしてる間に巨人を追いかけて後衛の立ち位置まで行って殴るアタッカー陣。
コウがフロウちゃんの代わりに殴られてるアイジュさんから黙ってタゲを取り戻した。
微妙にムッとしてるっぽいアイジュさん。


「あの…盾からタゲ奪うってアタッカーとしては理性なさすぎてどうかと思うんだけど?(^^;」

「守るの継続時間は1分。今発動後経過時間50秒。
そのままにしておいたら、またヒーラーにタゲ行くぞ」
実も蓋もないコウの言葉。

うああ…コウもムッとしてるよね、これ。


「ベルセルクならヒーラー以上のヘイト稼いでタゲ維持できるからな」
とさらにアイジュさんに言ったあと、フロウちゃんに
「姫、そいつのHP回復しとけ。もう充分ヘイト稼いでるからヒール使っても大丈夫だから」
と指示する。

その言葉にフロウちゃんはやっぱりHPを黄色くしていたアイジュさんに回復魔法を入れた。
全快しても動く事のないタゲ。

「ガーディアンは防御高い分攻撃力が低いから、どうしてもヘイト稼ぐのが難しいんだよね」
ボソボソっと言うアイジュさん。

なんだか…きまずい…
そこにさらに火に油を注ぐイヴちゃん…

「あら、でもコウ君のが被ダメ少なくない?どっちが盾だかわかんないよねww」


うあああ……言っちゃいけない事を……

無言になるアイジュさん。
でもまあ確かに…そうなんだよね、何故か。

ウォーリアと比べて防御2倍なはずのアイジュさんより防御半分のコウの方が圧倒的に減るHPが少ない。
謎だ……

「なんだかおかしいよね、普通ならベルセルクがそんな固いはずないし。何かおかしな事してない限り」

完全に臨戦態勢だな、アイジュさん。

「普通に”考えていれば"これくらいの防御維持できるけどな。
紙薄でHP減らせば回復するヒーラーを危険に晒すから、守る気があれば考えるよな」
うああ…コウもかなりきてるよ…。


「ごめん!リアル急用で…本当に申し訳ないんだけど街戻って解散でいいかな?(^^;」

ちょうど敵が倒れたタイミングでユートが言った。
もう…このギスギスした空気の中続けるの、確かにつらすぎ。

「リアル事情ならしかたないよねっ、残念だけどっ><」
と、私もそれを後押しする。

「あら、残念っ。
コウ君みたいに上手いプレイヤー初めてあったからもうちょっとやりたかったなっ」

イヴちゃん…空気読んで、お願い…。もう泣きそう……。
そこにナイスフォローなフロウちゃん。

「私も残念です~。
守るなんて使って頂いたの初めてだったのでなかなか感動しましたっ。
また機会があればご一緒して守って下さいねっアイジュさん♪(^-^」

その言葉に
「もちろんですよっ。ぜひまたご一緒しましょう(^^」
と、力の入ったアイジュさんの言葉。

『姫…馬鹿にプロヴォいれるな……タゲ固定するぞ』
ギルド会話でコウが不機嫌に言う。

『プロヴォって…ウォーリアさんのテクじゃなかったでしたっけ?』
きょとんと言うフロウちゃん。

コウ…いい加減そういう遠回しな言葉はフロウちゃんには通じないって学習しようよ…。

『わかんなきゃいい…』
またまた不機嫌なコウ。
裏でそんなギルド会話を交わしつつ街に戻ってかいさ~ん。



『すごいパーティーだったね…』
解散後マイルームに戻ってため息まじりに言うユート。

『コウもさ…いちいち相手にすんのよそうよ』
『姫にタゲよこす様なヘタレな盾は要らん!』

あ~不機嫌の原因はまずそこだったか~。

『他人批判する前にまず自分が努力しろと…』

う~ん…努力してどうにかなるものなんだろうか…と思ってると、ユートも例によって同じ事を考えてたらしい。

『あのさ…所詮ジョブスペックってあるわけじゃん?
コウがリアルスペック高いのはわかるんだけど、なんでゲーム内でもそんな超人なわけ?
まさかジジイが特別になんかしてくれてるわけじゃないよな?』
と聞く。

『そうだよ、コウ。
なんで防御高いガーディアンより固くて、しかも一瞬でタゲ固定できちゃうわけ?』
私もさらに付け足すと、コウはお前ら馬鹿か、とつぶやいた後、種明かしをしてくれた。


『防御半分のベルでもな、耳×2、指×2、首、ベルト、頭、鎧、腕、脚、足、マントの計12種類全部を防御仕様の物に着替えれば素のガーディアンくらいには余裕でなるわけだ。
それにプラスしてディフェンス。これで盾仕様。
通常は敵によってどこまで防御、どこまで攻撃仕様の装備にするか決める。
で、手っ取り早くタゲ固定したい場合は全部攻撃仕様装備にした上でオフェンス&バーサク。
もちろんタゲきたら即オフェンスとバーサク切ってディフェンス使って防御に着替え。
着替えとテク駆使は常識だろ、せっかくショートカットあるんだしな』

うああ…そんな技がっ。さすがコウ。


『ガーディアンの場合、丁度攻防逆にすればおっけーだ。それもやらんでHPスポンジな上にタゲも維持できんで姫にタゲ移すような盾は勝手に一人で死んでろって思うぞ』

ごめん…それが常識なら私は充分常識知らずだよ……
まあ…どちらにしろシーフにはその手のテクないわけだけどね…。

着替えなんて考えてもみなかった。

でもね…多分なんだけど、ライトユーザ-が多いこのゲームでそこまで当たり前にやってるのはレアだと思うよ?
ホントどんだけ几帳面な効率主義者なんだよ…。

もう感心するのを通り越して半分呆れる私に、ユートが
(まあ…姫絡んで私情も入ってるからさ(^^;)
とウィスを送ってきつつ、そういえば、と、話題を変えた。


『俺ほぼ接点なかったのにイヴからフレカード交換申し込まれたんだけど…みんなも?』

そんなの…きてないけど…

『私は申し込まれてない』
『俺は…フレカードどころかギルドいれてくれってウィスきたぞ』
『で?いれるん?』
『まさか。ほとんど知らない奴だし。
フレカードは断る理由ないんで交換したがギルドは断った』

ま、そうだよね…。名前怪しいしっ。

『姫は?申し込まれた?』
ユートの言葉にフロウちゃんは
『いいえ。イヴさんからは何も。
アイジュさんからはウィス来て申し込まれたので交換しましたが(^-^』

うあ…またそっちに話が戻るか…。
波乱の予感。







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