反射的に元子供をかばうが、幸い四方を布で囲まれている部屋のため、布がガードしてくれたようだ。
「また貴様か…」
全てを焼きつくすような視線。
「どうやってきたばい…」
南の国の西南にあるこの王宮は、東の国から徒歩で来れる距離ではない。
ぽか~んとするインディの問いには答えず、東の魔人…カークランド一族の頭領のスコットは視線をインディの長衣に包まれて床で気を失っているアーサーに移した。
「貴様…何をした?」
激情を押さえこんだような静かな問い。
ロッドを握りこんだ手が怒りのためかかすかに震えている。
「陛下?どないしはりました?!」
と、そこにタイミング悪く衛兵達がかけつけてきた。
「曲者っ?!」
と叫んで剣を構えて飛び込んでくる。
「やめときんしゃいっ!」
とインディが止める声は届かない。
「相手は魔術師一人だっ、やってしまえ!!」
と勢い込んで衛兵達がなだれ込んできた。
そして…
「うらぁぁあ~~~!!!」
ブン!!とスコットのロッドがふりあげられる。
ロッドの先に付いた大きなピジョンブラッドが宙を舞い、炎が舞い散っているような錯覚を覚えた。
魔力の力は使っていないはずなのに、弾かれるように衛兵達が四方へ飛ぶ。
まるで鬼神だ…。
「魔法…使えんはずじゃなか?」
10人以上はいたはずの衛兵達があっという間に吹き飛ばされ、思わずそう問いかけると、ロッドがインディの鼻先すれすれにドン!!と振り下ろされる。
「カークランドを見くびるな。もう一度だけ聞く。何をした?」
燃えるような視線。
返答次第ではこのままロッドで首をへし折られそうだ。
「呪術をしたばい。白蛇の」
「白蛇のっ?!」
どうやらそれが何を意味するかは知っていたらしい。
一気にすさまじい殺気を放って杖を持つ手に力をこめるのを感じる。
が、インディは冷静に言葉を続けた。
「けど…契約できんかったとよ」
その言葉に振り上げたロッドがインディの頭すれすれで止まる。
「どういう事だ?」
「文字通りばい。白蛇の契約をさせた後、今度は私が契約しよう思ったけん、怪我ばせんように動けんくなる薬を使わせてもらったんじゃが、事に及べんかったと」
ダン!!
その言葉に言外の意味を察してスコットはロッドをそのまま床に激しく振り下ろした。
そして何かに耐えるようにしばらくジッと目をつぶっていたが、やがてひょいっとアーサーを抱き上げると、
「…帰る」
と、そのまま吹き飛ばした壁から外へと出て行った。
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