清く正しいネット恋愛のすすめ_111_産屋敷学園高等部体育祭_競技前に…

「義勇、もう泣くな。
どうしてもダメそうなら棄権するか?」

綺麗に錆兎に洗ってもらって、亜紀から借りた靴下と靴を履いているものの、まだ足にあの潰れたミミズの感触が残っている気がして気持ちが悪くて涙が止まらない。

錆兎はそんな義勇に寄り添ってそう言うが、棄権なんてとんでもない。
クラスの勝利など正直どうでもいいが、錆兎を敗者にするなんて絶対に嫌だ。

だから義勇は断固として棄権することは拒否した。

そして
「大丈夫…走る」
と、グイっと袖口で涙をぬぐう。


実行委員はぎりぎりまで待ってくれたが、いつまでも待たせるわけにもいかない。
そこでそろそろ…となった時、選手の入場門の位置で並んで待っていた空太に、錆兎が少しマイクを借りれないか?と打診すると、彼は依頼されたことに大喜びで実行委員の席からマイクを借りてきた。


「鱗滝君っ!借りてきたっ!思う存分使ってくれたまえっ!!」
と、そんな空太の声までマイクが拾ってしまって、今日一日『さすが鱗滝君!!』と叫び続けた彼の嬉しそうな声に、会場が笑いに包まれる。

「ありがとうな、拝島」
と錆兎がマイクを受け取りながら礼を言うのを前にした空太の嬉しそうな様子と来たら、まるで尻尾を扇風機のごとく振る大型犬のようだ。

ともあれ、そうして借りたマイクで錆兎が話し始める。

「1Bリレーの走者の鱗滝です。
まず、このたびは1年B組のトラブルでリレーの開始を遅らせてしまったことを深くお詫び申し上げます。
今回選手の集合が遅れましたのは、リレーと同時に騎馬戦の参加者でもある女子が騎馬戦で離席中、選手席に置いてあった靴に悪意を持ってミミズをいれた者がいて、選手がそれを知らずに履いてしまったためです。
いれたのは状況的に1Bの女子ということになります。
これは個人への苛め、嫌がらせにとどまらず、競技妨害でもありますので、きちんと調べた上で、しかるべき処置を取り、ご迷惑をおかけした全校生徒の皆さまへもなんらかの形で結果のご報告をさせて頂こうと思います。
以上、競技を遅らせてしまったことに対してのお詫びと状況説明のご報告でした」

そう締めて生徒席に向かって頭を下げる錆兎。
他の1Bのリレーの3名もそれに倣う。

そうして、そのきちんとした謝罪と事情説明に拍手と共に『がんばれよ~!』という歓声が上がる。


「色々上手いですね、会長様は」
クスリとほくそ笑むしのぶ。

「お詫びと言いつつ、実質全校生徒に問題が起こっていることと"迷惑をかけたことに対する当然の義務と責任"ということで犯人を明らかにする宣言で、やらかしたおバカさんにプレッシャーですか」
私も見習わないとっ!と、とても楽し気に言う彼女に、

「周りを巻き込むのが天才的に上手い人たらしだからなぁ、ウサは。
でも、胡蝶もそのあたりたいがいだと思うぜ?
本当に…うちのクラスの秀才組は敵に回したくねえ」
と、苦笑する宇髄。


その二人から少し離れた所では、礼を言ってマイクを返す錆兎に空太が相変わらず『さすが鱗滝君っ!色々きちんとしているし、さすが未来の1年生生徒会長っ!産屋敷学園高等部の未来は明るいよねっ!さすが鱗滝くん~~~~!!!!』
と、絶叫し、それに何故か2年女子の中から、
『さすが鱗滝くん~~!!!』
と、呼応するような声があがって、錆兎がぎょっと振り返る。

それにひらひらと振られる2年女子の集団の手。
混乱しつつも一礼して、

「じゃ、リレーの位置につくから」
と、空太に言ってすでに並んでいるリレー走者たちのほうに駆け出し、
「時間を取らせて申し訳ありませんでした」
と、錆兎はそちらにも礼をして列に加わった。



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