「あ、出たのか。」
と、ぺろりと行儀悪く指を舐めるしぐさが、あどけないくせに妙に色っぽい。
さきほどの悲壮感が嘘のように、その表情は明るかった。
「あ、あのな、アーサー、さっきの続きなんだけどな…」
「うん。とりあえず変な病気とかじゃないなら、まあいいや」
へ?
「い、いや、あのな。
とりあえず適度に溜まったらだしておかねえとまた下着汚す事になるぜ?」
「うん、わかった」
「わかったって…出し方もわかっとるん?」
「わかんねえけど…ようは溜まった頃また聞けばいいんだろ?
今日でたばかりだし、当分平気だろ。
それより腹減った。食事行こうぜ」
(こ…こういうのフラグクラッシャー言うんだったっけ?)
ヘナヘナと机に両手をついてうなだれるギルベルト。
「どうしたんだ?湯あたりか?」
と聞いてくるアーサーの瞳には一点の曇りもない。
怯えてるとか恥じらってるとかそういう空気も全く感じない。
もう本気で花より団子、色気より食い気なのだ…。
というか…もとより色気という意識さえまだ持っていないのだろう。
これ…また別の機会に呼び出されて理性と良識をためされることになるんだろうか…。
(ああ…もう手強すぎだろ、この箱入り息子…
これ、カトル・ヴィジュー・サクレ揃える方が楽なんじゃね?)
と思わないでもないギルベルト。
警戒心を欠片もみせず、持参していた着替えの服に着替えるためにためらいもなくはだかになるアーサーをおそわないように目をそらした先の窓から見えるさんさんと降り注ぐ太陽。
それでも…おとなになるまでは理性はたもってみせるぜっ!!
騎士の名にかけて!
ギルベルトは固く拳を握りしめてそう決意を新たにすると、着替えを終えたアーサーと食事をするために部屋を出たのだった。
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