清く正しいネット恋愛のすすめ_99_産屋敷学園高等部体育祭_昼休み

「鱗滝君、もしかして料理は不得意なのかい?
なんだったらこれから僕が弁当を作って来てあげようか?
実はこう見えて料理は得意なんだ」

何故か弁当箱を抱えてB組の集まるブルーシートに陣取り始める拝島空太。

それに
「何故あなたがこんな所に押しかけて来るんです?
迷惑なので自分のクラスに戻って下さい」
と、はっきりきっぱり拒絶する胡蝶しのぶ。

さらに
「錆兎の弁当は私が作っているから大きなお世話。
それより錆兎が嫌がっているから近寄ってこないで」
と、自分のことではほぼ何も言えない義勇も、こと錆兎のこととなると、しのぶ以上にはっきり切り捨てる。

「あのなぁ…俺が言うのもなんだけどな、距離感っつ~ものを考えねえと、善意のつもりでも悪意かと思われるぞォ?」
と、柔らかく拒絶をしながらも、自身の過去に重なるところがあるのだろうか…どこか優しい不死川。

そして…さきほどのやりとりで、自分が何を言っても無駄だろうと悟った宇髄は
「ウサ、嫌ならはっきり言ってやった方が本人のためだぞ?」
と、拝島ではなく錆兎の方に言葉をかけた。


そうしてふられた錆兎の第一声は…
「弁当はたとえ高級料亭のものだろうと、恋人が一所懸命作ってくれたものに勝るものではない。
俺にとっては義勇が作ってくれたこの弁当が何よりのご馳走だから放っておいてくれ」
で、彼の一番大切なところはそこのようだ。

それには近くで甘露寺と弁当を広げていた伊黒がうんうんと思いきり頷いている。

しかし拝島は
「え?それは冨岡さんが?
ひどくないかい?」
と、錆兎の弁当と義勇の弁当を見比べて驚いたように目を見張った。

「…ひどい?何が?」
と、眉を寄せる錆兎に拝島が言う。

「自分のはすごく美味しそうな弁当を作るのに、鱗滝君のはそれって…もしかして嫌がらせされてるんじゃないか?」


うわぁ~~と言う顔の面々。
一気に空気が凍り付く。

拝島が嫌いで彼の失言は望むところな胡蝶しのぶでさえも、青ざめて気遣うように義勇に視線を向けたが、当の義勇は全く気にした様子もなく、

「私のお弁当を作ったのは錆兎だから。
美味しそうなお弁当で当たり前っ」
と、何故かフフン!と誇らしげな顔をして言い放った。

(冨岡の思考回路…謎過ぎてわかんねえわ…)
と、小声で言う宇髄に
(…私にもあそこでドヤ顔する意味がさっぱりわかりません)
とこめかみを抑えて答えるしのぶ。

しかし、何故か意味が通じてしまう甘露寺蜜璃が
「そうよねっ!料理上手な恋人が作ってくれるお弁当って嬉しいわよねっ!
愛されてるって感じがするし、美味しいし、とっても幸せを感じるわよねっ」
と、笑顔で同意した。

「うん。錆兎は私が好きなおかずをいっぱい入れてくれるんだっ。
蜜璃ちゃんのも伊黒の手作り?」
「うんうん。この量作るのとっても大変だったと思うけど、今日は体育祭だから好きな物をいっぱい作ってくれたのっ」
と、甘露寺は重箱弁当を突きながら笑顔で言う。

そんな彼女組の会話をよそに、拝島は
「…いっそのこと自分の分も全部自分で作った方が良くないかい?」
と、飽くまで錆兎に話しかけた。

それに錆兎は丁寧に付き合う。

「いや、今義勇が料理の練習中ということもあるが、俺にとっては好きな相手が作った物ということに意義があるんだ。
俺のように空気が読めずに苦労している人間が言うのもなんだが…拝島は少し情緒とか情操とか言うものを考え学んだ方がよくないか?
人は利便だけで生きるものではなく、感情に左右される部分も多いものだ。
そのあたりを理解できないと、成績が良かろうと運動が出来ようと、最終的に大成するのは難しいと思うぞ?」

