寮生は姫君がお好き45_開会式&宣誓

こうして始まる体育祭。

開会式。
この時点ですでに藤襲風だ。

まず
学校長の挨拶
これが学校長不在でその代理だったのは、錆兎いわく去年は普通に学校長本人だったとのことなので、別にこの学校ならではの何かではなく、単なる今年の都合らしい。


優勝杯及び優勝旗返還
まあこれも普通。
銀虎寮の寮長宇髄が返還しているところを見ると、昨年の優勝は銀虎寮だったのだろう。

校歌斉唱
伴奏が録音した音楽ではなく、なんと学校用に用意されたこれも大きなテントに待機していたオーケストラの生演奏なのはすごいと思う。
さすがに資産家の子息が多く集まる学校だ。
なんとトラックでグランドピアノまで運びこんでいる。


そして…選手宣誓

その前の校歌斉唱が終わると、何故か1×2mほどの台座が6つ用意される。

なんだろう?と義勇が思っていると、寮生の一番前、義勇と一緒に並んで立っていた錆兎が義勇の手を恭しく取って、前へとうながした。

え?ええ???
もしかして寮長、副寮長が何か言うのか??
何も聞いてないし用意していないけど……

と、焦っていると、次々に台座に登る姫君達。
もちろん義勇も錆兎に促されて登った。

そして金虎寮から順に寮名を呼ばれて、寮長が代表して姫君に抱負や勝利を捧げる誓いなどを述べているようだ。

なるほど。
リーダーが寮長なら姫君は象徴なのだから、様々な誓いは姫君に捧げられると言うのが、藤襲風なのだろう。
こんな選手宣誓は初めてだが、それぞれの寮で個性があって面白い。

宣誓をする側も個性的ならされる側の姫君の反応もそれぞれで、

──昨年のように他寮に遅れを取るなど見苦しい結果は残さないようにしなさい
と、冷ややかに言い放つ金虎の姫。

──宇髄は高3でこれがラストだしな。今年も優勝して有終の美を飾らせて送り出そう!
と、ガッツポーズで呼びかける銀虎の姫。

金竜の姫は声も高らかに
──我らは金の竜だ!何よりも強く、何よりも気高い寮名に相応しく、勝ちに行くぞ!!
と、叫び、

その対となる銀の竜の姫君の無一郎は、女神アテナというその勇ましいいでたちとはかけ離れた感じで
──みんな、無理をしないで適度に頑張ろう
と淡々と述べる。


そして最後に1年、狼寮の順番になる。

まずは金狼の寮長から。

「あ~…俺も別に誓いとかしたくないんだけど…
ルールってことで、それっぽいことやらないとだしなぁ
というわけで…
うちはメンタリティは追及しても仕方ないっつ~事を公言してるんだけどなァ、寮としてどうであれ、在校中の各成績は当たり前だけど個人としては残るわけで。
各々将来的に自分が社会的地位を得たければ個人として色々勝って成績残した方が良いだろうとは思ってる。
出世も稼ぎもマジ大事だし、甲斐性つけなきゃなんで俺はやるし、金狼寮の寮生全員、腹決めて戦うぞォっ!
以上っ!!」


シン…とした。

義勇も唖然とした。
錆兎がここまでぽかん…と呆けた顔も初めて見た。


ぶっはぁ~~!!!!
と、最初に金虎寮の寮長、童磨が吹きだした。

「言ったっ!!すごいねっ!これが一般人てモノなんだねっ!!
俺は感動したっ!本当に感動したよっ!!
一応俺は社会的地位もお金も十分持ってるけど名誉のために手加減はできないのが可哀そうだけど、頑張ってね。一般人」
と、天然なのか馬鹿にしているのかよくわからないコメントをする。

「あ~あ…正直なのは結構だが、地味すぎて泣けるぜ」
と、銀虎寮の宇髄は苦笑。

「色々吹っ切れすぎだろっ…今年の金狼」
と銀竜の村田が反応に困って頭を抱えれば、

「インパクトからいったらぶっちぎり優勝だわっ!!」
金竜の寮長は童磨と同じく噴き出した。


そしてそんな不死川に誓われた当の姫君の善逸は驚いた様子もショックを受けた様子も全くなく、むしろまさかの──そうだよねっ──の同意。

「というわけで、みんな聞いて欲しいんだけど」
と、ざわめく周りに向けておずおずと口を開いた。

寮長のあの誓いと言えない誓いに姫君の方はなんと返すのだろうか…。
みんな興味津々で善逸に注目した。


そして善逸の第一声
「俺は一般人だから…」
と、不死川の宣誓に対して童磨が言った言葉を口にする。

「不死川さんが言った通り、俺に勝利を誓う必要なんてないと思うんです。
もちろん、俺は副寮長として寮を応援するし、足だけは速いから最後のリレーなんかは一位でバトン渡せたらいいなぁとか思っているんですけどね。
寮なんてくくりじゃなく、みんなは自由に守りたいものを守って勝ち取りたいものを勝ち取ればいいと思います。
その上で俺達が勝負にも勝ったなら素晴らしいし、負けてもそれはそれでいいんじゃないかな。
ということで正々堂々頑張りましょう」

そう宣言を終えてぺこりとお辞儀をする善逸。


同じ中1でずいぶんちゃんと挨拶をする善逸に義勇は感心したが、隣の銀竜寮組はあ~…みたいな少し微妙な表情をしていて、さらにその隣にいた銀虎の宇髄は──ありえねえな。華がなさすぎだろ──と斬って捨てた。

敵側の銀寮でさえそんな感じなので、金側はもっとシビアだ。

──ほんっと、貢献する気ないんじゃないっ?!そこまで華を捨てて地味にできるってある意味才能よねっ!

と、金虎の姫君の梅が腰に手を当ててダンダンと足を鳴らして叫んでいる。


…怖い……

義勇が思わず正面の錆兎に助けを求めるように視線を向けると、他の寮長達と同じく姫君の前に待機している錆兎は一歩義勇に歩み寄って

──大丈夫。お前に何か言ってくる奴がいたら俺が寮長として責任を持って沈めるから

と、少し抱きしめて宥めるように背中をトントンと叩くと、また一歩後ろに下がって他寮の寮長達と並んだ。


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2 件のコメント :

  1. 銀虎寮の寮長が童磨になってます…💦

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    1. 修正いたしました。
      ご報告ありがとうございました😄
      また何かありましたらよろしくお願いいたします。

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