…会いたかった……嬉しい……
それが義勇が意識を失う前の最後の言葉だったはずだ。
なのに何故そんな事を言われている??
別に冗談でもなんでもなく、ぎゅっとウサギを抱きしめたままこちらを見るキャンディのようにまんまるく澄んだ瞳は警戒の色を帯びている。
あまりのショックに言葉もなくその場に硬直する錆兎。
その横を駆け抜けるのは、やっぱりこの手の事に慣れているのか、宇髄だった。
警戒されにくい雰囲気を最大限に有効活用しつつ、義勇に事情を説明し、義勇から必要な事を聞きだしていく。
そして…
(…心肺停止してたって言ってたし…そのせいで記憶が抜け落ちてんのかもしれねえな。
もしかしたらこのまま戻らない可能性もある。
お前もショックだろうけど一番動揺してるのは本人だからな?
上手い事言ってやれ。
いつもみたいに照れ隠しの嘘はやめとけよ?不安にさせるからな?)
と、小声で告げられた言葉に、錆兎はようやく事態を飲み込んだ。
そうだ…あの時に実弥も言っていた。
心肺停止していたので、何か障害が出るかもしれないと。
錆兎はそれがてっきり身体の方かと思っていたが、なるほど記憶の方に出てしまったのか……。
――不安にさせたらダメだ…
自分のショックはショックとして、しかしながら今優先するのはそちらではない。
それでなくても心臓が悪い相手にストレスを与えてはダメだ…。
どうしたら…一番義勇のためになるのか……
そんな事を考えながら近づいて行くと、大きな瞳が不安げな視線を送ってくる。
自分が誰だかわからない…それは随分と不安…だよな?
「…ぎゆう……」
ソッとベッドの端に膝まづいて、錆兎はその頬に手で触れた。
なるべく自分の動揺を表に出さないように…義勇に安心感を与えるように……
いつも顔が怖いと言われるので、まず声をかけた。
そして出来るだけ自然に微笑んで見せる。
「大丈夫。お前が俺を忘れてしまっただけでなく、お前自身すら忘れてしまっていても、俺が全部覚えてるからな」
と、そこまで言って悩む。
自分が知っているのはここ一カ月の義勇だけだ。
でも……と、また悩み、しかし錆兎は決意した。
ストレスも不安も自分が全て被れば良い。
それで義勇の気が少しでも楽になるならいいじゃないか…
そう思えば言葉は存外にスラスラと口から飛び出してきた。
「俺は小さい頃中央の北部に住んでいてな、隣で爺さんとお袋さんと住んでたお前とは幼馴染だった。
で、爺さん、お袋さんと相次いで死んじまった時、心臓悪かったお前を中央地域の病院に連れて行って入院させたんだ。
ほんとはな、こっちに連れて来たかったけど、俺は軍人だから…巻き込みたくなかったから…。
でも月に1度はこっそり姿隠して見舞い行ってたんだ。
後ろにいる友人達にはそんなんじゃないって嘘をついて、誰より大事なお前に会いに行っていたんだ…」
――あ~あ、とうとうバラしちまったか。
と、後ろで小さく吹きだす宇髄。
(…心肺停止してたって言ってたし…そのせいで記憶が抜け落ちてんのかもしれねえな。
もしかしたらこのまま戻らない可能性もある。
お前もショックだろうけど一番動揺してるのは本人だからな?
上手い事言ってやれ。
いつもみたいに照れ隠しの嘘はやめとけよ?不安にさせるからな?)
と、小声で告げられた言葉に、錆兎はようやく事態を飲み込んだ。
そうだ…あの時に実弥も言っていた。
心肺停止していたので、何か障害が出るかもしれないと。
錆兎はそれがてっきり身体の方かと思っていたが、なるほど記憶の方に出てしまったのか……。
――不安にさせたらダメだ…
自分のショックはショックとして、しかしながら今優先するのはそちらではない。
それでなくても心臓が悪い相手にストレスを与えてはダメだ…。
どうしたら…一番義勇のためになるのか……
そんな事を考えながら近づいて行くと、大きな瞳が不安げな視線を送ってくる。
自分が誰だかわからない…それは随分と不安…だよな?
「…ぎゆう……」
ソッとベッドの端に膝まづいて、錆兎はその頬に手で触れた。
なるべく自分の動揺を表に出さないように…義勇に安心感を与えるように……
いつも顔が怖いと言われるので、まず声をかけた。
そして出来るだけ自然に微笑んで見せる。
「大丈夫。お前が俺を忘れてしまっただけでなく、お前自身すら忘れてしまっていても、俺が全部覚えてるからな」
と、そこまで言って悩む。
自分が知っているのはここ一カ月の義勇だけだ。
でも……と、また悩み、しかし錆兎は決意した。
ストレスも不安も自分が全て被れば良い。
それで義勇の気が少しでも楽になるならいいじゃないか…
そう思えば言葉は存外にスラスラと口から飛び出してきた。
「俺は小さい頃中央の北部に住んでいてな、隣で爺さんとお袋さんと住んでたお前とは幼馴染だった。
で、爺さん、お袋さんと相次いで死んじまった時、心臓悪かったお前を中央地域の病院に連れて行って入院させたんだ。
ほんとはな、こっちに連れて来たかったけど、俺は軍人だから…巻き込みたくなかったから…。
でも月に1度はこっそり姿隠して見舞い行ってたんだ。
後ろにいる友人達にはそんなんじゃないって嘘をついて、誰より大事なお前に会いに行っていたんだ…」
――あ~あ、とうとうバラしちまったか。
と、後ろで小さく吹きだす宇髄。
――ほんと、バレバレだったよなァ…
と、実弥も同意するあたりで、それは信憑性を増したようだ。
まあ2人とも本当にそう思っていたわけで、それが真実ではないと知るのは錆兎だけなのだが…。
嘘をついている…大事な相手に嘘をついている…
その痛みは錆兎の胸の中にだけ存在している。
それでも錆兎は義勇に安心感を与えたかったのだ。
「まあ…結局巻き込んでしまって、こんな事になってしまったけどな。
これからは俺が絶対に守る。
どんなことからも絶対に全身全霊、全力で守るからな。
安心してくれ」
錆兎はなんだか泣きたい気分で…しかし笑って見せた。
すると義勇もぎこちなくではあるが、微笑み返してくれる。
ああ…可愛いな…好きだな……それは本当に単純な感情で、案外すんなりストンと錆兎の心の中におちて来た。
と、実弥も同意するあたりで、それは信憑性を増したようだ。
まあ2人とも本当にそう思っていたわけで、それが真実ではないと知るのは錆兎だけなのだが…。
嘘をついている…大事な相手に嘘をついている…
その痛みは錆兎の胸の中にだけ存在している。
それでも錆兎は義勇に安心感を与えたかったのだ。
「まあ…結局巻き込んでしまって、こんな事になってしまったけどな。
これからは俺が絶対に守る。
どんなことからも絶対に全身全霊、全力で守るからな。
安心してくれ」
錆兎はなんだか泣きたい気分で…しかし笑って見せた。
すると義勇もぎこちなくではあるが、微笑み返してくれる。
ああ…可愛いな…好きだな……それは本当に単純な感情で、案外すんなりストンと錆兎の心の中におちて来た。
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