「なるほど。さすが鱗滝君!目のつけどころが違うねっ!」
と、その言葉にまた今日何度聞いたかわからない『さすが鱗滝君!』の言葉が拝島の口から出てきて、錆兎も正直どうしよう?と思った。

これは…別に嫌味でも悪意でもないのはなんとなくわかるが、どうして急に俺に構いだしたんだ?と謎に思う。

そして…はっきりそれを口にした。

それに対して拝島は曇りのない笑顔で
「いや、僕は今まで妬まれることが多くて、友人なんて必要ないと思っていたが、鱗滝君のような優秀で人格者で容姿にも優れている友人なら欲しいなと思って」
と、なんだかすごい発言をしてくる。

「自慢じゃないが僕は顔も良いし運動神経も良いし成績もずっと学年2位だったしね。
僕たちが友人として一緒にいれば絵になるんじゃないかと…」

「やめてくださいっ!
錆兎さんにも選ぶ権利があるんですっ!」
と、割って入るしのぶ。

義勇も警戒するように錆兎を抱きしめる。

「…ダチって…絵になるならないで作るもんかァ?」
と、ぽか~んとする不死川と、片手で顔を覆って軽く首を横に振る宇髄。

そして…普段なら甘露寺以外のことには一切口出しをしない伊黒が珍しく
「錆兎は俺の友人だ。
だいたい貴様はこいつを敵対視していただろう。
こいつが何より大切にしている恋人に対するこいつの姿勢にも向き合うことなく、友人になりたいなどと口にするなど、片腹痛いわ。
そもそも、だ、こいつの友人を名乗るなら……」
と、ネチネチネチネチ文句を言い始めて、錆兎と拝島以外の面々はその様子に驚いた視線を向ける。

「ウサ…そんなに伊黒と仲良いのか…?」
と、その驚きを錆兎にぶつける宇髄に、錆兎は当たり前に
「…ああ、そうだな。心の友というやつだ」
と、肯定してみせ、周りがそれにさらに驚く。

「いや、そいつが心の友になれるなら、僕だって…」
「なれないっ!伊黒は特別だっ!」

拝島の言葉を遮る錆兎の声の強さに、当の伊黒以外の全員が驚いた。
特別な友人…というわりには、特にいつも一緒というわけでもなかったし、むしろ宇髄の方がよく一緒にいるというのがその全員の認識である。

なのに何故ここに伊黒が?と思われるのは、錆兎も分かっているのか、ぽつりぽつりと説明を始めた。

「伊黒は俺が一番ではないし、俺も伊黒が一番ではない…」
と、まるで前言の否定のような言葉から入るが、否定ではないらしい。

「ただ…伊黒は俺にとって一番大切な感情と同じ感情を持っていて、それを理解している。
恋人を誰よりも大切に思う気持ちだ」

「いやいや、ウサ、俺だって彼女は大切に思ってんぞ?」
と、いきなりなその言葉に宇髄が言うが、それに即投げかけられた言葉は

「…恋人のためなら世界を滅ぼせるか?」
で、宇髄はぽか~んと口を開けて呆けた。

が、そこで
「俺はできるぞ。甘露寺に勝る価値のあるモノはこの世にはない」
と、伊黒は即答する。

そして二人の彼女ガチ勢の男たちが互いに理解のまなざしを向けて頷きあう。

場がだんだんカオスになってきて、しのぶは離脱することにしたらしい。
黙々と箸で弁当を口に運び始めた。

「俺の真の友人となりたいなら、己よりも大切な相手を作ることだな。
まずは他人を尊重するところからか…
少なくとも俺は俺の友人知人を軽んじる輩とは友人にはなれん」
と、最後にそう締めると、

「わかった。嫌だが鱗滝君の周りの人間は尊重しつつ、大切な相手についてはまた検討してみるよ」
と、わかってないだろう、その発言からすると…という発言をしつつ、拝島は結局その場に陣取ったまま、皆で昼食を摂って、午後の競技に備えることとなった。


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