清く正しいネット恋愛のすすめ_101_産屋敷学園高等部体育祭_借り物競争前半

「午後一はなんだぁ?あ、借りもの競争か」

昼休み中ずっと胡蝶しのぶと拝島空太の言い争いで終始したが、空太は体育祭の実行委員なので一般の生徒よりも少しばかり早く昼休みを切り上げて戻っていき、残り少ない昼休みがやっと静かになったところで、宇髄がプログラムを確認して言った。

「あ~借り物競争、障害物競争に玉転がしって、短距離、中距離、長距離、槍投げって、いかにも体育祭競技っていうのが続く午前と比べると、いっきに運動会って雰囲気になるなァ」
とそれにそう言う不死川の言葉に、

「まあ、昼飯食って腹が膨れたところでいきなりガチ競技はきついというところだろう」
と、宇髄がにやりと笑う。

確かにそれもそうだ…と答えつつ、不死川はゆっくり立ち上がった。

「あ?お前、借りものだっけ?」
「ああ。午前中、全員参加の短距離の他に中距離走ったから、あとは借り物で2種目終わりだァ」
と、上着を放り出して集合場所へと駆け出していく。

その背中を見送って
「…不死川が何か借りに来たらビビる奴いそうだよね…」
と、苦笑する村田の言葉を誰も否定できず同じく苦笑で返す面々。


「でも…不死川、よく借り物競争に出る気になったな…」
と、その中でただ一人真顔の義勇に、
「…そんなたいそうな競技か?あれが…」
と、錆兎は不思議そうな顔をする。

「…錆兎みたいな人間にはそうかもだけど…」
と、それにそう返って来て、錆兎はさらに不思議そうに自分を指さし、義勇はそれに大きく頷いた。

「男子科は知らないけど…共学科は毎年、借りるものを決める実行委員が悪ノリするから…」
「悪ノリ?」
「そう。だいたいは物じゃなくて人でね、一番好きな人とか、頭が良いと思う人とか、仲が良い人とか…
友達少なかったり人づきあいが苦手な人間には敷居が高いんだ」
と言ったあとに、義勇は、私みたいな…と、自嘲する。

「いや、そんなことはないぞ!義勇は可愛いしとても好ましい人間だと思う」
と、そこで錆兎が即そう返すのはお約束だ。

さらに甘露寺が
「そんなことないわっ。義勇ちゃんは私と仲良しじゃないっ!」
と言い、その横で甘露寺の言う事は全て正しい伊黒が
「そうだな。甘露寺という世界で一番素晴らしい女性を友人にしていることは誇って良いことだぞ」
と、大きく頷いた。

そして錆兎が
「義勇に必要なら頭が良いとか何か出来る系は俺がなれるように頑張って備えるから、義勇は来年度からはやりたければ借り物競争とかになっても大丈夫だぞ」
と、もう、それ笑えないと思うような発言をし始める。

それを聞いた伊黒が
「…すまない、甘露寺。俺も努力はしてみるが錆兎ほどできるかどうか……」
などと言うが、甘露寺は
「ううん。今年もそうだけど、私は借り物競争よりはパンが食べられる障害物競争の方が好きだから大丈夫よっ」
と、実に彼女らしい発言で締めた。


そうこうしているうちに競技が始まる。

「午後の最初の競技は借り物競争です。
まあ、まいどおなじみの、点数も大して高くはない、ゆる~いお愉しみ競技なので、選手に頼まれたら学年やクラスなどの枠にこだわらずに協力してあげてくださいね~。
では始めま~す」

という、午前とは打って変わったのんびりした実行委員の言葉で、しかしそれだけは相変わらずパン!!という鉄砲の音でスタート地点に並んだ選手が50m先に置かれたテーブルの上の封筒を目指して走り出す。

そしてそれぞれ好きな封筒を手に取り中身を見て、書かれている物や人と共にゴールするのだ。

抽象的なお題が多いので、ゴール後、順番に実行委員が判定することになっていて、それが一種の娯楽のようになっている。


「鱗滝君っ!!来てくれっ!!」
と、トップで封筒を手にした拝島空太が、お題を見るなりB組の生徒席に飛んでくる。

そして錆兎の腕を掴むので、義勇がムッとしてもう片方の腕を掴むが、
「…まあ、こういう競技だからな。仕方ない。
競技が終わったらすぐ戻るから」
と、それでもここで拒否するのはNGというのが競技の暗黙の了解になっているので、少し困った顔をしつつも錆兎は拝島にゴールへと連れられて行く。

それに仕方ないとは言え少し面白くなくてむぅっとしている義勇の前に、今度は不死川がなんだか困ったような顔で立っていた。

「あの…よォ…嫌ならいいんだ、他頼むから。
でも、もし嫌じゃなければ、来てくんねえかァ?」
と言いつつ見せるお題の紙に書かれているのは『学年で一番可愛いと思う生徒』で、義勇も少し恥ずかしくて困ってしまう。

「…やっぱ…ダメ…だよなァ?」
と、ここ最近は普通に良好な関係を築きつつもこれまでの事があるからと、少し肩を落とす不死川に
「あ、ううん。そうじゃなくて。可愛いって…ちょっと恥ずかしかっただけ。
いいよ。行く」
と、義勇は慌てて首を横に振った。

するとぱぁ~っとわかりやすく明るい表情になる不死川。

そうして許可が出ても、
「い、嫌だったら言ってくれなァ?そく放すからっ」
と、おそるおそる、まるで姫君の手でも取るように上を向けた手のひらに義勇が手を乗せるとゴールへと向かう。


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2 件のコメント :

  1. 拝島君とさねみんのご褒美回かな…(*´з`)?

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    1. 二人ともこれまでが不幸すぎましたしね😅💦

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